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V-132 ガリナム合流


 拠点としていた200tコンテナを置いた場所から150kmほど西に離れた場所でスコーピオを艦砲で間引きしている。ブリッジの両サイドにある30mm連装機関砲は銃身磨耗で現在更新中だ。ベレッド爺さん達は忙しそうだな。

 88mm砲は材質が異なるからこれ位の酷使は耐えられると笑ってたが、それなら30mm機関砲もそうしておいたほうが良かったのかもしれない。そんな話をレイドラにしたら、「共通化出来るものは共通化したほうが更新が容易い」と教えてくれた。

 それも、1つの方法だが今の状況では不味くないか? ヴィオラの方も片舷2座ある連装機関砲塔を1つずつ銃身交換の最中らしい。

 

 「このままだと、更に200kmは拡散しそうだな」

 「円盤機が頑張っているわ。中規模騎士団のいくつかがこちらに向かっているそうよ」


 ワイングラスを抱えたカテリナさんが答えてくれた。

 フライヤとエミーは入浴中だから、リビングのソファーに座りながら俺とレイドラそれにカテリナさんの3人で、窓の外に映る砲煙の輝きを見ながら就寝前の酒を楽しんでいる。

 

 「それで、まだ胸騒ぎは続いているの?」

 「相変わらずです。心なし大きくなっているのが気になります」


 「リオの胸騒ぎは前例があるわ!」

 「私も気になって王立アカデミーを使って調査を行なっているわ。地上と海上それに宇宙までもね。2度あった事は、科学的証明がなされなくとも根拠としては十分よ!」

 

 俺の第六感なんだろうが、問題は『いつ』、『どこで』、『何が』が分らないんだよな。近々起こるという事ぐらいが分るんだが……。だが、今の状況を考えるとこれ以上の事態が起こるとは考えられないぞ。

 ワインを切り上げて、席を立つ。コーヒーメーカーからマグカップにコーヒーを注ぐとタバコに火を点けて、窓の外を眺めた。


 「ゼロが更に4機やってくるわ。輸送専用高速艇で運んでくるらしいから、私達のゼロは8機になるわよ」

 「ゼロがどこまで有効かは分りませんが、今の状況ではありがたいですね。ところで、スコーピオの脱皮は陸上で何回起こるんですか?」


 「3回は脱皮するわ。スコーピオの体表皮はその都度厚くなり硬度が増すの。今は、そうね……、標準装甲版で言えば10mm厚。1回目の脱皮で20mm厚、2回目の脱皮で50mm厚になると考えればいいわ。3回目の脱皮をしたスコーピオはほぼ成体と同じ厚さまで行くわ。標準装甲板の80mm厚。75mm砲でどうにか撃ち抜ける厚さよ」


 だから、散弾でも今は倒せるのか……。最初の脱皮で30mm砲の直撃。2回目では通常の獣機の持つ砲では撃ち抜けない。後は俺達戦機と新型獣機にゼロの出番になりそうだ。


 「問題は、今日1日の戦果です。王国の連合軍それに我等騎士団連合軍あわせてラウンドクルーザーが100艦は超えているでしょう。ですが……」

 『現時点での戦果は約1割と推定します。スコーピオの孵化数は約600万。孵化の中心点では新に孵化するスコーピオは確認されていません』


 レイドラの呟きにドロシーが付け加えた。


 「1割でも大きな数値だわ。100年ほど前に起きたスコーピオの襲来では王都にまで被害が及んだけど、まだ王都の手前300kmで食い止めることが出来ているわ。高速艇の爆撃と榴散弾のおかげよ」

 「王国軍にもゼロはあるんですよね?」


 「20機ほど参加しているはずよ。私達のゼロよりもスペックは落ちるけど、時速60kmで走行出来て50mm長砲身砲を2門と30mm機関砲を1門持っているから戦機並みに活躍しているそうよ。追加の注文が3カ国から来ているわ」


 嬉しそうにカテリナさんが答えてくれた。これで次ぎの研究の資金もプール出来るのが嬉しいんだろうな。

 それにしてもかなりスペックを落としてるな。やはり爆轟薬莢は作るのが難しいんだろう。まあ、50mm長砲身砲で徹甲弾を放つなら200mで50mmの装甲は撃ち抜けるから問題は無いだろう。


 ジャグジーから出て来たフレイヤ達と、もう一度ワインを酌み交わして俺達は部屋に戻る。今夜はエミーが一緒だ。

 フレイヤと一緒に円盤機に乗っていたんだろうけど、円盤機の動きとムサシの動きが連動しないからかなり気疲れしてるんだろう。ベッドに入ると直ぐに寝入ってしまった。

 そんなエミーの体を抱き寄せて俺も目を閉じる。

               ・

               ・

               ・


 朝食時には全員が揃う。トーストに簡単なサラダとコーヒーだが、騎士団の食事は普段から質素だ。誰も文句を言わないけどローザ達やエミーにはちょっと気の毒に思う。


 「それで、今日はコンテナの拠点に戻るのか?」

 「そうなるわ。ガリナムが戻ってくるけど、拠点防衛ではなく広範囲に動くでしょうからコンテナにはカンザスとヴィオラだけになるわ。ゼロも戻ってくるし新たなゼロが4機送られて来るわ。ゼロが揃ったところで獣機部隊を後方の警護に変更するつもりよ」


 ローザの質問にドミニクがスクリーンを展開しながら説明する。

 食事中なんだけど、誰もそんな事は気にしないみたいだ。

 

 「円盤機は昨日同様前方数十km付近を爆撃して貰うわ。当然阻止戦を超えるスコーピオは膨大な数だけど、夕刻には昨夜同様後方に下がって拡散する群れを砲撃で撃破するわ」


 数の前には無力だな。決定打に欠ける。大型爆弾はこの世界には無さそうだ。精々500kg爆弾だし、その運搬手段も限られている。急改造の高速爆撃艇はかなり有効に機能しているようだが、今の所2機での運用だ。

 騎士団の持つ円盤機の爆撃は50kg爆弾だから広範囲に爆撃を加えることなど不可能だ。10機で20個をばら撒いても、巡洋艦の砲撃1回分にもならない。まあ、気休めにはなるし、それなりの効果はあるんだろうけど……。


 「現在、コンテナ位置から西に200km移動しています。既にここまでスコーピオの群れは来ているけど、それ程濃くは無いわ。砲撃しながら前進するから、戦機は装甲甲板で砲撃して頂戴。0830時に出発するわ」


 残り1時間を切っているな。

 コーヒーと一服ぐらいは出来そうだ。

 テーブルからマグカップのコーヒーを持ってソファーに座って前方を見る。確かにこの場所ではスコーピオの群れが疎らになっている。1匹1匹が見えるからな。そんな中に砲撃をするからちょっと砲弾がもったいなく思える。

 それでも数を減らさねば更に後方にいる騎士団が苦労しそうだ。

 

 「円盤機は私だけで対応するわ。今日は拠点での対応だけだから、エミーは火器管制室で対応して貰うつもりよ」

 「あれを少しでも減らそうと言うのか?」


 俺の質問にフレイヤが頷く。俺達の撃ち漏らしを後方で潰すつもりのようだ。パンジーには30mm砲と40mm砲があるから確かに効果的ではあるな。200匹前後を潰せるだけだろうけど、それでもやらないよりは良い。

 

 リビングからそれぞれ愛機に向かって移動する。

 アリスに搭乗して装甲甲板に出ると既にローザ達が砲撃を始めていた。55mm砲を戦機を含めて6機が左右に放っている。俺も短砲身の55mm砲を使って攻撃に参加した。

 55mm砲の課題はカートリッジにある。炸裂弾が5つではカートリッジ交換が頻繁になる。足元に数個のカートリッジを置いて膝撃ちで獲物を狙う。

 空になったカートリッジを新しいカートリッジに獣機が数機装甲甲板に上がって交換してくれる。

 ゆっくり休めるはずなんだが、俺達にとってはありがたい限りだ。

 

 東に向かうほどスコーピオの数が増してくる。2時間も過ぎるとどこに撃っても当たるような気がしてきた。

 フレイヤの駆るパンジーも先程装甲甲板に着地して弾薬と爆弾を補給している。

 

 『後30分ほどで目的地です。現在、ガリナムとゼロがコンテナ周囲のスコーピオを刈っています』

 ドロシーのアナウンスではガリナムは大活躍のようだ。ゼロも移動速度はガリナムに追従するから一緒に群れを殲滅しているのだろう。なんと言ってもガトリング砲を積んでるからな。爆轟薬莢によるAPDSではなくともそれなりに戦果を得られるだろう。


 遠くにコンテナが見えてきた。

 カンザスとヴィオラはコンテナを挟みこむようにして、やや斜めに艦体を停止させる。

 停止直前に戦機達が装甲甲板を飛び降りてコンテナに取り付いた。円盤機が先方を爆撃して空隙を作るが、それは直ぐに埋まってしまうだろう。だが、一時的に群れが薄くなることは確かだ。88mm砲から榴散弾が続けざまに撃たれて俺達の陣形作りに余裕を持たせてくれる。

 爆撃を終えた円盤機の半数は後方で俺達の後ろのスコーピオを倒してくれている。


 南からガリナムがゼロを引き連れて現れた。

 俺達の前方に一斉射撃を加えると後方に回りこむ。ヴィオラとカンザスから獣機が降りてきて俺達の作った拠点を確保する。


 「リオ、戦機を下がらせて小休止させる。燃料と弾薬補給も兼ねるから、後30分頑張ってくれ!」

 「了解です。ガリナムの補給も一緒ですね!」


 スクリーンの一角に現れたアレクが小さく頷いた。

 まだまだ榴散弾と散弾が有効だ。たっぷりあるからしばらくは持つだろうし、高速艇がどんどん運んでくれる手筈になってる。

 

 昨日と同じような戦いが始まる。

 少し違うのはガリナムとゼロがいることだ。ガリナムは戦法を変えて大量の弾薬を積み込んで東に侵出していく。多脚は強化されているから、踏み潰すスコーピオの数も半端ではない。左右に榴散弾を放って戻ってくることを繰り返している。

 ゼロはガリナムと似た戦いをしているがこちらは南北方向だ。

 常に円盤機の半数が後方に回って獣機の戦列を援護してくれる。新型獣機はコンテナ周辺で応戦中だ。

 俺達戦姫が3機とムサシで対応するのにさして不都合はない。獣機の半数がガリナムの弾薬補給を行なっているが、その援護も獣機で十分に見える。まあ、円盤機がついているから心配は無用だろう。


 「それにしても凄い数じゃな。昨日あれ程倒しておるのに底が見えぬ!」

 「これが10日ほど続くんだから頑張ってくれよ。そして俺達の本当の出番は3回目の脱皮が済んだ後だからな!」


 戦機すら至近距離で放つ55mm砲で応戦することになるだろう。どれだけ食われるか分ったものじゃない。その為にも今はひたすら孵化直後のスコーピオを倒すことが必要なのだ。

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