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V-128 爆撃開始


 タイラム騎士団の管理する中継点の中枢は地下に作られている。その一角にある豪華な会議室に20人程の男女が集まっていた。

 いずれも、騎士団の団長と副団長それに筆頭騎士というところだろう。だがヴィオラ騎士団はアレクの隣に俺とローザが招待されていた。


 大型スクリーンを使って各騎士団の迎撃ポイントがタイラム騎士団副団長のカリンさんによって示されていく。

 その陣形は北から南東方向に斜めに布陣されている。

 スコーピオを誘導する形だな。その先には王国軍の大型艦がいるってことか……。


 「この中継点の北に駆逐艦を2隻配置します。中継点の偵察用円盤機5機と合わせれば中継点から北の守りは任せられるでしょう。各騎士団は指定箇所を中心として迎撃してください」


 「ヴィオラ騎士団の守備範囲が我等の3倍となりますが……」

 「特殊な獣機と機動兵器を開発段階ですので数は少ないんですが、最初の10日は役に立つと思っています」


 真価は20日後になるだろう。その時、ここに集まった騎士団は考えを改めることになりかねないぞ。もっとも、騎士団は戦機あっての騎士団と言う考えを改めるには長い年月が掛かるだろうな。


 「これを見てください。偵察を行なっている騎士団からの情報です」


 スクリーンには続々と土の中から這い出してくるスコーピオの姿が映し出されている。孵化が始まったようだ。

 

 「撮影位置は東北東に800km程離れていますが、科学衛星の画像にアカデミーの地中振動センサからの活動状況を重ね合わせると、このような範囲で孵化が行なわれると推定出来ます」

 

 100kmを遥かに越える範囲だ。一体どれ程の数がいるんだろう。


 「最新のアカデミーの推定孵化数は約500万匹。一斉に周囲に拡散して何でも捕食することになります。孵化直後の体長は約7m。10日後の体長は10m。そして20日後には体長15mを超えます。我々の戦いは20日までの間にどれだけ数を減らせえるかです」


 戦いは20日で終ることはない。その後にも、スコーピオが海に向かって移動するあで続くのだ。

 その戦で、いったい何機の戦機が破壊されるのだろうか……。各騎士団長の顔は焦燥感で青く変わっている。


 「塹壕と土塁は過去の戦でも有効でした。各騎士団は直ぐに指定位置に急行して備えをしてください」


 各騎士団長が一斉に立ち上がると一礼して部屋を出ていく。

 俺達も急いで連絡用円盤機に乗り込んでカンザスへと戻った。

 帰ると同時に関係者をカンザスの会議室に集めた。

 出航はそれぞれの副艦長に任せているようだ。と言っても、かなりの騎士団が中継点に集合しているから、直ぐには出航できないだろうけどね。


 「迎撃って事かしら?」


 つまらなそうにメイデンさんが呟いた。


 「指定ポイントにいるのはカンザスとヴィオラで十分です。ガリナムは出来ればスコーピオを誘導してください。私達の阻止線にね」


 「それなら話は別だわ。で、その後は?」

 1シリンダー分は私達と一緒に一斉射撃に参加してください。その後は中継点で弾薬補給を行い、中継点の北で他の駆逐艦の援護をお願いします。ガリナムなら通常駆逐艦3隻の働きが出来る筈です」


 そんなドミニクの言葉に満足そうな顔をしてコーヒーを飲んでいる。

 何となく、俺達のところに乱入してきそうだな。


 「我等は何処で戦うのじゃ? 固定砲台は我等の戦ではないぞ」

 

 「アリスを除く戦姫はパンジーに乗るエミーの指揮で動いて頂戴。作戦範囲は私達のポイントの左右50kmをカバーして欲しいわ。小さな騎士団が固めているから、かなり苦しい戦いを強いられそうなの」


 かなり長い戦闘区域だな。だが、グランボードの速度がその範囲の戦闘を可能にする。ムサシが一緒なら安心して任せられるだろう。


 「ヴィオラとカンザスの停船位置を500m程距離をおきます。この間を獣機とゼロでカバーします。約2kmの空掘を掘ってその土で土塁をこの間に築けば獣機も安心して10日間は戦えます。10日後は全ての獣機を走行甲板に移動して戦うことになるでしょう」

 

 「俺と、ベラスコは?」

 「3機の戦機を率いてヴィオラの船首とカンザスの船尾で対応してください。弾薬の補充は2台の自走バージが行ないます。そして全体の指揮はカンザスのドミニクが担当します」


 「私とドロシーが補佐に付くから安心して良いわよ」


 最後にカテリナさんが皆に言ったけど、カテリナさんよりドロシーの方を参考にしておけば安心出来るな。

 そんな話をしていると軽い加速度感を感じた。カンザスが出航したようだ。

 いよいよ大群を相手の戦いが始まるんだな。

               ・

               ・

               ・


 俺達が指定されたポイントは中継点から100km程南東の位置だ。王都までは更に800km程の距離があるが、王国軍とは300kmも離れていない。

 リビングのソファーに腰を降ろして進行方向を見てみると、畦のように2つの溝が延々と続いている。

 中継点の連中が早々と阻止線を築いてくれていたようだ。指定位置に着いたら、少し掘削するだけで十分な守りを得ることが出来るかも知れないな。


 ガリナムだけが100tパージを曳航している。あれは大型の焼夷弾だからな。上手く使えば大きな威力を発揮するだろう。

 端末のスクリーンには、偵察用円盤機の画像が中継されて映し出されている。少し赤いスコーピオの姿で荒地の一部に色が着けられている。その範囲は徐々に拡大しているのが分る。たぶん明日には動き出すんだろうな。


 3時間ほどで移動を終了すると、早速ガリナムが新型獣機を数機載せて東に飛んで行く。爆弾を仕掛けるみたいだな。

 ヴィオラの獣機が降りて空掘りに向かっていくのは更に深く掘るつもりのようだ。

 たぶんビオラの走行甲板ではゼロを固定したワイヤーを外していることだろう。


 「ここに来るには2日程掛かりそうね」

 「という事は、明後日ってことですか?」


 「たぶんね。でも、ほら! 高速艇が爆撃に向かってるわ。明日は円盤機で爆撃を始められそうね」

 「ですが、2機ではそれ程効果が得られませんね」


 「そうでもないわ。今までは向かってくるスコーピオを迎撃するだけだったのが、今回は先んじて攻撃してるのよ。1度に落とせる爆弾は200kgを20発だけど、2機で40発。落とすのは集束爆弾に焼夷弾だから、戦艦の砲撃並みの効果よ。数時間おきに爆撃する筈だから、合計300発近い爆弾を投下したことになる筈よ」


 衛星からの画像で前回の爆撃後が見て取れる。

 しっかりと穴が空いてるところと、いまだに炎が見える場所すら確認出来るな。これを見るだけでも、士気は高まるというところか。

 

 「円盤機の爆撃はこちらで投下場所を決めるんですか?」

 「一応、中継点から各騎士団毎に指示が出る筈だわ。円盤機の数は伝えてあるし、ヴィオラ騎士団も偵察用と多目的用の8機を飛ばすつもりよ」


 ゼロはまだ使わないという事だな。もっとも積めるとしても50kg爆弾が1個というところだろう。あれは巨獣用だからね。

 俺達は、スクリーンに映る状況と騎士団の周囲で深く掘り進めている空掘の作業を眺め続けた。

 800km先では次々とスコーピオが地中から這い出している。

 明日の朝にはどれだけ俺達に接近するんだろうか?


 次ぎの朝、エミーを起こさないようにベッドを抜け出すと、軽くシャワーを浴びる。

 何故か胸騒ぎがする。これは天啓のようなものなのだろうか?

 衣服を整えソファーに座ると、ドロシーに早速質問してみた。


 「ドロシー、変わった事がないか? この辺りでなく広く確認して欲しいんだが……」

 『異変は無いようです。どうかしたのですか?』


 「あぁ、ちょっとね。嫌な予感がしたんだ。それで、スコーピオはどんな具合だ?」

 『現在、東北東400km程の距離です。高速艇による爆撃は現在も進行中です。軍の長距離偵察用円盤機の爆撃も未明より開始されています』


 あるだけの爆弾を使う気だな。ドロシーが端末を遠隔操作して俺の前に爆撃地点の映像を映してくれた。

 やはり集束爆弾は品切れのようだ。現在は通常弾と、焼夷弾を落としている。

 それにしても見渡す限り赤い表皮が輝いているな。そして更に地中から這い出してくるようだ。


 「数を推定出来るか?」

 『200万を軽く越えています。画像を元にした推定数はおよそ280万』


 100万程に予想していたが、軽く凌駕している。

 これが俺の違和感なのか?


 「あら、早いわね。若者はのんびり寝ているものよ」

 「ちょっとした違和感があったものですから……」


 「それで?」


 カテリナさんがコーヒーを入れてくれた。

 インスタントだけど、朝はやっぱりコーヒーだよな。たっぷりと砂糖を入れてスプーンでかき混ぜる。


 「異変はありませんでした。でも、違和感は去らないんです」

 「リオ君の場合は前例がありすぎるからね。単なる気の迷いと言う事も出来ないわ。それで、継続してるのね?」


 俺はマグカップを傾けながらも頷き返した。だが、違和感が少し収まったのも確かだ。いったい何が起きるんだろう?


 それでも時は過ぎていく。

 皆で朝食を終えると、ドミニクが円盤機による爆撃を正午に開始することを告げる。


 「現在の距離は350kmを切っているわ。正午には300km近くになると中継点では考えているようね。可能な限り奥を爆撃して欲しいと連絡があったわ」


 「午前中に200tコンテナが届きます。船内の弾薬と合わせれば、10日以上は戦えます」

 

 レイドラの言葉に全員が頷く。200tコンテナ2つにたっぷりと詰め込んできたからな。

 中継点にも100tコンテナで貯えられているらしい。ガリナムの補給はここと、中継点になるだろう。88mm砲と30mm砲は騎士団の標準装備だからな。

 

 12時に円盤機が爆撃に出発する。フレイヤとエミーも一緒だ。250kg爆弾を搭載できるのはパンジーだけだから、積極的に使うのだろう。

 その爆撃の様子をパンジーからの映像で俺達は見ることにした。

 円盤機9機による1回の爆撃は50kg爆弾が8個に100kg爆弾が8個それに250kg爆弾が2個だ。

 

 「あまり効いとらんな」

 「それなりに威力はあるし、効果があっても相手があれだけ多いと……」

 「正に数の脅威ってことね」


 感想は色々だな。確かに打撃を与えていても直ぐにその穴が塞がってしまう。まるで全体が1匹の巨大な生物に思える。ドレスダンサーよりも自分達の存在が小さく思えるな。


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