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V-117 ドリナムランドに行こう!


 ザクレムと他の4人は、3日後には中継点に向かうことになった。

 さぞかし、ロザリー達が騒いでいる事だろう。

 だけど、これは彼女達にとっても必要な事だ。今、彼女達が倒れたら、中継点の機能が麻痺してしまう。

 それぞれの部署に2人ずつ配属されるから、少しは長期の休みも取れるだろう。

 ザクレムには気の毒だが全体の調整を取ってもらおう。

 商会の連中と上手くやればそれ程仕事に追われないで済むんじゃないかな。

 たまには俺が代わってやればザクレムだって休みを楽しめるだろう。


 だけど……、領主の代理である代官の代理が領主というのは、ちょっと変な感じがするぞ。その時が来たらドロシーとアリスに代理を頼もう。


 その日の夜。

 夕食をヒルダさん達3人の妃と一緒に取る。

 一仕事が終ったから、ちょっと肩の荷が下りた感じだ。


 「ところで、昨夜の話の続きで申し訳ないのですが……。ほんの少しでも戦姫を動かせるなら、カテリナ博士はそれを何とか出来るのでしょうか?」

 「何とも言えませんね。ダメ元で頼む価値はあると思います。ですが、何処まで動かせるかは……」


 俺の言葉を聞いて妃の1人の目が輝いた。


 「全く動かせないと思われていたのですが、昨夜届いた連絡では姫の1人が指を動かせたと聞いております。

 指1本と言えども動かせた事は事実。カテリナ博士の元に向かわせれば、例え赤子の動きのようであっても戦姫を動かせるのであればと……」


 確か、エルトニア王国からの御妃様だったな。

 狙いは、スコーピオの孵化を考えての事だろう。レールガンさえ使えればかなりの働きは期待できるし、領民の王族に対する尊敬も増すだろうな。

 

 だが、あれは脳内にナノマシンでインターフェイスを作るようなものだぞ。

 果たしてどれ程の効果が得られるかはやってみないと分らないだろうな。


 「ローザ姫の場合はカテリナさんの尽力があったものと俺は思っています。一度、連絡してみてはどうでしょうか? 俺からもそんな相談を受けたのでカテリナさんを紹介したと伝えておきます」

 

 「それが上手く行くと、動かぬ戦姫を持つ王国はナルビクだけになってしまいますわ。リオ殿、何か良い案はないのでしょうか?」


 残った御后様が俺に訴えてきた

真剣な眼差しはちょっと怖く感じるぞ。


 「前から疑問に思っていた事があります。戦姫を動かす者は王族である必要があるのだろうかとね。俺は王族ではありませんが、アリスを駆る事が出来ます。

 もし、全ての王族に戦姫が動かせぬなら、広く動かせる者を探してはどうですか?

 上手く、動かせる者が現れたなら……。王族に加える方法はいくらでもありそうですが?」


 俺の言葉に、3人の御后様が食事を忘れて俺を凝視している。


 「盲点でしたわ。確かにおっしゃる通りです」

 「やはり、エミーの伴侶の考え方は私達の考え方の斜め上を行きますね」


 それって、褒めてるのかな?

 そんな事を考えながら食事を終えると、ワインを飲む。


 このワインも中々の品だ。マクシミリアン程ではないにしろ、上物である事は確かだな。


 食事を終えると、他国から輿入した御妃さま2人が俺達に頭を下げると足早に食堂を出て行った。

 

 「早速、国に連絡しに向かったようですね。カテリナには私からもお願いしておきましょう。巨獣の守りとして戦姫に勝るものはありませんからね」

 「そうでしょうか? この前のガリナムを見ていると、小型の高機動砲艦は戦機を凌駕しているのではないかと思っています。マイデンさんの戦術は問題ですが、かなり期待できる存在のように思えますよ」


 「おもしろそうな話ですわね。試作費用は私が出しましょう。試作してその成果を映像記録として出していただければ十分な見返りをお渡しできますよ」


 俺に向かって笑みを浮かべる。

 ちょっと失敗したかな。

 まあ、長い目で試作機を作ってみよう。良さそうな武器は揃ってきたからな。


 そして俺達は夜の散策をするために庭に出た。

 小さな虫の音があちこちから聞こえてくる。


 まるでシンフォニーだな。

 俺には音楽として聞こえるが、エミー達にはどうなんだろう?


 「昔から、この音が好きでした。まるで、静かな音楽を聴いているように思えてきます」

 「それが、私がこの離宮で暮らす最大の理由なのよ。分らない人には分らないわ。でも、私も騒音ではなく音楽として聞くことができます」


 たぶん理由があるんだろう。

 後でカテリナさんに聞けば教えてくれるに違いない。

 でも、今は……。

 3人で静かにこの虫の音を楽しもう。

               ・

               ・

               ・


 次ぎの日。

 ヒルダさんに礼を言って、俺達は市街に向かう。来る時と同じようにガードが付いた無人車だ。

 確か、待ち合わせ場所はホテルのロビーだったが、何処のホテルかを聞いていないぞ。


 それでも、摩天楼の合間を縫うように無人車は走る。

 前に来た時には、地下の高速道路だったが、地上にも道はあったんだな。


 おのぼりさんみたいに、高い建築物をきょろきょろと眺めていると、俺達を乗せた無人車が停車した。


 「お待たせしました。ロックホテルです」

 「ありがとう。さあ、行きましょう」


 エミーが護衛のお兄さんに礼を言うと、俺に振り向いた。

 ここが目的地ってことか?

 とりあえず無人車を降りると、キャスター付きのバッグを受取って、去っていく車を見送った。


 改めて、ホテルを眺める。

 周囲の摩天楼が高いから、ホテルが低く見えるな。

 それでも、20階建て以上なんだよな。

 石造りの古風なホテルだ。利用客を選ぶんじゃないかな?


 先ずは入ってみる事だ。

 エントランスの扉は自動だけど、俺が先に立って開いたところでエミーを通してあげる。その後をバッグを曳いて歩きだした。


 「こっちじゃ!……だいぶ待ったぞ」


 フロントカウンターに向かって歩いていた俺達を呼び止めたのはローザだった。

 窓際の観葉植物の陰で手を振ってるぞ。ドミニク達も一緒だな。


 俺達は急いでローザ達の元に歩いて行った。

 ドーナツ状になったソファーに腰を下ろしていたドミニク達に軽く手をあげて挨拶すると、近くの丸い椅子を2個動かしてそこに腰を下ろす。


 「中々有能な連中みたいだよ。経験は無い様だが、現場で覚えれば良い」

 「ラズリー達が楽になれれば、それで良いわ」


 「もう少しで、フレイヤが来る筈だわ。そしたらドリナムランドに出発よ」

 

 ちょっとはしゃぎ気味のドミニクが、俺達に話してくれた。

 良くあるテーマパークって奴かな?

 着ぐるみ達が待ってるのかもしれない。ちょっと子供に帰って楽しむのもおもしろそうだ。


 「今回はカテリナさんは別行動なんだ」

 「意外と先に行ってるかもよ。母さんはドリナムランドが大好きなのよ」


 何となく納得してしまった。

 固定観念に囚われない自由な発想は、科学者には無くてはならないものだ。

 どちらかと言うと、子供のようだけどね。


 タバコをとりだして、端の方で一服を楽しむ。

 エミーが何処からかコーヒーを運んできてくれた。自動販売機でもあるんだろうか?

 飲んでみると、それなりだな。

 ライムさんが入れてくれるコーヒーが懐かしく思えるぞ。


 吸い終わったタバコを灰皿で消していると、ホテルの玄関からフレイヤが走ってくる。

 曳いているキャスター付きのバッグが、ガラガラと音を立てて煩いぐらいだ。

 

 そんなフレイヤにローザが手を振って場所を教えている。

 パタパタガラガラって感じでフレイヤがやってきたけど、ちょっと場を考えて欲しいな。学生じゃないんだからね。


 「私が最後なの?」

 「そうよ。荷物は先に送っておいたわ。さて、出掛けましょうか?」

 

 俺とエミーはグルカショーツに騎士団のTシャツだ。

 皆それぞれホットパンツや短パンをはいてるな。上は色違いのTシャツだ。

 遊びに行くからスカートははかないようだ。

 そういえば、あまりスカートをはいた人は見掛けない。

 ヒルダさんは薄いロングだったけどね。


 ドミニクが携帯で無人タクシーを呼んでいる。

 前に使った時は専用の乗り場にあった装置で呼んだけど。携帯でも捕まえられるようだ。


 「直ぐに来るわ。外で待ちましょう」


 そんなドミニクの言葉に俺達はホテルを出る。

 そとはかんかん照りの天気だ。

 軽く35度はあるんじゃないか?

 慌てて、バッグから帽子とサングラスを取り出した。


 エミーに一揃いを渡すと、自分でも直ぐに付ける。

 こんな暑い場所に良くも都市を造ったものだ。少し緯度を上げるだけでだいぶ涼しくなる筈なんだけどね。


 そんな事を考えていると、大型のタクシーが俺達の前に停まる。

 皆が乗り込んでいるる間にバッグをトランクに積み込んだ。

 

 俺が乗り込むとタクシーが走り出す。

 方向的には王宮の方角だな。最初からそっちに向かった方が良かったのかもしれない。


 「ドリナムランドは100年以上昔に作られたんだけど、少しずつ大きくなっているのよ。今では建設当初よりも3倍以上になってるわ」

 「良く出掛けたものじゃが、姉様とは初めてなのじゃ!」


 目が見えなければ……、おもしろさは半減以下だろうな。

 となれば、一番楽しみにしてるのはエミーかもしれない。


 摩天楼が消えて森が続く。

 この森の置くには王城があるんだろうが、森の縁を走る無人タクシーからは、その姿は見えないようだ。


 ドリナムランドは王宮の、森を借景にしているようだな。それも施設を大きく見せる為の手段なのだろう。


 「見えてきたのじゃ。あれがドリナムランドの中央施設じゃ!」


 ローザが席を立って前方の白い建物を指差した。

 結構大きいんじゃないか?


 「今夜は隣接したホテルに泊まるわよ。毎晩パーティらしいから、楽しみね」

 「ドレスってこと?」


 「私達は、用意してあるでしょう。エミーのも用意しておいたわ。リオは騎士の制服で問題ないわよ」

 

 フレイヤが嬉しそうな顔で皆に説明している。

 のんびりできると思ってたのになぁ……。


 タクシーは結構な速度を出している筈なのに、未だ着かないぞ。

 中央施設はとんでもなく大きいと見える。


 段々とその姿が分ってきた。

 中央にまるでお城のような建物があり、その真中に大きな門がある。

 そして左右に1km程の長さで城壁のように延びているのがホテルのようだ。

 お城の高さは50m以上あるだろうし、左右に伸びるホテルの階高も6階建てで30mはありそうだ。

 

 正しく、夢の国なんだろうな。


 そして俺達を乗せた無人タクシーはお城の門に入って行った。

 門の中には直径100mはある大きなロータリーがあった。

 その一角に無人タクシーが静かに停まる。


 直ぐにドアマンがやってきて、俺達の荷物を受取ってドミニク達を城の右側にある玄関口に案内していく。

 無人タクシーの料金箱に規定の料金を入れる。全て銀貨でお釣を受けとらずに急いでドミニクを追い掛けた。

 今日から3泊の予定でここで遊ぶことになる。

 ホテルの玄関ロビーは、そんな人達が沢山集まっていた。

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