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V-109 課題が沢山

 「まあ、良いんじゃないか。鉱石採取には加わらないわけだし、居住はカンザスだ。中には新型獣機に乗りたい奴もいるだろうが、それは今後の話だ」

 「一応、話しておきます。後々仲間内で諍いがあっては問題ですし……」


 「意外と心配性ね。この間の特番では結構威厳があるって皆で話してたのよ」

 

 サンドラがそう言ってグラスに酒を注いでくれた。


 「獣機士達は採掘専門だ。巨獣と戦おう何て、これっぽっちも思っていない。精々、俺達が将来的に仲間に加わるだけさ。

 新型獣機の操縦に長けた人材がいるなら、俺達も安心できるってことだ。

 そして、トラ族なら歓迎できる。あの種族は仲間を見捨てる事なんて無いからな」

 

 そう言って旨そうに酒を飲んでいる。

 俺の気の回しすぎか……。

 俺が一番の偏見の持ち主だったとはな。反省しよう。


 「でも、あの特番はおもしろかったわね。早速、王都の家族にクリスタルを送っていた人達が大勢いたわよ」

 「それに、あれを見て西を目指す騎士団もいるだろう。ある意味、俺達のコマーシャル要素が高い番組だったな」


 ひょっとしたら、裏で誰かが意図したってことかな?

 そう考えると、思い当たる人物が沢山いるんだよな。


 「たまには顔を見せろよ!」って言葉に送られてヴィオラの待機所を出た。

 

 カンザスに引き上げると、リビングに向かう。

 明日からまた穴掘りが待っている。

 のんびり出来るのも今日限りだな。


 リビングに入ると、フレイヤとカテリナさんがコーヒーを飲んでいる。

 俺がソファーに座ると、早速ライムさんがマグカップを運んでくれた。


 「珍しい組み合わせですね」

 「あら、そうかしら? 円盤機の最終確認をしていたのよ」


 「出来たんですか?」

 「次の出向には持っていけるわ。ブリッジの下部に取り付けてあるの。大きくなったから円盤機の格納庫に入らないのよ」


 「ちゃんと、此処から乗れるようにしたから、だいじょうぶよ」


 そんな、慰めにもならない事をカテリナさんが教えてくれた。

 あの、カプセル輸送方式なのかな?

 あまり聞かないでおこう……。


 「それで、新型獣機の操縦者達は?」

 「訓練施設でシュミレーションをしているわ。明日からはレイトンの手伝いをしてもらうつもりよ」


 例の温室作りだな。良い物が出来るといいんだけどね。


 「この地でちゃんと育つんでしょうか?」

 「レイトンは十分育つと言ってるわよ。土壌分析では、肥料さえ必要としないと言っていたわ」


 さすがにそれは無いだろうけど、あまり肥料を使わないのは良いことだな。

 最初に1棟建てて、様子を見ながら増やせば良いだろう。

 この地で自給自足は難しいかも知れないが、その努力はするべきだろうな。

 そうなると、必要な物は水になるか……。

 

 「水は結構確保してあるわ。ベレッドに感謝ね。200㎥タンクが2つ屋外にあるわよ」

 「ベレッドさんも楽しみなんですよ」


 皆がいないことを良いことに、3人でジャグジーを楽しむ。

 湯気の中の星空に流れ星が見えた。

 中々凝った造りなんだよな。

               ・

               ・

               ・


 次ぎの日は朝から穴掘りだ。

 各ラウンドクルーザーの船長達が集まってるから、今夜には次ぎの出航日が分るだろう。

 そんな事を考えながら穴を掘り進める。


 エミーとローザは、レイトンさんのところに出掛けたから俺1人だ。

 学校の授業について打合せをするらしい。

 まあ、あの2人ならちゃんとした学校に行っていたからだいじょうぶだろう。

 他の連中はちょっと問題児だったみたいだからな。


 アリスがイオンビームサーベルでどんどん壁を抉っていくから、1時間おきに獣機と自走バージがやってきて瓦礫を片付けて行く。

 どうにか200mほど掘ったところで今日は終了だ。


 瓦礫を満載にして帰っていく自走バージを見送って、カンザスに戻る。

 リビングにいたのはフレイヤだ。


 「ごくろうさま!」

 

 ソファーに腰を下ろした俺に、コーヒーを作ってくれた。

 ライムさん達は出かけてるのかな?


 タバコを取り出して火を点ける。

 やはり、仕事を終えた後の一服はたまらんな。それに、コーヒーにも合うんだよな。


 「リオの方は進んでるの?」

 「それなりかな……。今日も200mは掘ったけど、何て言ってもラウンドクルーザーが2隻並んで、更に間にもう1隻が進めるだけの大きさがないとね。横300m以上は欲しいところだ。まだまだ先があるよ」


 「でも、完成すれば常時10隻以上が中継点に停泊出来るわ。倍以上の人で賑わうわね」

 「ああ、そうなると更に商会も増えるだろうし、ホテルも増設しないとね。ちょっとした娯楽施設も欲しい所だ」


 そう言えば、プールを作ろうって言ってたんだよな。

 あれはどうなったんだろう?

 地上設備だからヴィオラ専用桟橋作っても良いと言った様な気がするぞ。


 マリアンに確認してみるか?

 メールをドロシーに頼んでおく。

 忙しそうだから、メールなら返事が来るだろう。


 「ところで、ドミニク達はまだ帰らないの?」

 「ええ、激論を展開しているわ。原因は南西1,200km程のところで見付かった戦機よ。次々と見付かってるらしいの」


 「それは、アデルが黙っていないと思うな」

 「レイドラが教えてくれたけど、その通りみたいよ。あの一帯で戦機が6機、中小騎士団が多かったから皆大騒ぎみたい」


 戦機1機でもステータスには違いない。他の騎士団と同盟を組みやすくなるんだろうな。

 だけど、一箇所にそんなに戦機が埋まってるのは何故なんだろう?

 俺としてはそっちの方が気になるな。


 そんな事を考えていると、リビングの扉が開いてドミニクとレイドラが入ってきた。

 疲れた表情で、ソファーに落ちるような感じで腰を下ろす。

 フレイヤがミニバーに行って冷蔵庫からビールを持ってくる。


 「ありがとう」


 そう言ってビールを受取ると、早速プルタブを開けて美味しそうにドミニクが飲み始めた。


 「昔からアデルは頑固なのよ。でも、その気持ちは理解出来るわ。直径100kmに戦機が6機。大勢の騎士団が出掛けているわ」

 「だが、行って必ず見付かるわけではない。俺としては賛成しかねるな」


 「結論的には、そうなったわ。次ぎの戦機はアデルってことでね。万が一戦鬼でもアデルに渡すつもりよ」

 「良いんじゃないか。俺達には戦鬼が1機増えてるし。それに、アデルも欲で動いてるわけじゃないと思うよ。

 一応同盟関係ではいるけど、将来的には袂を分かつんだから、それまでに少しでも多く戦機を揃えたいんじゃないか?」


 現状で2機だ。このまま一緒に行動していれば同盟期間内に2機位はさらに増やせるんじゃないかな。無理はしない方が良い。


 「それで、何時出掛けるんだい?」

 「明後日にしたわ。コースはこの間の延長線を探索するつもりよ」


 千kmは先だな。採掘と合わせると10日程度の航行になりそうだ。


 「カンザスは2日遅れて出航するわ。カンザスが一緒だと船足が揃わないみたいなの」

 

 寂しそうにドミニクが呟く。

 確かに、ちょっと低速だからな。


 「となると、代行はクリスが務めるのか?」

 「騎士団を解散してヴィオラ騎士団の副団長になってるわ。アデルも了承してるし、メイデンさんはお姉さんでしょう」


 あれだけ派手に活躍してきたんだから、しばらくはメイデンさんも大人しいんじゃないかな?

 カテリナさんに40mm滑腔砲を強請っていたけど、どうなったんだろう?

 後でカテリナさんに聞いてみよう。


 「まあ、メイデンさんがいるから安心出来るよ。ヴィオラにはアレク達もいることだしね。それに、閃デミトリア鉱石反応が出れば俺とアリスで飛んでいって追跡する」

 「お願いするわ」


 戦機を欲しがるのは騎士団なら当然だ。

 ドミニクだって更に増やしたいに違いない。そしてアデルもだ。

 南西方向をあえて狙わずに北の山裾に近い区域を探索するのは鉱石だけが目的ではない筈だ。

 

 そして、騎士団としても色んなラウンドクルーザーを揃えるのではなく、同型艦をそろえるべきだな。それが出来ないならば少なくとも船速は揃えるべきだろう。


 「そうなると、後4日はここにいることになるのね」

 「穴掘りが少しは進むな。現場監督がこの頃差し入れしてくれるんだ」


 差し入れしてまで俺の機嫌を取ってるんだよな。

 余程工事が進むんだろうけど、その工事の発注主って俺じゃないのか?

 考えると混乱するから止めとこう。現場監督が持ってきたお菓子は美味しかったしね。


 「後どのぐらい掛かりそうなの?」


 心配そうな顔でフレイヤが聞いてきた。


 「そうだな……半年位は掛かるんじゃないかな? 現在の主力工事は転回用のホール造りと、新西桟橋の工事だからな。誘導路は深く掘るし、北に作る桟橋間の連結用ホールはまだ手付かずだ」


 「それと平行して屋外のバージ桟橋も作ってるんでしょう?」

 「あっちは、既存を長く伸ばすだけだから、俺がいなくてOKだと思うな。俺が手伝えるのは工事用の先行トンネルの掘削だ」


 桟橋を新たに作るのだ、そう簡単には終らないと思うな。

 3日以上停泊している小さな中規模の騎士団の獣機士達も小遣い稼ぎに手伝ってくれてる。

 何かあったら……と、保険代わりに手伝ってくれてるみたいだけど、マリアンはちゃんと給料を支払っているようだ。

 これはこれで、あれはあれって奴だな。俺達はそんな事で恩を買おうと言うつもりはこれっぽっちも思っていない。

               ・

               ・

               ・


 2日後にヴィオラ達3隻は出航して行った。

 大きな桟橋にカンザスだけがポツンと残されてしまった。


 その日の作業が終わり夕食を取る段になって、皆が集まった時にカテリナさんに聞いてみた。


 「そうね。確かにカンザスは少し遅いかもしれないわね」

 「何とか出来ないんですか?」


 俺の問いは全員の望みでもあったようだ。

 最大船速が35kmは巡航時の最大の傷害だ。最低でもヴィオラ並みが必要だろう。


 「カンザスの質量が問題なの。いくら反重力装置で船体を浮かせても、動かすとなれば多格式走行装置の足の材質の耐久性が足りないのよ」


 確か今の材料は、獣機の外骨格と同じクロマリン合金だな。

 それより強い材料となると……。


 良いのがあるじゃないか!


 「カテリナさん、重ガルナマル鉱石があるんじゃないですか? あれなら、新型獣機の骨格や外骨格に使えるぐらいですから……」

 「重ガルナマル鋼? そうね、……検討する余地はあるわね」


 突然席を立つと、リビングから飛びだして行った。

 早速、ラボで試験するつもりなのか?


 「何とかなりそうね」


 飛びだして行った扉を見詰めてドミニクが呟く。

 俺達も同じように扉を見ながら頷いた。


 それから2日後。カンザスが出航する。

 既にヴィオラは何回か鉱石を採掘しているらしい。

 カンザスの飛行にはもう1つ問題がある。

 バージを曳航出来ないのだ。

 これも、今後の課題の1つだな。対応方法も意外と簡単なんだけど、1つ1つ解決していくしか無さそうだ。


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