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V-106 マクシミリアンさんの頼み


 俺達が引き上げてくると、カンザスはバージターミナルへと移動を開始する。

 作戦会議はドミニク達に任せて、軽い夜食をライムさんに食べさせて貰うと、後は3人でジャグジーに向かう。


 殆ど決着が付いたから、明日には帰ることが出来るだろう。

 3人でお湯に浸かり互いの無事を確かめ合う。

 

 「それにしても、あれだけの動きが出来るんなら最初からイオンビームサーベルを使った方が良かったかもね」

 「問題は、そこだね。俺達とデイジーがいれば何とかなったかも知れない。でも、そうなると俺達を誰もが頼ることになる。俺達の出撃を夜間にしたのは俺達の動きをなるべく知られないようにとの配慮だと思うよ」


 「難しい話ですね。頼られるのは嬉しいですけど、今回は近くだから出来たようなものです。遠距離ではガリナムは無理でしょうし、補給だって問題があります」

 

 そして、あまりに俺達を頼ると俺達がいなくなった時に困ることになる。エミーやローザには寿命があるのだ。100年以上はこんな戦いが出来ても、その後にデイジーやムサシを動かせる人材がいないとも限らない。

 中継点の防衛はテンペル騎士団の緊急の課題だな。


 「円盤機に滑腔砲を付けたいわ。あれは威力があるわよ。今回だって、30mm機関砲を撃ってみたけど、やはり跳ね返されたわ」

 「カテリナさんに相談するといいよ。エミーと2人で乗る専用機を作っても良さそうだ。爆弾も250kgの大型を俺達なら使えるって言ってたぞ」


 俺の言葉を聞いて天井の星座を見ながら考えているようだ。

 そんなフレイヤを押しのけるようにしてエミーが俺に抱き付いて来た。


 ジャグジーを出るとベッドに移動する。

 少しは楽しめるかと思ったけど、いつの間にか寝てしまった。

 そんな俺達が目覚めたのは、昼近い時分だった。

 衣服を整えて、とりあえずリビングに顔を出すと、誰もいないようだ。


 フレイヤ達が自分達の部屋に消えるのを見ながら、タバコに火を点けた。

 スクリーンを展開して昨夜の首尾を確認する。

 

 「デイジー、プレートワームの状況は?」

 『生存するプレートワームは数百です。現在、テンペル騎士団が戦機で攻撃中』


 プレートワームの群れを遠巻きにしながら3機単位でまだ動いている奴に弾丸を撃ち込んでいる。

 殆ど終ってるな。ようやく帰れるぞ。


 「……で、カンザスは止まったままだけど、ドミニク達は?」

 「会議の最中です。第3軍よりマクシミリアン様がお見えになりました。テンペル騎士団長、タイラム騎士団長、それにドミニク様達が今後の事を話しているようです」


 3日後に付くといってたな。たぶん艦隊が付くのは明日なんだろうけど、1歩先に円盤機でやってきたようだ。

 まあ、俺が出なくてもだいじょうぶだろう。

 必要なら、呼んでくる筈だ。


 フレイヤ達が準備を整えて戻ってくるとエミーは俺の隣に腰を降ろした。フレイヤはミニバーの奥の扉をノックしている。


 「ようやく起きたにゃ。もうすぐお昼にゃ。朝食と一緒で良いかにゃ?」

 「構わないわ。サンドイッチを1切れにマグカップでコーヒーをお願い!」


 そんな声が聞こえてくる。

 ライムさん達には、困った連中だと思われてるに違いない。

 

 フレイヤが俺の隣に腰を降ろすと、レイムさんがマグカップを俺達の前に出してくれた。少し早いってことは、インスタントってことか?


 それでも、コーヒーで頭が冴えてくる。

 問題は、この時分にマクシミリアンさんがやって来たことだな。

 殆ど終っているから、今更のような気がするな。それに艦隊が来るのは明日だしね。


 『リオ様。ドミニク様が呼んでいます』

 「ああ、分った。直ぐ行くよ。ありがとう」


 両脇の美女の肩を叩くと席を立った。

 リビングを出て、通路を歩いて会議室に向かう。

 

 会議室の扉を開けると、全員が俺を見る。

 そんな連中に軽く手を上げると、ドミニクの隣に座った。


 俺の迎い側の席にいるのはマクシミリアンさんだ。

 

 「お久しぶりですね。さすがはヴィオラ騎士団と言えるでしょう。ところで、ぶしつけなお願いに伺っているのですが、騎士団長はリオ公爵の意見を聞くべきだという事になりまして……」


 俺に下駄を預けたのか?

 ところで、そのお願いって何なんだ? 俺にはさっぱりだぞ。


 「第3軍の軍団長は、この脅威を取り除いたのが第3軍ということにしたいらしいの。そこで取引の最中になってるわ」


 なるほど、これだけの脅威を取り除いたとなれば、王国内での発言力は強まるだろうな。

 だが、大きな問題があるぞ。

 俺達には、エミーとローザがいる。

 王女達から国王の耳に入らないとも限らない。


 たぶん、テンペル騎士団、タイラム騎士団としても十分に納得できる内容だったに違いない。そしてドミニクとしてもそれを納得して、その問題に気が付いたんだろう。

 それで俺を呼んだんだな。


 上手い具合にローザ達は此処にはいない。

 ここで、手を打って後で俺に上手く説明させたいのか?


 そんなに都合良く行くんだろうか?

 ちょっと疑問だな。


 「此処での経緯を知りませんが、現在も脅威は継続しています。残りを第3軍とテンペル騎士団それにタイラム騎士団が処理していただけるなら、我等は中継点に戻りたいのですが……。引き受けて頂けるでしょうか?」


 「もちろん引き受けますぞ。そして、マクシミリアン……このご恩を一生忘れませんぞ」

 

 俺の言葉に、騎士団長達はホッとした顔に戻った。

 どんな条件かは聞いていないけど、3つの騎士団に利のある内容だったんだろうな。


 「それで、少なくとも3日間はあの群れを取り囲んで貰いたいと思っています。かなり削減はしましたが、まだまだ息のある奴はいるでしょう。第3軍であれば十分に対処出来るものと思っています」

 

 アリバイは必要だよな。

 まだ、数百は残ってるだろうから、ちょうど良い。

 持ってきた弾丸が減ってないのもおかしな話だ。


 「とはいえ、ドレスダンサーを倒したことまでを我等にとは言いません。それはしっかりと国王に3騎士団の働きによるものだと報告いたします」


 さすがに、それは無理だろうな。

 かつてのデイジーが、ようやく退けたという事だから、戦機がいくらいても無理な話だ。

 

 俺達に深々と頭を下げると、マクシミリアンさんは会議室を出て行った。

 そして、俺達の話合いが始まる。

 早速、エミーとローザを呼んで、ここで起きた出来事を整理する事になる。


 「要するに、ドレスダンサーは我等が倒して、その後のプレートワームの集団を最終的に葬ったのは王国軍としたい分けじゃな?」

 「早く言えばそうなる。まあ、あの死骸の山の始末を、王国軍がしてくれるならそおれで良いんじゃないか。プレートワーム討伐の手伝いをしてくれたことによる褒賞は騎士団長が納得できる額を提示して貰っているそうだ。その上に、バージターミナル防衛用に部隊の一部を常時出向させるとまで言っている。

 中継点にもローザ達がいるんだから、第3軍から防衛部隊を迎えても俺は良いと思う」


 「まあ、まだ動いてるからのう……。そっちは、マクシミリアンに手柄を与えても良いであろう。見返りは貰っておるなら、我がとやかく言うものではない」

 

 何か王国の状況が分るような話だが、国政はだいじょうぶなんだろうな?

 

 「これでようやく中継点に帰れますね。今度の戦いは色々と反省点があります。カテリナ博士ともゆっくりと相談しなければ……」


 エミーは端から問題視していないみたいだ。

 たぶん、第3軍の中に国王の監視役が紛れているんだろう。

 全く別のルートで国王の耳に入るに違いない。

 その報告を聞いた国王はどんな態度を取るんだろうか?

 ちょっと気にはなるが、俺達には関係ないことだ。


 「色々とありがとうございました。感謝してもしきれない気持ちです。……ところで、1つ教えてください。この異変をどうやって知ったのですか?」


 ユーリーさんが俺達に向かって頭を下げると、質問を投げてきた。


 「ちょっとした違和感がそもそもの原因です。前に2度ありました。スコーピオの襲来、東の山脈の大規模な崩落と巨獣の暴走、そして今回です。

 前がありましたから、今度も何かが起きていると思って科学衛星の画像でその原因を探り、プレートワームの群れを見つけたんです」


 「不思議な話ですが、リオ様がそれを感じたとなると説得力がありますね。そして、約束通りやって来て頂けたという事ですか……」

 「確かに、この距離を1日も掛からずに来れるなら新たに護衛騎士団を仲間に入れずとも良いわけですね。やはり戦姫は違いますね。何としても我等も戦姫を手に入れるべく西の大地を探索せねばと皆で話していたのです」


 そう都合良く行くんだろうか?

 戦姫を見つけても、パイロットがいないぞ。


 とは言うものの、そんな感じで各騎士団も戦機を探してるんだろうな。

               ・

               ・

               ・


 会議が終ると、俺達は中継点に向けて出発する。

 ガリナムは既にバージターミナルを離れた。それでも3日掛かるから少しでも早くここを出たんだろう。


 バージターミナルを20km程離れると、飛行モードで中継点に向けて飛行を開始する。

 帰り着くのは多分深夜になりそうだな。


 夕食を終えると、マクシミリアンさんから土産に貰ったワインの封を切って皆で楽しむ。

 

 「我が18になったら飲めるように、1本は残しておくのじゃぞ!」

 

 そんな事を言ってるローザにも、エミーが1杯だけワインを飲ませていた。

 確かに上手い酒だ。

 マクシミリアンさんも、第3軍の指揮官など止めて、これを本業にしたら良いと思うのは俺だけじゃないと思うな。


 「でも、あの時のガリナムには驚いたわ。いきなり群れに向かって突撃するんですもの」

 「ちゃんと映像に記録されてるから、後でクリスに見せてあげるわ。仰天するわよ」


 そんな事を言って笑ってるのは、一応の区切りが出来たという事だろう。

 カンザスの有効性も確認できたし、問題点もいくつか明らかになった。

 それを改善すれば、カンザスはこの地の守りの要として位置付けられていくだろう。

 俺としてはガリナムに飛行能力を持たせたいが、そうなるとあの大きさでは無理みたいだ。

 たぶんカテリナさん辺りが頭の片隅にそんな事を考えてるに違いないとは思うな。


 そして、深夜遅くに俺達は中継点に帰りついた。

 ヴィオラ騎士団専用の桟橋に停泊したことを確認して、俺達も部屋に戻って眠ることにする。


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