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V-107 ひさしぶりのヴィオラ


 「騎士と獣機士が揃ったって?」

 「ええ、ベラドンナには男性でヴォイラには女性よ。引退した騎士団員の紹介だから身元も確からしいんだけど……。新型獣機に乗る人達は全員がトラ族なの。

 トリスタンさんからの紹介だから、間違いは無いと思うんだけど、獣機士が人間族以外になるなんて初めてじゃないかしら?」


 新型だからな。あまり通常の作業には使えないような事を言ってたから調度良いんじゃないかな。

 カテリナさんは出来ないんじゃなくて適さないんだと言ってたけど、どんな違いなんだか俺には分らなかったぞ。


 「そうなると、ベラスコが戦鬼で新人がベラスコの乗っていた戦機に乗るんだな。ヴィオラにも戦機5機なら問題ないんじゃないか」

 「戦機が7機よ。グレイが原隊に復帰して、代わりに男女の騎士が2人やってきたわ。これで、後1機しかヴィオラには積めないわよ」

 

 それは取らぬタヌキって奴だ。

 イザとなれば増設したって良いだろうし、カンザスにだって積める。

 

 「それで、フレイヤの愛機はどうなってるんだい?」

 「フレームが完成した所よ。桟橋の下の整備工場で製作してるわ。偵察用より大型になるからカンザスの方も少し改造するみたい」


 話を聞くと、直径だけで8mはあるらしい。

 稼働時間を延ばす為の燃料と、大型の機材を積み込む事からそうなったらしいのだが、2人乗りでそんなに大きくなるのか?

 

 「色々と無理を言ったらそうなったわ。武装だって40mm滑腔砲を2つ積んでるし、爆弾は250kgを積めるの」


 たぶん、積載重量の関係で大きくなったんだろう。

 それでも、巨獣に接近しないで長時間活動が出来るなら製作する価値は十分にあるな。


 「それで、今日はどうするの?」

 「これをアレクに届けようと思ってるんだけど……」


 そう言って、酒のビンが2本入った袋を、ソファーの影からテーブルに持ち上げた。

 

 「兄さんのところか……。本来なら、私も行ってあげたいけどカテリナ博士と打ち合わせがあるのよね。会ったら、母さんに通信を入れるように言っといて!」


 俺が言うのか?

 それこそ、余計なお世話に思えるな。


 とりあえず、フレイヤに行って来ると告げてカンザスからヴィオラに向かって歩き出す。

 ヴィオラ専用桟橋はあまり人気が無いが、中央桟橋奥の西桟橋は沢山の人が歩いている。

 中継点は盛況のようだ。ラズリー達はかなり忙しいんじゃないかな。


 ヴィオラの扉は、俺のブレスレットを認識して開いた。

 かつて知ったる我が家だ。そのまま通路を歩いて艦首に向かう。

 休憩所の扉を開けて艦首に進むと……、いたいた。


 「おひさしぶりです」

 「リオ! まあ、座れ」

 

 アレクが俺を何時もの席に着かせる。

 サンドラに包みを渡すと、早速グラスが配られた。


 1本取り出した酒のビンのラベルをアレクが眺めて頷いている。


 「どうして手に入れたかは知らないがマクシミリアンだな。お前がいると良い酒が飲める」

 「ちょっとした縁で、何故か手に入りました。もう1本は後で飲んでください」


 早速グラスに酒が注がれる。

 どうやら、ベラスコの傍に座っているのが新人だな。


 「ところで、ベラスコ。戦鬼はどうだ?」

 「まるで戦機と違うな。力もあるし、瞬発力もまるで違う。戦機が乗れるからと言って戦鬼が乗れるとは限らないって思いだ」


 「それが分れば十分だ。ヴィオラの戦機は3機。俺達と合わせて5機になる。リンダの部下が2機乗るが、あくまで外様だ。ヴィオラは俺達が守らねばならん」


 何時に無く、真面目な話をしているぞ。

 少し酔ってるのかな?


 「ところで、南はどうだったの?」

 「プレートワームが5千匹。それにドレスダンサーが2匹でした。テンペル騎士団、タイラム騎士団と協力して何とか……って感じでしたね。最後は第3軍に任せて帰ってきました」


 「ドレスダンサーは聞いた事がある。とんでもなくでかいと聞いたぞ。未だかつて倒した騎士団はいないと聞いたが、……倒したのか?」

 「ローザと俺が前面で射撃をしている間に、ムサシが背中を切りつけ、その開いた傷口にフレイヤが150kg爆弾を投下しました。それでもまだ生きてましたよ」


 サンドラがスクリーンを展開してドレスダンサーを見ている。


 「何これ! これってほぼヴィオラ並みの大きさじゃない」

 「そうなんです。大きさはそれだけで立派な武器だと知りました」


 「サンドラ、カンザスと交信して戦闘画像を提供して貰えないか確認してくれ!」

 「やってるんだけど、私じゃダメみたい」


 ドロシーが止めてるのかな?

 

 「帰ったら、ドミニクに頼んでみます。少なくともヴィオラ騎士団内では見られるようにしますから」

 「頼んだぞ。しかし、俺も行くんだったな」

 

 「戦機20機が並んで攻撃してましたが、あれだけ並ぶと壮観でしたよ」

 「だろうな。軍でさえ20機を一度に並べるのはめったに出来ないからな。さすがは12騎士団が2つ揃っただけのことはある」


 そう言って上手そうにグラスを傾けた。

 空いたグラスにシレインが酒を注いでいる。

 

 「そういえば、フレイヤが『母親に連絡を入れるように伝えて欲しい』と言ってました」

 「王都に出掛けたら寄ってみるさ。フレイヤにそう言っておいてくれ」


 アレクのお母さんは、王都の事務所にと勤めてるんだったな。アレクの妹も一緒だった筈だ。

 

 「ベラスコはちゃんと鍛えておく。たぶんそれを気にしてやってきたんだろうが、任せておけ」

 「2年程後には例の話もあります。その時は2人を連れて行きますよ」


 「分ってる。だいじょうぶだ」


 そう言うと、体を伸ばして俺の肩をポンっと叩いた。

 端の方ではベラスコがサンドラに説明を求めている。ゴニョゴニョっと耳打ちされると、ベラスコの顔色が変わったぞ。


 そんな彼らに別れを告げて、外に出ると出口にクリスが待ち構えていた。


 「折角来たんだから、部屋によって頂戴」

 

 そう言うと俺を抱えるようにして艦長室へと俺を連れて行った。

 昔の俺達の部屋だが、大きさは半分になってる。

 そしてジャグジーはシャワー室に変わっていた。


 互いの服を脱がしてベッドに倒れこむ。

 久しぶりのクリスだからな。ここはサービスしとかないとね。


 2時間程経って、俺達は執務室のソファーでコーヒーを楽しむ。

 タバコに火を点けると、ガリナムの戦いぶりを話してあげた。


 「そこが姉さんの悪いところなのよ。全く男勝りなんだから……」

 「だけど、それで助かったようなところもあるからね。全く、豪傑だと思うよ」


 「でも、私は姉さんみたいなムチャはしないわよ」


 そんな事を言ってるけど、やはり似たところがあるんじゃないかな。

 

 「皆が南に行ってる間に、領内の鉱石を採取したわよ。結構色々とあったわね。

 私達は荒地で深さ20m程までしか鉱石採取をしないけど、30mの深さまで探ると更に鉱石が採掘できる事が分ったわ。

 問題は採掘に時間が掛かる事ね。それと、地中探査を停止して行なわなくてはならないわ」


 なるほど、確かに地中深く探査の手を伸ばせば更に鉱石はあるのだろう。

 だが、停止するとなると問題だな。

 そして掘り出すために要する時間は倍以上掛かるんじゃ無いだろうか?


 今はこのままで良いだろう。

 だけど、将来的に資源が枯渇した時には、更に深い地中に探査の手を伸ばす事が出来るという事が分かっただけでも、レイトンさんをこの地に呼んだ甲斐があるというものだ。

 

 「そろそろカンザスに戻りましょうか?」

 

 そう言って俺を立たせると部屋を出る。

 確かに、カンザスにはクリスの部屋があったな。カテリナさんと共同だけど、あまり2人とも部屋を使わないからな。


 俺達が戻ると、皆が集まっていた。

 どうやら、ラズリー達との打ち合わせは終了したみたいだ。


 カテリナさんもワイングラスを片手に早速飲んでいる。

 俺達がソファーに腰を落着けると早速グラスが渡される。

 まだ若いワインだな。酸味が強い感じだ。


 「レイトンから話を聞いてきたわ。全くこの領地は退屈しないって言ってたわよ。それで、試験的に植物を栽培したいと言っていたから、資金を渡しておいたわ」

 「後で、支払います。おいくらですか?」


 「気にしないで良いわ。例の薬のパテントが入ったの。リオ君で実証されたから、もう凄い人気よ」

 

 例の薬って、あれか?

 最初は真っ赤だったし、今度のはピンクなんだよな。アリスは無害だと言ってたけど、あの1%に秘密があったのか!


 「一応、半分はリオ君にあげるわ。口座に振り込んでおいたわよ」

 「どうも、ありがとうございます」


 礼は言ったけど、心からではないぞ。

 まあ、他の人の為にもなったのだろうか?ちょっと気にはなるが、無害であると信じよう。


 「でも、何を栽培すんるんでしょう?」

 「一応、果物をリクエストしておいたわよ。でも、この地で作れるなら何でも良いと思うわ。私達が自立出来る第1歩ですもの」


 「柑橘系じゃろうか? メロンと言うのも良いのう……。トマトは果物だったか?」

 

 トマトは果物だ。そしてメロンは野菜じゃなかったか?

 どっちにしろ、そんな果物が取れれば嬉しいな。


 そんな談笑の中、ドミニクが気になる話を始めた。

 どうやら、忍び込んだテロリストを4人始末したらしい。

 逮捕ではなく始末と言うところが問題だが、そんな考えではテロリストに対処出来ないらしい。目には目を……が対テロリスト戦の実態と言う事だ。


 「ガレオンさんの所に4人の手首を持ってきたらしいわ。手首を偽装する人はいないし、DNA鑑定で全て相手を特定出来たそうよ。

 すべて、かつてのサーペント騎士団と関係のあった連中みたい。

 1年このまま過ごして何も起きなければ帰るって言ってたわ」


 やはり、裏の世界で戦っているんだな。

 それにしても、この中継点に忍び込んでくるとはね……。


 「でも、何でこんなに揃ってるんだ? まだ夕食には間があるはずだけど」

 「兄様、例の放送じゃ。皆早く見たくてやって来たのじゃ」


 それって、確か20時からじゃなかったか?

 今はまだ16時だぞ。


 それでも、楽しみなんだろうな。

 2つのスクリーンを展開して2手に分かれてゲームを始めたようだが、終る頃にはちょうど始まるかも知れないな。


 エミーの隣に座って、エミーとリンダそれにローザとフレイヤのスゴロクゲームを観戦する。

 ドミニクとレイドラはカテリナさん相手にチェスを始めたみたいだ。

 こんな平和な時が何時までも続くと良いんだけどね。


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