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V-131 休憩するのも大変だ


 200tコンテナをヴィオラとカンザスが挟むように位置して急造の砦を作る。ヴィオラの隣には、他の騎士団のラウンドクルーザーが停止して装甲甲板に10機程の獣機を上げて攻撃をしているようだ。


 200tコンテナには20機の獣機と新型獣機が10機で対応してる。戦機は10機に増えたからアレクとベラスコが左右に5機ずつ率いて対処している。後ろは俺達戦姫部隊が回りこんでくるスコーピオを片っ端から叩いている。


 200tコンテナで弾薬は十分だが、休憩を取る暇もない。

 朝から始まって、そろそろ夕刻になるのだが、その間に取れた休みは1時間にも満たない時間だ。

 

 『王国軍の爆撃機がこちらに向かっています!』

 

 そんなドロシーの連絡があってから数分後に東側の広い範囲で爆煙が上がる。

 高速艇だけでなく、円盤機も爆撃に参加したようだな。

 俺達の円盤機も編隊を組んで東に爆撃に向かった。


 「アリス、爆撃の成果は?」

 『2km四方のスコーピオを倒したようですが、直ぐに埋まってしまうでしょうね。隣国のナルビク王国から戦艦が援軍に来てくれたようです。巡洋艦2隻を伴って南から北に砲撃しながら進んでいます。1時間程でこの付近に到達します』


 戦艦の主砲は口径30cm連装砲塔が4基あるからな、攻撃力なら巡洋艦の5倍はあるんじゃないか?

 

 『中継点より200tコンテナと100tコンテナを送るそうです。どうやら、この場所を確保してほしいようですね』

 「最初の10日間のために持ってきたようなものだ。数日後には更に運んで欲しいけどね」


 俺達が運んだコンテナの中身は8割方が最初の10日間ようだ。残り2割が徹甲弾なんだが、戦場に来て見ると全てを榴散弾と散弾で良かったようにも思える。これは次ぎの課題だな。

 

 南から砲撃の音が近付いてくる。どうやら艦隊が近付いてきたようだ。

 カンザスもそれに呼応するように砲撃してるけど、口径88mmではたかが知れている。やはり大口径砲弾の威力は凄まじいな。

 炸裂弾と、榴散弾を混ぜているようだ。


 「艦隊の援護とはありがたいな!」

 「ええ、これで少しの間、群れが散ってくれればありがたいのですが……」


 「そうもいくまい。だが、少しは群れが散れるだろう。上手く行けば半数ごとに軽い休憩が取れそうだ」

 「休憩ですか! 早く取りたいものです!!」


 俺達の会話にベラスコが割ってきた。ベラスコも頑張ってるようだな。だけど、戦鬼の休憩は後になるぞ。


 『ナルビク戦艦はヴィオラの手前で1時間程停船するそうです。戦機20機が乗船しているそうですから、その間の戦闘は引き受けると言っています』


 ドロシーが俺達に連絡してきた。やはり、ここに拠点を作らせる気だな。

 もう2隻ほどいるならそれも可能だろうけど、ガリナムは拠点防御に向かってるし、ゼロだって向うに行ったままだ。ちょっとジリ貧だな。


 南方から高速艇が俺達の東に爆弾を投下して行く。大型砲弾の炸裂が投下された爆弾を追って俺達に近付いてくる。まだ艦隊は見えないがそれも時間の問題だ。

 それまでは、ひたすらスコーピオに向かってレールガンのトリガーを引き続ける。


 「やって来ました! 俺達の前方に展開するようです!!」


 ベラスコから通信が入ってきた。ホッとした溜息があちこちから通信機に入ってくる。やはり、連続した戦闘は疲れるからな。

 獣機の連中が舷側の扉に向かって移動し始めた。元々戦闘要員ではないから彼らの疲労は俺達以上だろう。

 ゆっくりと俺達の視界を巨大な戦艦の艦体が閉ざしていくと、ようやく俺達にも帰艦指示が下った。

 戦機達が撤収するのを確認して俺達が最後に装甲甲板へと跳躍する。

 昇降装置で艦内のハンガーにアリスを移動させると、俺はゆっくりとリビングに歩き始めた。


 「リオで最後よ。状況説明を始めるわ。ヴィオラのアレク達や獣機士達もこの映像を見てる筈よ」


 カテリナさんが、普段よりもスクリーンを大きく展開して状況説明を始める。

 スコーピオの群れは現在300km四方に広がっているようだ。俺達がいるのはsの周辺部から50kmほど内側に入ったところだが、こうして衛星画像を見ると、かなりの数が俺達の攻撃をものともせずに広がっているのが分かる。


 「孵化は終ったようね。直径100km程では、12時間前と現在では単位面積当りの個体数が半減しているわ。これからが勝負どころよ」


 孵化が終ったという事は、数の上限が決まったという事だ。無限に続く戦いということにはならないって事だな。減らせばそれだけ少なくなっていく。母数が巨大ではあるがそこに書かれる数値が存在するという事になる。

 

 「数日は現在の戦いが継続します。数日後に少し変化が現れるでしょう。それは脱皮に備える為で動きが鈍くなる筈。でも、油断はしないで、返って食欲は旺盛になるはずよ。周囲で共食いが始まるわ。私達が倒したスコーピオも当然彼らの食事の対象になるでしょう。この状態になったら、獣機は地上を離れて頂戴。ラウンドクルーザーの装甲甲板で援護射撃をお願いするわ」


 脱皮して体を大きくするのか。それが終るとスコーピオの体形が大きくなるとともに表皮の厚さも増すという事なんだろうな。榴散弾が何時までも使えるわけでは無さそうだ。それからは徹甲弾で対処するってことになるだろう。


 「休憩が終ると同時に200tコンテナから弾薬を運び込む事を優先します。夜間は機動攻撃で対処しますから、皆には10時間程の休息が取れるわよ。明日に備えて十分に睡眠を取って頂戴。私からはこれでお終い。後は各指揮官の指示に委ねます」


 カテリナさんの説明が終ったところでライムさん達が飲み物を運んで来た。

 早速マグカップのコーヒーを受取り、タバコに火を点ける。

 窓の外200m程先に戦艦が主砲を1分間隔で放っているようだ。さすがに大口径だけの事はある。分厚い防弾ガラスが砲撃の振動を受けて震えるのがソファーにいても見る事が出来る。

 

 「巡洋艦が休憩時間終了後に中継点に向かうそうよ。戦機を半数同行させるみたいだからガリナムがこっちに来るわ」

 「ガリナムだけで駆逐艦3隻に匹敵するだろうけど、引き抜いてだいじょうぶなのか?」

 

 「その辺りはタイラム騎士団の判断になるでしょうね。ガリナムはフリーで活躍させた方が効果的なのは言ってあるんだけど……」


 88mm砲が12門だからな。小規模の騎士団の持つ駆逐艦改造型のラウンドクルーザーは75mm砲が6門だからその火力はかなりなものだ。もっともそのおかげで乗員まで削られてるんだけどね。


 「まだ、胸騒ぎは続いているの?」

 「それ程ではありませんが、違和感はあります。前のことがあるんで一応知らせたんですが……」


 俺の答えを聞いてカテリナさんが考え込んでる。フレイヤ達がそんなカテリナさんを心配そうに見ているな。


 「兄様の勘は当たるからのう。じゃが、地上に異常なない事も確かなようじゃ。今回は空振りじゃな」


 そんな事を言いながら、ローザがエミーの隣で美味しそうにジュースを飲んでるぞ。

 っ! ちょっと待てよ。今、地上って言ったよな?


 「カテリナさん。ひょっとしてですけど、地上ではないんじゃありませんか?」

 「地下……海洋……宇宙! 宇宙空間の異常って事!!」


 カテリナさんが端末を素早く叩き始める。携帯を取り出してあちこちに通信を始めた。

 そんな豹変ぶりを唖然として俺達は眺めるだけになった。

 時間だけが刻々と過ぎていく。

 ドロシーの発進時間の告知に、俺達は再度顔を見合わせて頷いた。休憩時間の残りは15分程度だ。もう1本タバコを咥えて、休憩間最後のタバコを味わうことにした。


 休憩時間が終ると俺達は次々に外に飛び出して元の位置に戻る。

 獣機の半数は、直ぐにコンテナから弾薬を運び始める。

 戦艦は砲撃を連続させると、ゆっくりと南に進んでいった。1艦の巡洋艦が装甲甲板に戦機を10機ほど載せたまま北を目指して進んでいく。

 

 「かなり間引いてくれたようだな。群れの濃さがだいぶ違うぞ」


 そんなアレクの感想が届く。確かに数が減っているように思える。俺達戦姫部隊も後ろの守りだけでなく、獣機が抜けた場所で固定砲座として対応が出来るぐらいだ。

 今度はレールガンに代わって55mm砲を使って倒していく。

 数が多いから数発の散弾を発射出来るこっちのほうが楽に倒せるし、ムサシがビームサーベルで援護してくれるから、後方から回りこんでくるスコーピオの対処は何とかなる。カンザスの近距離防衛用30mm機関砲も俺達の援護をしてくれるのがありがたい。


 『弾薬搬入終了しました。獣機は急いで帰艦してください。獣機帰艦後に戦機の帰艦を指示します。繰り返します……』


 「どうやら、今日の戦闘は終わりだな。リオの方はだいじょうぶか?」

 「何とかです。やはり数の脅威は恐るべきものがありますね。ベラスコのフォローをお願いしますよ」


 俺の答えにアレクが笑い声を上げる。それなりに気にはしているようだ。

 こんな巨獣との戦いを経験した事のない者のなかには、精神に異常をきたす者が出てくることも多々ある。

 入団1年ちょっとで戦機を従える立場に立ったのだ。はやる心と巨獣の群れへの恐怖で心が揺れている筈だ。そのままにしておくととんでもない行動を取りかねない。ちょっとした気使いと言葉を交わすことで、1人ではない事を知らせるだけで良い。


 「アイツも、こんな戦は初めてだろうな。まあ、任せておけ。頑張ってる事だしこれが終ったら少しは奴に楽しみを分けてやろう」


 そう言ってアレクが通信を切ったけど、何か嫌な予感がしてならない。

 そんなところに、俺達の帰艦指示が下った。


 俺達が装甲甲板に乗ったところでカンザスが動き出した。そういえば機動攻撃を今夜は行うって事だったな。カンザスの後方にヴィオラが並んで時速30km程の速度で西を目指して進んでいる。

 拡散した群れを撃破するのだろう。どの位拡散してるかが問題だが、距離が離れれば群れは疎らになるはずだ。円盤機で容易に撃破出来ると思うのだが……。


 リビングに入ると、ドミニクの姿が見えない。レイドラがいるから今夜はドミニクが操船を指揮するのだろう。フレイヤは火器管制をしていたはずだが、いつの間にか役目を変えたようだ。円盤機の操縦をしているから代わって貰ったんだろう。


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