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「時空の魔女の道草」(セーラー服と雪女 第12巻)  作者: サナダムシオ


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④ 肩入れする魔女

 雪子は「照和」の研究所の地下2階に戻って来た。

 しかし、何だかあの吉川正義のことが、気になって仕方がないのである。

「ひょっとして私、遅れて来た思春期なのかしら?」

 そんな独り言さえ言ってしまうほどに。


 思春期の少女にありがちな、❝ちょっと悪そうな男に魅力を感じてしまう❞症候群?そんな病気はないけれど、その傾向はよく聞く話である。

 えっ、この私が?そんな誰にでもありふれた事になっているの?

 自分の事ながら、にわかには信じられない雪子であった。


 そしてまた、気になって吉川組のその後の歴史を調べてしまう。

 あら、コレはちょっとマズいわね。

 その中で、気になる状況を見つけてしまった。

 もう一度行くしかないわね。


 目指すは、先ほどの昭和の時間軸の1年後、山城組との紛争の場面だ。

 場所はまたしても、例のコンテナ埠頭だった。

 装置の座席に着くとスイッチを入れた。


 吉川正義は困っていた。

 色々なブツのやり取りに、この港のポイントは必要不可欠なのである。

 それを山城組が急に「ウチのシマだ。」とかぬかしてきた。


 彼としては、できるだけ先方と穏便に話し合いを進めたかった。

 しかし、血の気の多い若い衆どうしが、ドンパチを始めてしまった。

 そして、最早収拾がつかない状況になっていたのだった。


 事態はもう、どちらかの組をつぶさなければ収まりそうもない状態だった。

 吉川組長が物陰で頭を抱えていると、後ろから肩をトントンする者があった。

 彼がギョッとして振り返ると、セーラー服の魔女が笑顔で立っていた。


「ああ、アンタか。」

「お困りの御様子ね?」

「まあ、困っているのは確かだ。」

「随分騒がしいじゃない?」

「実は他所の組と抗争になっちまって…。」

「貴方さえ良ければ、私がなんとかしてあげようか?」

「すまねえ。頼めるかい?」

「いいわよ。任せて。」


 そう言うと、雪子は何のためらいも無しに、拳銃をバンバン撃ち合っている、吉川組と山城組の真ん中に歩いて行く。

 そして双方のちょうどド真ん中にたどり着くと、そこで両手を振り上げて、全ての拳銃の弾丸を空中で止めてしまった。


 紛争の真ん中で、セーラー服の少女が、異常な事をやっているのに気づいた双方の組員は、一斉に銃を撃つのをやめた。

 あたりはすっかり静かになった。

 彼女が腕を降ろすと、空中の弾丸も全て地面に落ちた。


「さて、ここにお集まりの皆さん、ちょっと聞いて下さるかしら。」

 雪子は声を張り上げた。

「吉川組が使っていたこの港を、山城組も使いたくなった。そういうことよねえ?」

 周りの者は皆、黙ったままだ。

「仲良く折半てことにはできないのかしら?お互い、イイ大人なんでしょう?」

 まだ誰からも返事は無い。


「双方の代表者、出てきなさいよ。」

 すると、その言葉を受けて、先に吉川正義が物陰から姿を晒した。

 とたんに反対側から、一発の弾丸が彼に向けて発射された。

 しかし次の瞬間、雪子がそれを空中で止め、弾の向きを逆にして、正確に発射された方に返してしまった。

「ギャアアア!」

 物陰で悲鳴が上がる。


「今みたいな卑怯者は、何度でも同じ目に合せてあげるわ。どうする、まだ誰か試してみる?」

 雪子が叫ぶと、反対側からも動きがあった。

「わかった。もう撃つな。」

 出てきたのは山城組の組長、山城孝之だった。


 少女を挟んで二人の組長が向き合う。

「アンタが噂の魔女かい?」

 先に山城組長が口を開いた。


「そうよ。そして私が吉川組のお目付け役のような者よ。どう?私の提案を受け入れて下さらないかしら?」

「仕方がねえな。」

「男に二言は無いわね?」

「無い。オレだってもともと、戦争を仕掛けるつもりは無かったんだ。」


「吉川さんはどう?それでいいかしら?」

「ああ、仲良く半分ずつってことなら。」

「じゃあ、これで話はついたわね。どうやら死人も出ていないようだし、ドンパチはもうお終いにしましょう。」

「わかった。」

 そう言うと山城組長は子分を集めて帰って行く。


「ああ、ちょっと待って。」

 雪子がそのうちの一人を呼び止める。

 そしてチカラを使って、先ほど太ももに突き刺さった弾丸を、取り出してやった。

「もう、オイタはダメよ。後でちゃんと消毒しなさい。破傷風になるわよ。」


 それから雪子は、帰る面々に向かってもう一度大声を出した。

「もしも私との約束を破ったら、皆殺しにしますからね!魔女はいつでもどこでも、あなた達を見ているからそのつもりで!」


「それじゃあ、これで失礼するわね、吉川さん。」

「ああ、いつもすまねえな。」

「未来のパートナーのためですもの。どうってことないわよ。」

「…ああ、そのことだけど。」

「また今度お話ししましょう。またね。」


 そう言うと雪子はフッと消えてしまったのだった。

 吉川正義は途方に暮れた。

「やれやれ、とんだ押しかけ女房だな。」

 彼はつい、独り言を言ってしまうのだった。


挿絵(By みてみん)

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