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V-105 終盤戦はイオンビームサーベルで

 ガリナムが通過した跡は、帯状にプレートワーム達がもがいている。

 あのまま放置すれば死んでしまうだろう。

 かなり深く多脚の槍で刺されているようだ。1匹の直径20m程の円盤状のプレートに数箇所は穴が空いているぞ。

 

 『とんでもない兵器ですね』

 「ああ、だが確実だな。多脚をあんなふうに使えるとは思わなかった」


 そしてついにガリナムは群れを抜け出した。

 数km先で大きく反転している。


 「付いて来てくれてありがとう。ちょっと心配だったけど、何とかなるものね。カテリナさんには感謝だわ。今度は深入りしないから、リオ君は本来の任務に向かって良いわよ」

 「それでは、後は頼みます。でも、ムチャはしないでくださいよ」


 了解って返事はしてるけど、絶対に同じ事をやりそうな気がするな。

 ガリナムに手を振って別れると、西に向かう。


 「アリス、地上滑走に移ってくれ。今度は低位置でレールガンを発射する」

 『了解しました。レールガンの弾速、最大まで高めます』


 数分で群れの西側に移動すると地上に下りる。

 問題は、最大速度で打ち出したレールガンの弾丸が、空気との圧縮熱で気化してしまい有効射程が2km程に低下してしまうのだが、それは、数を撃つ事で何とかしよう。


 膝撃ちの姿勢で、プレートワームの群れから300m程の距離から発砲を始めた。

 3発毎に、周囲を確認する。

 幸いにもアリスに近付くプレートワームはいないみたいだ。


 レールガンを発射するたびに、光が南に伸びていく。

 地上3m程の高さで撃っているから、衝撃波でプレートワームの群れが吹き飛ばされているのが分る。

 光が貫通したプレートワームはそれこそ絶命している筈だ。


 20発を発射したところで、マガジンを交換する。

 射撃地点を移動しながら、みんなの様子を眺めると、カンザスは南北に移動しながら群れの東を叩いている。

 ガリナムは北部を中心に群れを踏み潰しているようだ。


 「どれ位狩れたんだろうか?」

 『現時点で3割を超えています。生命反応に乏しい生体ですから、推定の域を出ません』


 それでも3割か……。

 まだまだ先が長そうだ。

 200m程東に移動して、再度レールガンを放つ。

               ・

               ・

               ・


 長い夜が明けて、俺達はバージターミナルの一角に船体を停泊させると会議室に集まった。

 ちょっと疲労の色が見える顔立ちだが、まだまだ戦えるって顔をしているぞ。

 濃いコーヒーを飲んでるけど、もう一戦仕掛けるつもりなんだろうか?


 会議室大型スクリーンを展開させると、カテリナさんが状況説明を始めた。


 「ご苦労様。現在の状況を簡単に説明するわ。

 先ずは、ドレスダンサーだけど、完全に息の根が止まったわ。これについてはプレートワームに感謝しなければならないわね。

 そして、問題のプレートワームだけど、昨夜の時点で約5千と推定した数、現在は2千に減っているわ。後一戦交えれば全滅出来そうだけど、問題があるのよね……」


 その問題とは弾薬不足という事らしい。

 俺達が使っているのは88mm砲だけど、この近くで活動している騎士団の多くが75mm砲を使っている。

 弾丸提供を打診してくれる騎士団は多いのだが、使えないのだ。

 

 「駆けつけてくれてる王国軍の駆逐艦から用立てて貰うことになってるけど、多目的円盤機による輸送は今夜までに2回戦分が良い所だわ。

 ガリナムも多脚の2割を失っているから、あのような戦いを次ぎに行なうのは無理だわ」


 補給が問題という事らしい。

 確かに、消耗品を補充するのは此処では無理だ。それにガリナムだってあんな戦いをするために作ったわけではないからな。


 「そこで、アリスとムサシに弾丸の補充が済むまで対応して貰います」

 「それは構わないが、出来れば数時間の休憩を取らせて欲しい。それと、戦機を使えないだろうか?」


 俺の言葉に全員が互いの顔を見渡している。

 

 「そうね。巨獣ではないから、上部のプレートを貫通できる初速が得られれば十分可能だわ。40mm滑腔砲も後3丁あるからそれも使えるわよ」

 「戦機を出すのであれば、10機は出せます。タイラム騎士団にはこのままバージターミナルの守備をお願いします」


 「いや、我等も出掛けよう。ようは、この地に来させなければ良いのだ。両者で20機あれば十分に敵を蹂躙できる」


 確かに、50mm長砲身砲ならば近場で撃てば十分に役立ちそうだな。カートリッジを2個ずつ持てば1機当り15発を撃てる。それが20機なら300発か。援護をカンザスとガリナムで行なえばかなりの戦果が期待できるんじゃないかな。


 「護衛は我が引き受けようぞ。リンダもいるし、かなりの戦果が望めると言うものじゃ!」


 すぐに作戦会議が始まる。そんな事をはドミニク達に任せて、俺達は部屋に引き上げた。

 少なくとも数時間は眠れるだろう。


 ローザ達がジャグジーから出たのを見計らって、1人でお湯に浸かる。

 体を温めれば直ぐに眠れるだろう。

 長湯をせずにベッドに入ると、エミーが体を寄せてくる。

 片手でエミーを抱き寄せると直ぐに目蓋が閉じる。俺も疲れているのだろうか?


 目を覚ますと時計を見る。14時だから3時間ほど寝込んだようだ。

 まだ眠いが、今度は俺達の番だからな。

 衣服を整えるとエミーに薄い上掛けを掛けてあげる。


 リビングに向かうとカテリナさんフレイヤがスクリーンの画像を見ていた。


 「あら、起きたのね。もう少し寝ていても良かったんだけど……。現在はこんな状況よ」


 21機の戦機が南北に並んでゆっくりと前進している。

 まだプレートワームまでには500m程の距離があるみたいだ。

 デイジーが戦機の後ろを忙しそうに移動している。


 ローザはあまり寝ていないけどだいじょうぶなんだろうか?

 そんな疑問を持ちながら、ライムさんの出してくれたコーヒーを飲んだ。


 「攻撃が終了した段階で、ガリナムが介入する手筈になってるわ。カンザスの砲弾をガリナムに移してあるから、もうしばらくは暴れられるわよ」


 ガリナムとデイジーが退却を援護するってことだな。

 

 「少なくとも私達の出番が来るのは2時間後みたいね。プレートワームは頭上に攻撃手段を持たないから安心出来るわ」


 その攻撃手段というのがイオンビームサーベルで上空を滑空しながらの攻撃と言うんだから、ガリナムの突撃とさほど変わらない気がするな。


 スクリーンの戦機が歩みを停止した。

 全機がライフルのような長砲身砲を構える。

 そして、一斉に50mm砲弾が放たれると、プレートワームの背中の甲羅に吸い込まれて内部で炸裂する。


 5回の攻撃が終るとマガジンが交換される。

 その間に、戦機に迫ってきた数匹はデイジーとリンダの戦機によって葬られた。


 これなら、安心して見ていられるな。

 戦機に100m以内に近付くプレートワームは皆無だ。

 そして1撃毎に10匹以上のプレートワームが葬られていく。

 

 「そろそろ、エミーを起こして来るわ。後1時間は無い筈よ」


 そう言ってフレイヤが席を立ったのは3個目のカートリッジを交換している時だった。

 直ぐにフレイヤが帰ってくる。

 エミーは、一旦自分の部屋に戻っていった。着替えとメイクってことだろうな。


 「やはり手前から攻撃すべきでしょうか?」

 「……どうかしら? 出来れば奥の方からが良いかも知れないわ。デイジーとリンダの戦機がこちら側にいるし、他の戦機も補給を終えたら戻ってくるわ」


 それに、ガリナムもいるからな。

 高速で戦機の援護を行なえるガリナムはやはり便利に使えるようだ。


 『アリスとムサシは出撃の準備をしてください。攻撃開始30分前です』


 ドロシーからの連絡だ。出発まで、10分もあれば十分だから、タバコに火を点けて戦機の最後の攻撃を見守る。


 3回目の攻撃が終了すると、戦機が全速力で後退し始めた。2kmほど後方には各々のラウンドクルーザーが待機しているから、補給と休息を取るのだろう。


 そしてガリナムとデイジーが先程までの戦機の列に移動している。

 たまに向かってくるプレートワームを、ピンポイントで狙撃し始めた。


 「準備が出来ましたわ」

 「それじゃあ、出掛けるか。くれぐれもムチャはしないでくれよ」


 そう言って、俺も席を立つ。

 壁の中のカプセルを使って移動するとアリスに乗って装甲甲板へと向かう。


 『カンザスから入電。「準備出来次第発進せよ。攻撃はリオの判断に任せる」以上です』


 まあ、動かすのはこっちだからな。

 カテリナさんの言葉に従うか。


 ムサシが装甲甲板に上がったところで、カンザスから飛び降りると渚の方向に移動する。

 ムサシも俺を追い掛けてくるようだ。


 「渚方向からプレートワームの西に向かって攻撃する」

 「了解しました。円盤機は群れの上空で待機するそうです」


 数百m上空から全体の動きをみてくれるようだ。

 確かに、目が欲しい所だ。アリスからも見る事が出来るだろう。


 「エミー、イオンビームサーベルを伸ばして、プレートワームの上を滑空するんだ。絶対に止まるなよ。奴等は上空への攻撃手段が無いが、止まった場合にはどんな攻撃をしてくるか分らないからな」

 「了解です。プレートワームの背中から数mを滑空します」


 アリスに亜空間からビームサーベルを取り出させて、イオン噴流の刃を数m伸ばした。

 敵の最後から50m程内側に場所を取ると、イオンビームサーベルを引き摺るように構えてプレートワームの群れの上を滑空する。


 斬ったという感触はまるで無いが、俺の通り過ぎた後には背中の甲羅を半分にされたプレートワームがもがいている。

 少し遅れて俺の左側をムサシが薙刀のようにしたイオンビームサーベルでプレートワームを切り裂きながら移動してくる。


 群れを北に抜けたところで、50m程東に移動して再度南に向かう。

 2回往復したところで一旦攻撃を中断してアリスに機体の点検と状況の確認を依頼した。


 イオンビームサーベルを長時間使うことになるからな。ムサシの設計者だってこんな事態は想定していない筈だ。


 『アリス及びムサシとも異常はありません。イオン噴流の精製にも揺らぎすらありません。念のために、1往復毎に点検をしたらいかがでしょうか?』

 「そうだな。先は長そうだ。エミーもそのつもりでいてくれ」


 エミーからも了解の返事が届く。

 さて、もう1往復したら一息入れよう。

 

 更に1往復したところで、俺達は休憩に入った。

 地表から50mほど上空で、プレートワームの群れを眺めながら一服を楽しむ。

 

 後、20往復もすれば群れを東に抜ける。

 かなりの落ちこぼしはあるだろうが、ほぼ群れを葬る事が出来るだろう。

 

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