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終わらない日常

結婚式から数ヶ月。新国家アスタリアの王宮、宰相か執務室。

僕の机の上には、相変わらず雪山のような書類が積まれていた。

「アーサー、ちょっといい? 国家予算の『現金出納帳』なんだけど、少額のズレが見つかったのよ」

特別宰相補佐官となったリリーが、分厚い帳簿を手に呆れたような顔で入ってくる。

「えっ、ズレ? どこだい?」

「ここよ。商業ギルドからの徴収分と、騎士学校の備品購入費の差額。数銅貨のレベルだけど、計算がどうしても合わなくて」

僕は頭を抱えた。現金出納帳の少額のズレというのは、原因を特定するまで帰れない呪いのようなものだ。スローライフどころか、経理処理に追われる日々である。

「私が原因を特定し、横領した者を精算してまいりましょうか?」

いつの間にか背後に立っていた女王エレノアが、極上の微笑みと共に恐ろしい提案をしてくる。

「駄目だよエレノア。数銅貨のズレで国家の武力を動かさないで。僕とリリーで地道に計算し直すから」

「アーサー様は働きすぎですわ。騎士学校の生徒たちにも、私が直々に木太刀の『形』の特訓を通して、一円のズレも許さない精神と規律を叩き込んでおきますね」

(これ以上スパルタ指導をしたら、また生徒から労働環境の改善要求が来て僕の仕事が増えるんだけど……)


「さあアーサー様、仕事の後は私が徹夜で癒やして差し上げますわ!」

「ちょっと! 宰相補佐官の私にも癒やす権利はあるわよ!」

両手には分厚い帳簿。両脇には騒がしくも愛おしいパートナーたち。

持たざる者の盾として戦い続けた僕の平穏なスローライフは、どうやら今世でも永遠に訪れることはなさそうだ。

お読みいただきありがとうございました。

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次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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