② 派手な手品
雪子は全体を見渡す。
…うん、10名様ね。
チカラ半分使う感じでいいかしら?と一瞬で敵を値踏みする。
雪子を取り囲んだ男たちが、ナイフを片手に次々に走り寄って来た。
彼女は、まるで楽しむかのようにそれらをギリギリで躱すと、チカラを使ってその場で垂直に舞い上がった。
男たちが思わず空を見上げる。
その瞬間、彼らの誰もがナイフを持つ手を緩めてしまった。
彼女はその隙を見逃さない。
チカラを使って全てのナイフを奪い取ると、空中でそれらの向きを変えて、それぞれの持ち主に急降下させた。
ナイフは正確に、元の持ち主たちの手の甲を貫いた。
「ギャア~!」
可愛くない悲鳴が方々で上がる。
次に彼女は、叫んでいる彼らを、チカラを使って次から次へと持ち上げて、容赦なく海に放り込んだ。
「春の海よ。寒くて即死ってこともないでしょ?」
彼女は海でバチャバチャもがいている男どもに声をかけた。
「このアマ、変な手品を使いやがって!」
ああ、一人見逃してたのね。私としたことがツメが甘いわあ。と思った彼女が、すぐに声のする方を見ると、そいつは銃を構えていた。
「いたいけな女子高生に向かって、そんな飛び道具を使うのかしら?」
「やかましい!これでも食らえ!」
拳銃から弾丸が発射される。
しかしそれは、男と雪子の真ん中辺りの空中で、ピタリと止められてしまったのだ。もちろん、彼女のチカラである。
「さて、この弾をどうしようかしらねえ?」
彼女は銃を持った男を睨みつけた。
「くそ!」
男は更に銃を連射したが、全ての弾が空中で止められてしまったのだった。
すると、それまで黙っていた、囲まれていた方の男が、初めて声をあげた。
「殺さないでやってくれ。」
何度も修羅場を潜って来たであろう彼は、彼女の殺気を感じたのだろう。
「そんなヤツらでも、元はと言えばオレの子分なんだ。」
雪子は少し考えた後、銃弾を全てその場にバラバラと落とした。
そしてチカラで拳銃男を持ち上げると、他の男たち同様に、海に放り込んだ。
「あなた、命拾いしたわね?」
雪子は海の中に声をかける。
くだんの男は、ブクブク言うばかりだった。
雪子がようやく地上に降りると、先程の男が声をかけた。
「あんた、大したものだな。名前は?」
「まず自分から名乗るのが、人としての礼儀では?」
「ああ、これは済まない。オレは吉川正義。吉川組の若頭をやらせてもらっている。」
「私は⋯魔女よ。」
「ああ、確かに凄い手品だったよ。本名は名乗ってくれねえのかい?」
「そうね。後々役に立ちそうだし、あなたには名乗っておこうかしら。」
「何てえんだい?」
「真田雪子よ。真田十勇士の真田に、空から降る雪に子どもの子。」
「雪子さんかい。覚えておくぜ。」
「若頭さん、コレは貸しイチよ。」
「ああ、良く覚えておくぜ。」
「今後、この私が困ることがあるとは思えないけど、困った時はよろしくね?」
「心得た。必ず恩は返す。」
「じゃあ、またね。せいぜい背中に気をつけて。」
「分かったよ。あんたも達者でな。」
そこでちょうど時間となった雪子は、その場で煙のように消え去った。
残された若頭は、目を白黒させるばかりであった。
このエピソードが直接、「その後の酒井弓子」につながります(>ω<)




