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V-104 ガリナム突撃


 てっきり、ガリナムはカンザスと行動を共にすると思っていたが、単独行動とは驚いたな。

 

 「近接防御は精々30mm機関砲じゃ。徹甲弾でも跳ね返されると思うのじゃが?」


 作戦会議は、皆で昼食を取って解散となった。

 そして俺達はカンザスのソファーでのんびりと時を過ごしている。

 

 『とっくに死んでるんじゃないの?」

 

 フレイヤの言葉にローザが頷いている。

 ちょっと遅れて、ドミニク達も賛同したように頷いている。


 「まだ生きてるわ。偵察用円盤機からの映像を見て!」


 カテリナさんがコーヒーカップをテーブルに戻して、端末を操作するともう1つのスクリーンを展開する。


 「動物である以上、バイタル反応があるわ。それがこのグラフ……。体液を循環させる為に原始的な心臓があるようね。このグラフの赤色の線が10分間フラットになったら死亡と判断するわ」


 スクリーンに表示されるグラフの線は何色かあるけど、重要なのは赤ってことだな。

 それがフラットになって10分経過を見るなんて、人間の死亡判定みたいだ。

 今は10秒程の間隔で定期的に脈動している。


 「必ずしも安定していないように見えますが……」


 エミーの言葉に全員がスクリーンを見詰める。

 確かに、脈動間隔が少し不定期だな。周期が微妙に変化している。


 「という事で、やはり攻撃は夜になりそうね。原始的な体構造だから損傷には強靭だわ」


 俗に言う、シンプル・イズ・ベストって奴だな。

 それだけ損傷に強い。そして修復も簡単だ。


 「ちょっと、疑問があるんですけど……」

 「あら、何かしら?」


 「あれだけのプレートワームを倒した後はどうするんですか? さすがに5千匹の死骸が残ってたら衛生上問題な気もするんですけど……」

 「良い質問ね。ローザは知ってる?」


 「もちろんじゃ。グールイーターが始末する。そして、死骸は土に還るのじゃ」

 

 俺とエミーだけがキョトンとしている。

 フレイヤ達は知ってるようだな。


 「これがグールイーターよ。姿はサンドワームに似てるけど、サンドワームが内陸にいるのに対してグールイーターは海辺にいるの。渚から陸地に向かって20km程が彼らの生息地よ」


 確かに似てるけど、決定的な違いがある。

 管虫のようなキチン質の光った皮膚ではなく、鱗に覆われているのだ。

 種としては一緒なんだろうけど、生息地によって体が新化したんだろうか?


 「蛇みたい!」

 「見た目は、ちょっとだけど……危険な生物じゃ無いのよ。海辺の掃除人ね」


 確かに見た目は怖そうなんだけどね。

 八目ウナギが鱗を持って動いているように見えるんだからな。


 「とは言え、暇ね……」

 

 カテリナさんが呟くと全員が頷いている。

 まあ、確かに夕食まで4時間以上ありそうだ。


 「ちょっと出掛けてくるにゃ」


 ライムさん達が大きな紙袋を抱えて、俺達に断わって出て行こうとしている。

 

 「そんなにお菓子を持ってどこに行くのじゃ?」

 「下の食堂で映画鑑賞にゃ! 沢山ビデオがあるって言ってたにゃ」


 その言葉を聞くと早速ソファーから数人が席を立つ。

 ムサシを動かすのに時代劇が良いだろうって沢山画像クリスタルを買い込んだんだろうか?

 まあ、暇ならそれも良いんじゃないかな。

 

 残ったのはドミニクとレイドラだ。

 カテリナさんはローザと共に真っ先に出て行ったし、エミー達も追い掛けて行ったからな。


 「3時間あればひさし振りにゆっくりと過ごせるかな?」


 ドミニクがそう言って俺をジャグジーに誘う。

 レイドラは改めて紅茶を入れたところを見ると、少し遅れてくるみたいだな。


 ドミニクの服を脱がすと肉感的な姿態が姿を現す。

 十分世界を狙えるよな。

 そんなドミニクと一緒にジャグジーにはいると、天井ドームが降りてきた。

 しばし霧に霞む星空を眺めながらドミニクと時を過ごす。


 突然、ドームが開くとレイドラが滑り込んできた。

 レイドラはスレンダーだが、貧相と言うわけではない。あくまで俺の周囲のいる女性の中ではの話だ。

 十分にモデルとして通用する姿態を持っている。

 レイドラに俺を譲るように俺の隣に移動したドミニクは、俺がレイドラを背後から抱きしめるのをボンヤリと見つめていた。

               ・

               ・

               ・


 夕食時には全員がテーブルに揃った。

 どんな映画だったのかは知らないけれど、隣同士で座ってるエミーとローザが小声で感想を話しているのが微笑ましくもある。


 小さなナイフとお皿の当たる音がする中で、カテリナさんがドレスダンサーの死亡を報告してくれた。


 「どうやら、死んだようね。そして3つプレートワームの群れが、ついに合流したわ」

 「いよいよじゃな!」


 「2時間後に爆撃を始めるわ。フレイヤはエミーと一緒だから参加してはダメよ!」

 

 爆撃、砲撃、そしてカンザスとなるわけだな。

 そうなると、俺達の出番は3時間以上後になるぞ。

 今が19時だから、なるほど深夜の攻撃は予定通りと言う訳だな。


 「テンペル騎士団が何発かナパーム弾を持っているらしいから、すこしはここから見えるかも知れないわね」

 「50km以上離れていますよ。見えるでしょうか?」


 「その時は、円盤機からの画像を見ましょう」


 そんな話をしながら食事を終えると、ソファーに移動してスクリーンを展開する。

 サーマル画像では、プレートワームの体熱があまり無いので良く見えない。

 暗視画像に切り替え、モノトーンの世界で蠢く奴等の姿を食後のコーヒーを飲みながら眺める。


 群がってるなんてもんじゃないぞ。まるで団子のようだ。

 あの状態なら爆弾も有効なんじゃないかな。


 円盤機が20時を過ぎた頃に発進した。

 上空で編隊を組んで5機並んだ状態で爆撃をするようだ。

 フレイヤが乗っていた円盤機も150kg爆弾を乗せて出掛けている。後の4機は50kg爆弾を3個抱えている。1度の爆撃で750kgの爆弾を落とすということになる。

 騎士団の保有する円盤機の性能をもう少し上げておきたいな。


 暗視画像を通常モードに戻して、円盤機からの画像に切り替える。

 

 待つこと、10分でプレートワームの群れに爆弾が投下された。

 ナパーム弾の火炎が奴等を包み込む。

 その灯かりで、爆弾の炸裂が見て取れる。

 スクリーンの映像だけでなく、カンザスの大きな窓からも地平線の奥の一部に赤い光が見えるぞ。


 「次の爆撃までに30分は掛かりそうね」

 「あれだけ、炸裂しておるのに殆ど被害が分らんぞ」


 被害が無いわけではないのだろうが、その被害を無効化できる程の数という事だろうな。

 1匹ではさほどの脅威ではないんだろうが、これだけの数だと、チラノクラスの巨獣が20頭群れている方が容易く倒せるような気がする。

 脅威とは、巨獣単体の危険度に群れの数を掛け算したものになりそうだ。

 それでいくと、目の前のプレートワームの群れは、正しく上位クラスになりそうだ。

 

 2本目のタバコが終る頃に、再度円盤機の爆撃が始まる。

 どうやら、テンペル騎士団のラウンドクルーザーがかなり接近しているようだ。

 次の攻撃に備えて前進しているみたいだな。


 「今度は全部炸裂弾を落としたみたいね」

 「あまり、状況が分らんのう……」


 まあ、それは仕方がない。画像を映し出すように爆撃するわけじゃないからね。


 そんな攻撃が、20分間隔で更に2回行なわれ、最後の爆撃は広い範囲にナパーム弾が落とされた。

 

 「そろそろ出撃よ。ローザ、グランボードから絶対に落ちちゃダメよ」

 「分ってるのじゃ。乗ったら直ぐに足を固定するのじゃ」


 機械的に固定するのか? まあ、その方が安全だな。


 俺達は壁の扉を開くとカプセルでカーゴ区域に移動する。

 デイジーの腰には左右に2個ずつレールガンのカートリジが付いていた。

 銃に装着されているカートリッジと合わせて100発になるな。

 あまり撃ち続けると、直ぐに弾切れを起こしそうだ。


 アリスに乗り込むと直ぐに昇降装置に移動して、3機の戦機に片手を上げて健闘を祈る。

 装甲甲板に出ると直ぐに飛び降りて南方に滑空を始めた。


 「アリス、とりあえず渚付近で待機だ。出番は未だだが、周囲の動体に注意して騎士団の攻撃を眺めていよう」

 『了解です。プレートワームはドレスダンサーを中心とした周囲1kmに集中しています。次の群れは来ないようですね。そういう意味では渚付近は安全区域と推測します』


 カンザスの明かりが見えなくなったところで、アリスは速度を増して移動する。

 10分後には20km程南西に移動した場所で停止した。

 

 高度を50m程に上昇させれば、10km程北西にいるプレートワームの群れが、ナパーム弾の炎に浮かび上がって黒々と見える。

 

 コクピットを開いてアリスの手の平に乗り、そんな光景を眺めながらタバコを楽しむ。

 

 直ぐに、砲撃が始まった。

 これは、テンペル騎士団の2隻だな。16門の88mm砲が矢継ぎ早に砲弾を吐き出す。

 6発を撃って砲身を冷却しながら、装填用シリンダーに砲弾を供給して3分後に再度6発を放つ。

 砲弾が炸裂した光の中で、数匹のプレートワームが吹き飛んでいるから、かなりの痛手を受けている筈だ。

 4回の砲撃が終ったところで、カンザスと入れ替わる筈だ。今頃は移動している頃だろう。

 上空から照明弾が投下される。

 最後の砲撃はその灯かりの中で行われた。

 

 俺も、吸殻を携帯灰皿に入れるとアリスに乗り込む。


 コクピットに着くと直ぐに全周スクリーンの上方に、カンザスとガリナムそれにアリスの位置を表示して状況を掴む。

 ガリナムはアリスに接近中だ。距離は10kmを切っている。カンザスも移動してこちらに向かっている。


 『カンザスから通信です。「常時通信可能な状況にせよ」以上です』

 「アリス、頼んだよ。同士撃ちを避ける為の処置だろう」


 「了解です。接続完了。カンザスとガリナムに通話可能です」


 「ガリナムからアリスへ。ガリナムはど真ん中を突っ切るわ。アリスは西側を叩いてね!」

 「通信は了解しましたが、危険ではありませんか?」


 「ガリナムが先行するから、ちょっと様子を見てから、アリスの担当分をお願いするわ。一応スペック的には問題は無さそうなんだけど、私もちょっと心配してるのよ」

 「了解です」


 メイデンさんもちょっと自信はないみたいだな。戦闘狂を躊躇させるんだから、プレートワームの群れは凄いと言わざる得ない。

 そして、ガリナムの改装を手掛けたのがカテリナさんだと言うのも心配なんだよな。

 どんな近接兵器を持っているのか分らないけど、ちょっと俺も心配になってきたぞ。


 『カンザスの攻撃が始まりました。群れとの距離200mを保って東側面を攻撃しています』


 始まったか……。


 「ガリナムからアリスへ。これより突撃するわ!」

 「了解です。後ろをしばらく付いていきます。絶対無理はしないで下さい!」


 「それ程、ムチャはしないわ。私は至って慎重なのよ。……ガリナム発進!。プレートワームを蹂躙せよ!!」


 本人は戦闘狂だという自覚は持って無いようだ。

 ちょっとガリナムのクルーが気の毒になってきたが、ガリナムは最大船速でプレートワームの群れに突っ込んで行った。

 

 12門の88mm砲が左右に展開して砲弾を放っている。

 そして、2基の反重力装置を使いガリナムの地上高さを上げて、プレートワームを踏み潰すように移動している。


 『問題無いようですね。ガリナムの近接防衛用の兵器が分りました。移動用の多脚を使っているようです』


 スクリーン一部にその光景が映し出された。

 ガリナムは左右に2列の多脚式走行装置を備えている。その外側の一部が走行用ではなく、横に張り出して動いているのだ。

 まるで、槍が動いたいるようにも見える。

 近寄って来るプレートワームはその槍に弾き飛ばされているぞ。


 ひょっとして、走行している足にも何かあるのかもしれない。

 ガリナムが通った後には硬い甲羅のようなプレートに穴を開けられたプレートワームがもがいている。


 ガリナムが数隻いれば、群れを狩れるんじゃないか?

 そんな思いを持ちながらガリナムが群れを横断するまで俺達は上空から見守り続けた。

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