表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/217

V-103 ガリナム来る

 2時間ほど経つと、1匹のドレスダンサーは完全に動きを止めた。

 巨体に群がるプレートワームが蠢く姿で、全く別の生物のようにも見える。


 もう1匹の方は2km程離れたところで、プレートワームの群れを踏み潰しているように見えるが、体のあちこちにプレートワームがしがみ付き始めた。

 このまま、時間が経てばこっちの方もかなりの痛手を負うんじゃないかな?


 「少し先が見えてきた感じね」

 「もう1匹もダメージを受けてるみたいですね」


 「問題はこの後よ。……こっちの画像を見て頂戴。更にプレートワームが上陸して来てるわ。この群れがドレスダンサーを食べ尽くした後が問題ね」


 このまま海に帰ってくれれば良いのだが、逆に東に向かうと厄介だ。バージターミナルとの距離はおよそ100km。奴等には2時間の距離だからな。


 だが、明日になればガリナムも揃うことになる。

 テンペル騎士団達と合わせて4隻だから、それなりに弾幕を張ることが出来る。


 「どちらにしても、あれを食い尽くしてからね。1日は休めると思うわ」

 

 そう言って、微笑みながら俺の腕を取る。

 もう片手でフライヤを立たせると、俺達3人はジャグジーに向かった。

 夕食までには間があるからな。 

 しばらくはフレイヤ達と付き合うのも良いだろう。


 カテリナさんは、俺に背中を向けてスクリーンに見入っている。

 フレイヤはジャグジーの縁に体を預けて寝入っているようだ。


 結構体を揺するカテリナさんを、腰から落とさないように背中から腕を回す。

 しばらくすると、体を反転させて俺に向き合った。

 

 「どう? ちゃんと効いてるでしょ」

 「癖になったら困ります。朝晩で服用してますよ」


 「なら、まだまだだいじょうぶね」


 そう言って、俺を求めてきた。

 ホントに歳を感じない。肉体年齢はバイオ工学でどうにでもなるんだろうが、心の加齢は隠せない筈だが、カテリナさんは何時でも俺より少し年上の女性をイメージさせる。

 

 フレイヤをバスローブに包んでベッドに運ぶと、カテリナさんも付いて来た。

 俺のバスローブを外すと、自分も裸になる。

               ・

               ・

               ・


 ぐっすり寝込んだ2人をそのままにして、衣服を整えるとリビングに向かう。

 ライムさん達はいないみたいだな。


 自分でコーヒーを入れると、マグカップを持ってソファーに腰を降ろす。

 タバコに火を点けて外を見ると、カンザスは停止しているようだ。

 此処でガリナムを待つのだろうか?


 今頃は全速力で移動してるんだろうな。

 生まれ変わったガリナムを早く見てみたいものだ。


 「ドロシー、現在のプレートワームの数は分るか?」

 『推定数約1300。第2軍の上陸は終了した模様です。こちらは2500と推定します』


 合計で3800? 前より多くなってるな。

 次の群れが出現しない事を祈るばかりだ。


 4隻で砲撃を加えたとすれば、40門近い一斉砲撃を浴びせられる。一度に100匹近く倒せるんじゃないか?

 シリンダー型の自動装填装置をどの騎士団も採用しているから、6撃は出来る筈だ。

 そして、一旦退却して砲身の冷却をして再度攻撃。

 上手く運べば3回はそんな攻撃が出来る。

 もちろん数が減ったり、散開すればそれだけ一斉砲撃で倒せるプレートワームは減るだろう。

 半減出来るだろうか?


 アリスとデイジーのレールガンの弾装は20発入りだ。そして予備を2個所持している。2機で120発になるな。

 デイジーに更に予備弾装を持たせるか。

 アリスは亜空間に詰め込んでいけるだろう。

 

 ムサシにも頑張って貰わねばならない。

 そして、俺達を越えて行ったプレートワームは戦機に始末して貰うことになるだろうな。

 50mm砲を装備した戦機が20機近くいるんだから、バージターミナルに被害を与える事は無いだろう。

 リンダをバージターミナルの桟橋に置いておくのも手だな。

 40mm滑腔砲の威力は驚くばかりだ。


 円盤機での爆撃もやらないよりはいい。テンペル騎士団と合わせて6機あるんだから50kg爆弾を18発は落とせる。

 最初の爆撃では群れを散らすだけだったらしいが、群れが散開すれば俺達の攻撃が楽になる。


 「あら?1人なの」

 

 俺の隣にフレイヤがやってきた。ようやく目を覚ましたみたいだな。


 「ああ。2人とも寝ちゃったからね。カテリナさんはまだ寝てるの?」

 「ええ、ぐっすりよ。余程疲れてたんでしょうね」


 「全員が揃ったら、明日の戦いの打ち合わせだね。数は多いけど、カンザスは強力だ。それに明日にはガリナムも合流する」

 「それそれ、クリスが言ってたわ。かなり過激なお姉さんらしいわよ」


 そんな事を言って、ミニバーに歩いて行く。何か飲み物を探すんだろうな。

 確かに、あのお姉さんは戦闘狂みたいだからな。

 どんな操船をするんだか、ちょっと楽しみではある。


 フレイヤがコーヒーカップとサイホンをテーブルに置くと、俺のマグカップにコーヒーを注いでくれた。自分のカップにも残りを注いで、少しの砂糖を入れて飲み始める。

 コーヒーは甘いに限るのだが、他人の好みに文句を言うつもりは無い。たっぷりと砂糖を3杯入れて飲み始めた。

 

 「明日で終るのかしら?」

 「分らない。現在でも後から現れた群れと合わせれば2500近くになるそうだ。何とか4隻の艦砲で潰せれば良いんだけどね」


 何としても潰さねばならない。

 折角、バージターミナルが形を現してきたのだ。

 これ位の脅威は撥ね飛ばさねば、このターミナルを利用する騎士団が減ってしまうし、王国からの投資もままなら無いだろう。

 脅威が去った後で、バージターミナルの防衛をテンペル騎士団が考える筈だ。それまでは、この地を紹介した俺達が防衛に協力せねばなるまい。

               ・

               ・

               ・


 次の日の朝食後、カンザスの隣にガリナムが停船した。

 そして、テンペル騎士団から円盤機で騎士団長のユーリーさん達が、カンザスにやってきた。

 

 メイデンさんとユーリーさん達、そしてドミニク、サンドラにカテリナさんが会議室で作戦を練っている。

 俺の作戦は朝食を取りながらドミニクに話しておいたから、俺はのんびりとソファーでタバコを楽しんでいる。


 エミーとローザ達も一緒なんだが、どうも会議室が気になるようだ。

 展開したスクリーンの画像を眺めながらも、ついつい入口の扉に目を向けている。

 

 「だいぶ増えているのう。2匹目も瀕死のように見えるぞ」

 「ああ、昨晩で1匹は食われたようだ。もう1匹も噴出す体液でプレートワームが滑っているぞ」


 大食漢だな。少なくとも2千tはあったと思うんだが、今朝はその姿が半分ほどになっている。

 あのまま最後まで食い尽くしてくれると良いのだが、どうなんだろう?


 『警告。プレートワームの3つ目の群れが上陸しつつあります。推定約1500匹です。繰り返します……』

 

 急いでもう1つのスクリーンを展開する。

 浪打際から続々とプレートワームが上陸してくるのが見える。瀕死のドレスダンサーから西に数km程の地点らしい。


 「まずいな……」

 「ヴィオラも呼ぶべきじゃったか!」


 ヴィオラは速度が遅いからな……来るまでには更に3日は掛かるだろう。

 さて、騎士団長達はどんな作戦を考えるのかな?


 そんな時に俺の携帯の着信音が鳴る。

 ベルトのケースから取り出して電話に出ると、レイドラからだった。

 俺達を呼んでいるようだ。

 いよいよ作戦が決まったらしい。

 電話を切ると携帯をケースに戻しながら立ち上がった。。


 「お呼びだ。どうやら作戦が決まったらしい。ブリーフィングに入るそうだ。出掛けるよ」

 「作戦等無いように思えるがのう……」


 そんな事を言いながらもローザが立ち上がる。

 エミーは黙って俺の後に付いて来た。


 会議室の扉を開けると、大型スクリーンが展開されている。

 その前にカテリナさんが立っている所を見ると、説明してくれるらしい。


 「空いてる席に座って、早速今後の作戦を説明するわ。

 先ず、現状でのドレスダンサーに関しては脅威の対象から外して良いと思う。

 1匹目は半分食われたし、2匹目もこんな感じよ。夕方には決着が付くでしょうね……。」


 作戦決行は深夜になる。

 時間はある程度前後するとのことだ。これは、2匹目のドレスダンサーが死んでから始めるためにそうなるらしい。


 「プレートワームの総数は5千程度に増えてるわ。大きな餌があるからそうなるんでしょうね。

 ドレスダンサーに群がっているから、円盤機で爆弾攻撃を行ないます。距離があっても反復攻撃で群がっているプレートワームを叩けるわ。今夜中に5機で3回は出来るわね……」


 50kg爆弾を45発か……。確か150kg爆弾もあったから、それも落とすべきだろうな。

 画像解析をドロシーに任せればかなり正確な敵の被害が分るだろう。


 「そして、明日の早朝からはテンペル騎士団の砲撃を行なうわ。1門当り30発はあるそうだから、敵から5kmの距離で6発ずつ交互に撃っていけばかなりの効果を与えられるわ……」


 48発ずつ交互に撃っていくのか。たぶん4回で終わりなんだろうけど、合計392発になる。炸裂弾でも当れば1撃で倒せるだろうし、至近弾でも相手を傷つけることは出来る筈だ。

 そして、残りの1シリンダーの砲弾を使ってバージターミナルの守備に後方に向かうらしい。

 

 そして、次ぎはアリスの出番だ。

 地上2m程の高さで最大弾速でレールガンを放つ。

 秒速6kmの弾丸が敵を貫通して行くだろう。その上衝撃波のおまけ就きだ。

 そのまま、海辺方向から奥を攻撃し続けるのが俺の役割らしい。


 「デイジーにムサシ、それとリンダの戦機はこの前と一緒よ。プレートワームの群れの側面をなぞりながら砲撃を続けるわ。そして、ガリナムは……」


 単独行動をするようだ。

 時速60km以上で地上を走る駆逐艦だからな。

 そして、秘密兵器を積んでいると言っていた。

 近接防衛用の装備らしいが、良いチャンスだとメイデンさんが微笑んでいる。


 「ダメ元で使ってみるわ。ダメと判断したら、急いで逃げるだけの足がガリナムにはあるわよ」

 

 そんな事を言ってるけど、アリスで緊急介入するような事態が起こらなければ良いんだけどね。


 「ウエリントン王国も今回の事態を重視しているわ。第3軍の一部がやってくるわよ。でも、到着は早くて3日後になるわね。それまでには何とかしたいものだわ」

 「たまたま私達が、この地にバージターミナルを作っていたからこれだけの騎士団が集まっているけど、それが無い場合はプレートワームの群れがウエリントン王国に押し寄せたでしょうね」


 ユーリーさんがそんな事を呟いて、温くなったコーヒーを飲んでいる。

 

 テンペル騎士団がこの地にバージターミナルを作ったのが原因なんて言われたらたまったものじゃないからな。

 王国に被害が及べばそんな輩も出るに違いない。

 王国としても、このバージターミナルの利権がある以上、巨獣襲来は無視できないんだろうな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ