↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
95/95

18 雨の鴨高 エピローグ 2

「葉山先生、ちょっと見てほしいものがあるんで、来てもらえます?」

「何だ?」

「いいから早く」

 俺は引っ張られるようにして、実習室へ向かった。

「では、どうぞ」

 天見が、いつものスケッチブックを机の上に広げた。

 そこには、小町さんがいた。

「どうした?」俺は覗き込んだ。

「小町さん、何かあったんですか?」

「ええ」小町さんが言った。

「確かに、何かあったわね」

 小町さんが、すくっと立ち上がった。

「え?」

 次の瞬間。

 ぴょん。

 小町さんが跳んだ。

「えっ?」

 目の前で、小町さんの身体が紙から浮き上がった。

 そして――。

 机の上に、立った。

「……え?」

 俺は言葉を失った。そこに、小町さんがいる。

 紙の上ではない。三次元の姿で。

 大きさこそ、いつものスケッチブックの中に描かれていたものと同じくらいだが、確かにそこに立っている。

 スケッチブックを見る。紙は、真っ白だった。

「うわっ!」

 天見が腕を伸ばす。

 小町さんは、ぴょんと跳んで、その腕に飛び移った。

「小町さん……」

 天見はニコニコして見ている。

 小町さんは、天見の腕の上で得意そうに胸を張った。

「ソラは、神子(みこ)として成長したのよ」

「神子として?」

「ええ。『天のお使い』を成し遂げたのだから、当然といえば当然ね」

 小町さんは、自分の手を眺める。

「格が上がると、『使い』を実体として呼び出せるようになると聞いたことあるわ」

「そんなことが」

「かつて阿部清明が使った式神も、その類なのでしょうね」小町さんは笑った。

「我も、さすがに驚いたわ」そして、天見を見上げた。

「ソラのおかげで、こうしてちゃんと現世へ出ることができたのよ」

「ええ〜っ!」

 俺は思わず叫んだ。小町さんが楽しそうに笑っている。

 天見は、ちょっと自慢そうに小町さんを腕に乗せていた。

 そのとき。

「キー!」

 何の騒ぎかと、今日もついて来ていたパンが、俺の胸ポケットから顔を出した。

 そして、小町さんを見る。

 固まった。

「……あら」

「キーッ!」

 パンは悲鳴のような声を上げた。

「おい、パン。大丈夫か?」

 俺が声をかけても、パンは小町さんから目を離さなかった。

 窓から朝陽が差し込んでいた。

 廊下の向こうから、生徒たちの声が聞こえる。

 いつもの朝。いつもの学校。

 けれど。

 昨日までとは、少しだけ違う。

 雨上がりの鴨高には、また新しい一日が始まろうとしていた。

 俺は窓の外を見た。

 青い空が、どんどん広がっている。

 どこまでも高く。どこまでも蒼く。

 そして、その空の下で、新しい今日が始まる。

 ワクワクする今日が、また、始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ソラは神子として成長し、そのお陰で小町さんは動き回れることを楽しんでいる。  また新しい日々がやって来た。  これからも対抗戦は続いていくのだろう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。