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V-125 ヴィオラ艦隊出撃

 2回ほど鉱石採掘に出掛けると、いよいよ東に旅立つ準備が始まる。

 王都から資材を調達し、会議室までが倉庫のように非常食が積み上げられていた。

 武装の予備や弾薬でカーゴ区域は足の踏み場もない。並べた箱の上に足場を作って通路にしているとベレッドじいさんが呟いていたが、決して嫌な素振りではない。

 どちらかというと、これから始まる戦を間近で見られるのが楽しみな様子だ。休憩所の片隅にしっかりと酒の入った箱が積み上げられてた。


 だけど……、フレイヤ達が買い込んできたのは一体なんなのだろう?

 部屋に沢山のケースが運ばれてきたぞ。

 あまり、詮索するのは良くないとは思うのだが、ちょっと気になるんだよな。


 「いよいよ明日ね。パンジー専用の爆弾も10発を用意したわ。武器制限の撤廃がもう少し早ければもっと積めるのに残念だわ」


 「仕方が無いと思うな。貴族枠で他の騎士団よりは大型化出来たんだからね」


 夕食後に関係者が集まったカンザスのソファーで、フレイヤが紅茶を飲みながらボヤいている。

 

 「フレイヤとエミーには全体を見て貰いたいわ。科学衛星の画像では時間遅れ出てしまうわ」

 「パンジーの稼動時間は6時間。偵察用円盤機の2倍だから都合が良いわ」


 ドミニクとカテリナさんがパンジーの仕事を決めたようだ。

 エミーがムサシを可動させることになるから、あまり飛び回らない方が良さそうだ。


 大まかな役割分担と、編成を皆で考える。

 と言っても、アリスは単独行動だし、ムサシはローザ達戦姫部隊の護衛を行なう。

 アレクとベラスコは戦機3機を率いる。

 通常獣機はヴィオラの装甲甲板で援護部隊となり、新型獣機は攻撃部隊となる。ゼロは新型獣機の護衛機になる。

 

 「メイデンさんは単独行動ってことになりますね」

 「たぶん、好きにやらせた方が効果的よ」


 ヴィオラから遊びに来ていたクリスが諦め顔で呟いた。

 前回のプレートワームの一件で、メイデンさんの事は皆も良く分かったみたいだ。

 実に効果的にガリナムを運用する。

 たぶん部下達もかなり感化されてるんじゃないかな。

 ガリナムの多脚も強化してあるし、またやるんじゃないかな?


 「だけど、流れ弾が当らないように全体の状況は良く見ておかないといけないぞ!」

 「ドロシーに状況を常に把握させます。だいじょうぶです」


 レイドラが俺を見て答えてくれた。

 ここはドロシーに任せるのが一番なんだろうな。


 「ドロシー、だいじょうぶか?」

 『問題ありません。パンジーを経由して各機に状況を伝えられます』

 

 後は、出掛けるだけか。

 カリオンがベラドンナの2人とヴィオラの新人の面倒を見てくれるだろう。

 それに汎用駆逐艦が1隻いる。ローザの部隊用ではあるが、本来の任務は中継点の防衛にウエリントン王国が出してくれたものだ。

 最初の大型駆逐艦は俺達に払い下げられて母艦への改修を受けている。

 今の艦は新しく王都より来たものだが、新型だとか言って、やたら艦長が喜んでたぞ。


 「ホントに、もう不足は無いよね。エルトニア王国軍が高速艇で日用品を運んでくれるとは言っていたけど、なるべく持って行きましょう」


 確かに高速艇は便利だが積載量が少ないんだよな。

 酒とタバコを部屋に箱買いしてあるから俺は特に必要ないぞ。

               ・

               ・

               ・


 あくる日、朝食を済ませると俺達は中継点を出発する。

 コースは一旦2千km程南下して、東へと向かう感じだ。

 巡航速度は、時速40km程で走る事ができるカンザスに他の艦も合わせている。

 

 「1日で900km程じゃな。まる2日は南下という事になるのう」

 「タイラム騎士団の中継点まで、残り13日で行けば良いんだからこれでも十分な速度だよ」


 巡航速度は無理の無い速度だ。その状態で通常の半分のバージを曳いている。

 バージは全てコンテナ仕様だから、こんな時には意外と役に立つ。

 200tコンテナが3個に100tコンテナが3個。

 100tコンテナはそれ自体が巨大な焼夷爆弾になっている。


 「ところで、ガリナムが曳いてる大型爆弾って役に立つの?」

 「たぶんね。広範囲に火の付いた油脂が飛び散るからね。焼き殺せばそれだけ共食いする奴を減らせると思うんだ」


 「まあ、期待はしておるぞ」


 そんな事を言って姉さんを誘ってリビングを出て行く。

 新たに、王都で映画のクリスタルを仕入れてきたらしい。前のも沢山あるから、毎日食堂が映画館に変わるらしい。

 まあ、陳腐な映画ほどおもしろいとフレイヤが言っていたからな。


 そんな所に、ドミニクが帰ってきた。

 レイドラとブリッジを交替してきたらしい。


 「あら、皆は?」

 「映画鑑賞に出掛けたよ。皆でワイワイ騒ぎながら見るのが良いんだってフレイヤが言っていた」


 「そう。……ところで、これを見て頂戴。偵察用円盤機が撮影したものよ」

 

 スクリーンが展開されると、十数頭のトリケラがゆっくりと移動しているのが映し出された。


 「デイジー、トリケラの進行方向と速度でシュミレーションしてくれ。俺達に再接近する時にどれ位の距離になるんだ?」

 『3時間後に距離12kmです。巡航速度を保っていれば追いつかれる事はありません』


 現在の速度ってところがミソだな。

 ヴィオラ艦隊の速度でもあるし、トリケラの速度でもある。どちらかの速度にへんかが生じるとトリケラに横を突かれることもありえるわけだ。


 「だいじょうぶじゃないか? 場合によってはアリスで直ぐに飛びだせるぞ」

 「先が長いわ。場合によってはお願いね」


 艦隊を預かる身では、些細な事も気になるんだろうな。

 俺は席を立つと、ミニバーに行ってコーヒーを2つ入れて戻ってきた。

 ドミニクにカップを渡して、俺はタバコに火を点ける。


 「確かにちょっと、心配しすぎね。先も長いし、その後には長い戦闘よ。皆無事に帰れれば良いんだけど……」

 「帰れるさ。新型兵器が目白押しだ。それに他の騎士団だってやって来るんだしね」


 とは言っても、どれだけ役に立つかは分らない。

 だが、既存の兵器よりは役に立つだろう。今まではラウンドクルーザーの大砲は徹甲弾か炸裂弾だけだったのが、今回は榴散弾を発射出来る。爆弾も集束爆弾と焼夷弾を持ってきた。


 タバコを灰皿で揉み消すと、コーヒーを飲む。丁度飲み頃だな。

 そんな俺にドミニクが体を寄せてくる。

 コーヒーをゴクリと飲み干して、ドミニクを連れて寝室に向かった。


 2時間程過ぎると2人でジャグジーに入って汗を流す。

 衣服を整え、俺がソファーでタバコを楽しむ間に、ドミニクは自室に向かった。着替えとメイクは大変だな。そのままでも美人なんだけど、やはりメイクは必要って思ってるんじゃないかな?


 そんなところに、エミー達が帰ってくる。

 端末が表示する時刻は昼食時をとっくに過ぎていた。


 「兄様だけなのか?」

 「ドミニクが帰ったよ。そろそろ昼食だね。それと、これが来たら出撃だ」


 そう言って、スクリーンに艦隊に接近するトリケラを映し出す。

 

 「距離はどれ程じゃ?」

 「まだ30kmも先だ。最接近で10km程になるとドロシーが言ってたぞ」

 

 微妙な顔をしてるな。

 確かに積極的に狩る必要は無い。

 それを知ってるからそんな顔をするんだろう。

 

 全員が揃ったところで、サラダスパのような昼食を頂く。

 ずっと船内で暮らす感じだからな。いつも通り食べてると太りそうだ。その辺りの事も考えての昼食なんだろうか?

 今後の事も考えると、会議室にルームトレーニング用の機材を揃えておくのも考えた方が良さそうだぞ。


 『トリケラとの最接近箇所を通過しました。群れはそのまま南西に移動しています』

 

 ドロシーの艦内放送が入る。

 ドミニクはホッと胸を撫で下ろしているようだ。

 まだまだ先があるから、こんなところで道草を食いたくないからな。


 「いたの?」

 「偵察機が見つけたみたいだ。最接近で10kmって言ってたから、特に警報は出さなかったみたいだね」


 俺の言葉にフレイヤが納得している。

 思いは同じようだな。とは言え、あのパンジーを実戦で使いたかったのかも知れない。ちょっと残念そうな顔をしてる。


 「現在艦隊は巡航速度の時速40kmで南に向かっているわ。直接接触しない限り巨獣を振り切ることは可能よ」


 カテリナさんがテーブルを囲んだ連中にそう言って安心させる。

 確かに、そう考えれば俺達の今回の航行で巨獣と戦う可能性は殆どない筈だ。

 ライムさんからコーヒーのマグカップを受取り、ソファーに移動して荒野を眺めながら味わうことにした。

 俺が移動すると、次々と皆が集まってくる。


 コーヒー、紅茶、ローザはジュースだな。

 小さなテーブルに飲み物が並んでいく。


 「後1日南に進むのよね」

 「その後はずっと東よ。途中の大河を渡河地点を先行偵察しなくちゃならないわ。多目的円盤機でお願いするわ」


 ドミニクがフレイヤに確認している。

 フレイヤもちょっとした変化が嬉しいのか、微笑みながら頷いている。

 多目的円盤機は数人が乗れる連絡用の乗り物だが、大型だから偵察用円盤機よりも長距離飛行が可能だ。

 プレートワームの一件で大型爆弾も積めるし、30mmの短銃身機関砲だって2門付いている。

 渡河地点の状況偵察だから、戦闘にはならないだろうし、パンジーを飛ばすのはちょっと大げさだしな。


 食後の休憩が済むと、ぞろぞろと部屋を出て行く。今度はドミニクも一緒のようだ。

 また映画を見に行くのかな?

 

 1人残った俺はのんびりとタバコに火を点けた。

 ライムさんが俺のマグカップにコーヒーを注ぐと、砂糖を素早くスプーン2杯程入れて掻き混ぜる。


 「私達も出掛けるにゃ。留守番は頼んだにゃ!」


 そう言ってレイムさんと一緒に部屋を出て行った。

 俺って、公爵なんだよな?

 何か自信が無くなってきたぞ。


 そんな感じで俺達の艦隊は進んでいく。

 1日で約900km。

 それでも、俺達が向かう場所は遥かに遠くの地だ。

 果たして、どれ位のラウンドクルーザーが集まっているんだろう。

 12騎士団だって来てる筈だからな。

 それに王国軍の連合艦隊も集まる筈だから、かなりのラウンドクルーザーが集まるに違いない。

 

 そんな中に戦姫を4機積んで乗り込むんだからかなり目立つ存在になるのは確かだろう。

 無様な姿を見せないように注意しないといけないな。



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