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V-119 疲れるために遊ぶのか?


 そこはまるで、海底の舞踏会のような雰囲気だ。

 シャンデリアの下には、ひらひらと薄いドレスを纏った女性達が優雅に円舞を踊っている。

 これでもか!って感じのビキニに薄衣を纏った姿は、全く持って目の毒以外の何ものでもない。

 ローザの姿がまともに見えるんだが、一応ビキニなんだよな。ただ、現在進行形の肢体だから、それほど気にはならないんだけどね。


 ドミニクとレイドラはお揃いの衣装だ。

 あまり動くと胸が零れちゃんじゃないかと心配になってしまう。

 それより少しおとなしい感じの衣装がフレイヤとエミーなんだけど、こっちは上に羽織るドレスがあまりにもシースルー過ぎる。

 一応着てるんだけど、光のかげんではまるで纏っていないようにも見える。


 そんな彼女達と一曲ずつダンスをしたところで、壁際のソファーに腰を下ろしてワインを楽しんでいる。


 「おや? 騎士が私以外におられるとは思いませんでした。バローズ騎士団のライトンといいます。お見知りおきを……」

 ヴィオラ騎士団のリオです。こちらこそよろしく」


 互いに名乗りを上げて握手を交わす。

 どこで、どんな時に再会するか分らないからな。こうして、会う事があれば互いに名乗るのが騎士の務めでもある。


 「ヴィオラ騎士団と言いますと、あの戦姫と双胴船を持った騎士団ですな。西の戦の話はタイラム騎士団よりうかがいました。我等は東におりましたので助けになれず残念です」

 「第3軍が来てくれましたので、どうにかです」


 「ご謙遜を……。後、1年と少しです。我等が見張っていますから、それまでは安心してください」


 そう言って、ホールの中のダンスを楽しむ人達の中へと消えて行った。


 スコーピオの生み付けた卵を監視している騎士団なんだろうか?

 タイラム騎士団と付き合いがあるらしいから、12騎士団もしくは、大規模な騎士団の1つなんだろう。

 

 そんな任務を帯びても、この場所に来て楽しめるのだから、やはり団員が多いんだろうな。

 

 2時間程過ごして皆で部屋に戻ってきた。

 ドミニクにバローズ騎士団を尋ねてみると、やはり12騎士団の1つのようだ。

 

 「そう。孵化の状態を観てるんでしょうね。見つけた卵は片っ端から始末してると思うわ。それでも、1匹のスコーピオは100個以上の卵を分散して産むし、その卵は地中3m以上の深い場所なのよ」

 「1年ちょっとって言ってたぞ」


 「新型獣機を連れて行けるわ。ガリナムは先行して向かわせることになりそうね」


 孵化したばかりのスコーピオは精々3m程らしい。

 だが、1週間も経つと5m程に成長するのだが、その急激な成長を促がすために手当たり次第動く物を襲って食べるそうだ。

 

 スコーピオが10mに達しなければ、獣機の持つ30mm砲でも倒せるらしいのだが、それ以上になると、戦機の持つ50mm砲。もしくはラウンドクルーザーの75mm砲と言う事だ。


 「作戦は必要だね。上手く行けば、機動兵器も使えそうだ」

 「兆候が見えたら、エルトニア王国から知らせが届く筈だわ。その知らせでどれだけの騎士団が集まるかで被害が決まるわ」


 ドミニクの話では前回もかなりの被害が出たようだな。

 親と子で両方とも被害が出るのは痛ましいものだ。


 皆疲れているらしく、今夜は珍しく1人で寝られる。

 こんな夜もあるのだろう。そんな事を考えてキングサイズのベッドに横になる。

               ・

               ・

               ・


 身支度を整えて切り株のテーブルで皆を待つ。

 どんなアトラクションがあるか楽しみだが、かなり今日も暑そうだ。

 帽子とサングラスを持って、グルカショーツのベルトには小さなバッグが付いている。拳銃のホルスターも付いているから、俺はこれで十分な筈だ。

 コインホルダーはポケットにあるし、アトラクションは全て滞在費に含まれているから安心できるな。


 「お待たせ!」

 

 そんな声を俺に掛けながら、ドミニク達がやってきた。

 フレイヤやエミー達も揃ったみたいだな。

 短パンにTシャツだから俺とさほど変らない。ローザとエミーは小さなホルスターをベルトに付けている。

 

 「今日の予定は、リバークルーズが最初よ。その後は、ショーを見て昼食ね。午後は戦機に乗って巨獣を倒すの。パレードを見て、オバケ屋敷を観たら、夕食かな?

 ランド恒例の花火を見ながら舟の上で夕食の予定を組んであるわ」


 何か、強行軍のようだ。

 駆け回ってアトラクションを廻るかつての俺の姿が頭を過ぎった。

 とりあえず身軽な格好が、一番なのは理解したぞ。

 

 「出掛けましょう!」

 

 皆の後を付いていく。中継点の2倍以上はありそうだからな。迷子になったら良い笑いものだ。


 森の小道のような通路を通ってエレベーターホールに出ると、何組かの先客が待っている。

 どうやら、ここで待ち合わせのようだ。

 そんな、連中に構わずに開いたエレベータに乗って下へと降りていく。


 2階でエレベータを降りると、そこはちょっとした広場になっている。

 どうやら、ここでアトラクションに向かう乗り物を待つらしい。


 そんな広場の一角に人が集まっている。

 よく見ると、着ぐるみの頭が見えるから、家族連れの連中が記念写真を撮ってるのかな?

 

 「見えてきたわ! あれに乗って行くのよ」

 

 フレイヤが指差す先には、ラウンドクルーザーのミニチュアが見える。

 まあ、戦機のアトラクションがあるぐらいだからね。

 突っ込みたい気はするけど、ここは我慢しよう。


 長さ10m程のラウンドクルーザーがバージを10台曳いている。

 そのバージにはベンチシートが3列並んでいる。1つのベンチには3人は座れるようだ。

 

 ローザ達が嬉しそうに乗り込んでいく。

 どこに行くか分らないけど、良いんだろうか?

 俺も遅れないように乗り込む。 

 

 数十人がバージに乗ったところで、ラウンドクルーザーが進んでいく。

 多脚はダミーのようで、どうやら、タイヤで進んでいるようだ。俺達の乗ったバージもタイヤだから、クッションはそれなりだ。


 「ねえ、これでちゃんとリバークルーズの場所に行けるの?」

 「心配してるの? だいじょうぶよ。ドリナム騎士団のラウンドクルーザーは、ランド内を周遊してるから」


 よくある、汽車の乗り物みたいなものか?

 ならば、時間さえあれば辿り着けるはずだ。俺も、この遊園地を楽しむとするか。


 ホテル前の庭園を過ぎると、遠くにアトラクション施設の建屋が見える。

 左手には深い森が広がっているけど、どうやら熱帯性のジャングルに見えるな。

 たぶんあの森の中にリバークルーズのアトラクションがあるんだろう。


 途中で、2回ほどドリナム騎士団のラウンドクルーザーにすれ違う。

 数台のラウンドクルーザーがランド内を周回しているようだな。

 数十人ほどの客を乗せていたけど、アトラクションからの帰りなのかな?


 「ジャングルの交易所で~す! リバークルーズを楽しまれる方は、ここで降りてジャングルへ続く道を進んでください」


 バージの屋根に付いてるスピーカーのアナウンスが聞こえると、ゆっくりとラウンドクルーザーが停止する。

 

 「ほら、降りるんだからね!」

 

 そんなフレイヤの声に促がされて、俺達はバージを降りる。

 降りるべき客が降りたことを確認して、ラウンドクルーザーは北に向かって石畳の道を進んでいった。


 そして俺達は、石作りの看板に従ってジャングルの中に足を踏み入れる。

 

 と言っても、3m程の石畳がジャングルの奥に続いているからその通りに歩いていけば良いらしい。

 ホテルを出て最初のアトラクションだから数十人がぞろぞろとジャングルを進んでいる。

 

 ジャングルといっても広葉樹に蔦が絡んでいる位だから危険性は無いみたいだな。石畳の周囲は綺麗に剪定されている。

 

 5分も歩くと川の音が聞こえてくる。

 リバークルーズだからな。


 そして、広場に出る。

 その片隅に椰子葉で屋根を葺いた、アトラクションの受付所があった。

 列に並んで、俺達の乗るクルーズ船を待つ。


そして、俺達が乗ったのは定員10人程のアウトリガーの付いた小船だった。

屈強なトラ族の男が4人、上半身裸で櫂を漕ぐ。

 そしてお決まりのジャングルリバークルーズが始まった。

 ネコ族のお姉さんの巧妙な語り口でのクルーズは結構おもしろい。どこかあのアトラクションに似てもいるけど、ここにはそれをとやかく言うものもいないはずだ。

               ・

               ・

               ・


 

 くたくたになって部屋に引き上げてきた。

 夕食は適当に済ませたが、フレイヤ達はまだまだ元気があるようだ。


 だいたい、戦機で巨獣を倒すってアトラクションが、獣機でハリボテの巨獣に大きなエアガンを撃つと言う代物だ。

 アリスなら問題なく動かせるんだが、獣機となると勝手が違う。

 最下位の成績でアトラクションから出ることになった。


 その後は、花火を見ながら食事という事で、ランド内のレストランまでマラソンをすることになってしまった。

 その原因は、ローザが戦機のアトラクションを3回も行なったことによるものなんだけど……。誰も終わりにしようって言わないんだよな。


 騎士団のラウンドクルーザーでは時間が無いと言って、綺麗な芝生の広場を真直ぐにバイパスしたのだ。

 おかげで食事と花火には間に合ったけど、とても食事って感じじゃなかったな。

 

 まさか、明日もこんなことになるのかな?


 恐る恐るコーヒーのカップに隠れてフレイヤ達の表情をうかがう。

 端末でスクリーンを展開しながら、明日のコースを考えているようだ。

 

 「明日は、ドレスパーティに出るから、早めに切り上げるわよ」

 「となると、この辺りが狙い目かしら?」

 

 「垂直の岸壁登りはおもしろいぞ。落ちても最後はハーネスに付いたロープで安全に着地が出来るのじゃ」


 それを知ってるという事は、何度か落ちたという事じゃないか!

 聞いただけでも、下で見てたほうが楽しそうだ。


 「この妖精の国めぐり辺りが、俺には良いような気がするんだが……」

 「それって、子連れの親子ばかりよ」


 そうなのか?

 着ぐるみと遊べる、楽しい妖精の森って書いてあるぞ。

 危ない事は無さそうだから、小さな子連れってことになるのかな?

 だけど、戦機のシルエットをした獣機で暴れまわるよりも、俺には合ってるんだけどね。


 「明日はクリスがやってくるから、彼女の意見も聞かないとね!」

 

 フレイヤの言葉に皆は頷いているけど、俺の意見は無視してるんだよな。

 まあ、フレイヤ達が遊べればそれで良いのかもしれない。

 俺は、精神的にのんびり出来れば十分だ。

 それを、考えると、離宮で過ごした2日間は充実していたように思える。


 折角の領土なんだから、枯山水を再現してみるの良さそうに思えるぞ。

 そう考えると、緑も欲しくなるな。

 帰りに観葉植物でも買いこんでみようか?


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