131 ルカとレオンの再戦
翌朝、いつも通りみんなで朝食をとる。
「今日はルカの番ね」
「ああ。嫌だなぁ、疲れるんだよな」
「レオンとやると疲れるよなー」
「でも、ルカさん楽しそうです」
「ええ? そうか?」
「はいです。顔が楽しみだって言ってるです」
そう言ってエルナが笑う。
俺は自分の顔を触って苦笑する。
「まぁ疲れるってのは本当だし、嫌なんだが……楽しみってのは否定できないな」
「強いやつとやれんのは楽しいからな」
「そうだな」
そうして約束の時間までまったりしたあと、南門へと向かった。
南門で少し待っていると、レオンたちがやってきた。
「よー」
「おはよう、みんな」
「おはようございます」
「んじゃ、早速行こうぜ」
「はいはい」
レオンが急かすので俺たちはそのまま南門を出て歩き始めた。
「そろそろいいか。この辺で森に入りましょう」
「そうだね」
「おう」
「了解だ」
マップに映る人は周囲にいないのでそこから森へと入った。
そのまましばらく進む。
「それじゃ、魔法かけますね。一応お互いが見えるようにしてありますので、単独で飛んでも問題はありませんよ」
そうして全員に飛行魔法と光学迷彩をかける。
ニクラスさんは高所が苦手なので、マリウスさんに手を引いてもらうようだ。
レオンはさっさと飛びあがり空を飛ぶのを楽しんでいる。
全員で昨日の開けた場所へと向かう。
「んじゃやろーぜー」
「待て待て。闘技場とは違うんだぞ。準備がいるだろ」
「んあ?」
「俺は魔法使うんだぞ、危ないだろうが……」
「あーそういやそうか。でもどうすんだよ?」
「シールドを張っておくさ。ただ一回しか防げないから、数枚張っておくので、みなさんはここから前には出ないで下さいね」
「おう。まぁいざとなったら俺がなんとかしてやるよ」
「ああ、ミハエル頼む」
「私たちも自分でなんとかするから大丈夫、ルカ君は気にしないで」
「はい、お願いします」
「んじゃ、いくぞレオン。それなりに離れないとな」
「おう」
俺とレオンはみんながいる場所からそれなりに離れた。
ヴァールシールドを数枚張ってあるので大丈夫だとは思うが。
実際戦闘が始まったら気にする余裕はなくなる。
どちらにしろ彼らとミハエルを信じて、俺は全力でいくしかない。
「レオン、お互い十歩離れるぞ」
「ああ」
レオンは楽しみで仕方ないという顔で笑っている。
俺はどうだろうか。
多分笑っているのだろうな。
十歩離れ振り返る。
レオンも同じように振り返りこちらを見た。
「合図はこの石が落ちたらでいいか?」
俺の声にレオンが頷く。
「ああ、それでいいぜ」
俺は手に持っていた石を上に投げ、剣を構えた。
石がゆっくりと落ちてくる。
石が地面に落ちた瞬間、俺はレオンにイラプションを撃ち、アイスジャベリンを撃ちだす。
もうすでに俺の魔法はレオンに知られているので、手数を増やしていくしかない。
しかしレオンはすでにイラプションを避けている。
俺はレオンから逃げるように走り、次々と魔法を撃ち込んでいく。
インフェルノ、イラプションと撃ち込んでも、レオンは左右に避けてこちらへ迫る。
あいつの野生の勘はどうなってるんだ。
近づいてきたレオンにオーラバーンを繰り出す。
レオンは武器を盾にして後方に跳躍した。
レオンが地面に足を付ける前にその場にアイスゾイレを展開する。
アイスゾイレが発動したが、レオンの動きに俺は驚愕する。
「まじかよ……」
レオンは大剣を足場にしてアイスゾイレの攻撃を避けていた。
「くっそ驚いた!」
レオンは足場にした大剣を握りなおしている。
「お前ふざけんな! なんだそれ!」
思わず俺は叫びながらイラプションを連発する。
レオンはイラプションを避けながら叫び返してくる。
「仕方ねーだろ! 避けれねぇと思ったんだよ!」
本当にふざけたやつだ。
大剣を足場にして氷の剣山を避けるなんて。
イラプションも避けられるし、どうする。
アイスバレットを大量に撃ちだし、その中に氷結槍を混ぜる。
こちらへ迫っていたレオンはその弾幕にその場で横に跳躍して躱す。
その間に俺は走って距離をとり、サンダーレインを撃ち込む。
レオンの上空から複数の雷が撃ち落される。
レオンは大剣で防ぎつつも器用に避ける。
これもダメか。
再び今度はサンダーバレットを大量に撃ちだし距離を稼ぐ。
しかしサンダーバレットを大剣で弾きながらレオンは迫ってくる。
すぐに解除されるだろうけど、一瞬でいい、足を止められれば。
俺はレオンにルーツをかけ、すぐにイラプションを撃ち込んだ。
レオンの動きが一瞬止まり、すぐにレオンは腕をクロスさせた。
その直後レオンのいた場所に爆発が起こる。
その爆風にレオンが吹き飛ばされ、地面を転がる。
俺はそこに連続してイラプションやインフェルノを撃ち込むが、すでにレオンはその場を走っている。
イラプションやバレット、ジャベリンを撃ち込んでも、今度は器用に避け、剣で弾く。
仕方なく再びルーツをかけたが、レオンは強引に回転することでルーツを解除した。
ルーツの強化版を考えないといけないなと余計な思考に逸れたところでレオンが急接近してくる。
レオンはすでにボロボロで血が出ているが、その顔は楽しいという言葉がピッタリの笑顔だ。
剣を上段から勢いよく振り下ろしてきたのをヴァールシールドで防ぐ。
ガンッと硬質な音がしたあと、パリンと割れる音がするが、それで十分だ。
オーラバーンを撃ち、距離をとろうとしたが、レオンは素早く地面を這うようにしゃがみ、オーラーバーンの爆発を避け、俺に迫った。
咄嗟に剣で防いだが、レオンの大剣の威力に吹き飛ばされる。
ゴロゴロと転がり、立ち上がろうとしたところで、レオンがすぐそばにいるのに気づき、剣を持っていない方の手を上げた。
それを確認したレオンはミハエルのときと同じように大剣を放り出して地面に転がった。
俺もそのまま浮かしていた腰を落とし座り込む。
「よっしゃ、勝ったぞー」
レオンの声に俺は苦笑した。
「お前ほんと、人間かよ……」
「人間に決まってんだろー」
レオンは強いな。予想以上の動きをしてくる。
……悔しいな。
「あー疲れた」
俺もレオンのように地面に転がり目を瞑る。
悔しいなぁ……。
「次は負けないからな」
そんな俺の呟きにレオンが笑う。
「はっ また負かしてやるよ」
俺は転がったまま、レオンにハイヒールをかけ、自身にかけていた魔法をいくつか解く。
しばらくしてみんながやってきた。
「お疲れ、ルカ」
「ああ、俺も負けたわ」
「そうだな」
昨日のミハエルとの会話を立場を入れ替えて同じことを喋る。
それに気づき、俺は少しだけ苦笑する。
「負けるのは悔しいな、ミハエル」
「ああ。悔しいぜ。でも目標がいるっつのもありがてぇんだけどな」
最後のミハエルの言葉はレオンに聞こえないように小声だった。
俺はそれに頷く。
「そうだな」
少しして体を起こし、周囲を見渡す。
地面は抉れて弾け飛び、あちこちから煙が立っている。
ところどころ凍り付いていたりと中々な惨状だ。
「これはちょっとやりすぎたか?」
そんな俺のつぶやきにフィーネから声がかかった。
「そうね。随分と派手に暴れたわね。でも、今エルナが少しずつならしてるから大丈夫よ」
フィーネの声にそちらを見る。
「そうか、すまないな。俺もあとでやるよ」
「ええ、そうね。範囲が広いからお願いするわ」
そうしてフィーネが俺の側にしゃがみ、飲み物を手渡してくれた。
「ああ、ありがとう」
「いいえ。あなたとレオンの戦い、とても心が震えたわ。あんな風に強くなりたいって思えたの。難しいだろうけど、頑張りたいわ」
「……フィーネならなれるさ。君は強いよ」
「そうありたいわね。だから、努力は怠らないわ」
そう言って笑うフィーネに俺も笑みを向ける。
俺とレオンが休憩している間、ミハエル対マリウスさんとニクラスさんが試合をしたり、イザークさんとフィーネが試合をしたりと色々とあった。
エアハルトさんは俺やエルナと魔法談義をしたりしていた。
エルナも最近サンダー系がやっと撃てるようになってきたので、エアハルトさんに強くサンダーを勧めていた。
麻痺にかけられるというのはやはり大きいとは思う。
エルナ自身の雷についての考えを話し、エアハルトさんもそれを真剣に聞いていた。
俺は前世の知識で雷というものを知っているからこその説明になってしまうが、それよりもこの世界で、自身で解釈したエルナの説明の方がエアハルトさんも理解しやすい可能性はある。
もちろん、俺の説明の方が理解できるという場合もあるので、エアハルトさんはエルナの解釈も、俺の説明も聞いて、自身の中で噛み砕いて理解しようとしていた。
時間はかかっても、エアハルトさんならきっと理解し操れるとは思う。
ジャベリンは回数制限はあるが、サンダーならそこまで魔力消費は多くない。
サンダーになれればサンダーバレットやサンダージャベリンだって可能になる。
きっとまたエアハルトさんは強くなる。
サンダーの練習をしていたエアハルトさんに声をかける。
「エアハルトさん、そういえば『シュラハト』は今、オリハルコン集めをしていたんでしたっけ?」
「ん? ああ、うん。そうだね。全員分というのは難しいけど、レオンの分をまず集めていてね。あと少しだから、それが集まったら、ノームの鉱山街にいく予定なんだ」
「そうなんですか」
「うん、今回で私たちはまた一つ強くなれたからね、早いうちにノームの鉱山街にいけると思うよ」
そう言ってエアハルトさんは笑みを浮かべた。
「そうなったら、Sランクも近いですね」
「はは。そうだね。レオンの武器が完成したら一度挑みに行くかもしれないな」
「エアハルトさん、何もないと思いますが、一応こちらを受け取っておいてください」
俺はアイテムボックスから数個の魔石を取り出した。
「これは?」
「こちらがハイヒールの魔石、これがグレーターヒール、これが……リザレクションの魔石です」
「えっと、ハイヒールは骨折や裂傷の治癒で、グレーターヒールが部位欠損の治癒、だよね?」
「はい」
「リザレクションというのは?」
「……復活魔法です」
「復活……? まさか、それは」
「はい。五分以内であれば蘇らせることが可能です」
俺の言葉にエアハルトさんがゴクリと喉を鳴らした。
「それは……本当に……」
「可能です。人に試したことはまだありませんが、動物などでは可能でした」
「そう……。うん、わかった。ありがとう。これは私が責任もって預かるよ」
「お願いします。必要であれば、ためらいなく使ってください」
「うん、ありがとう、ルカ君」
以前ハイヒールを魔石に付与したが、あのあとも付与の実験はしていた。
一番付与したかったのがリザレクションだったので、大きな魔石が出たときに試したのだ。
大きな魔石の中でも一番最大サイズと思われる魔石であればなんとか一回だけ付与ができた。
メンバーと相談し、最大サイズの大きな魔石は取り置きし、リザレクションの付与をしてきたのだ。
今回その大きな魔石をいくつか『シュラハト』に譲渡したいと相談したところ、全員が了承してくれたので、こうしてエアハルトさんに託したのだ。
最大サイズの大きな魔石は中々手に入らないので、三個しか渡せなかったが、エアハルトさんも今後このサイズの大きな魔石が手に入ったら俺に譲渡してくれると言ってくれた。
彼らにもダメージ軽減魔法をかけさせてもらいたかったのだが、丁寧に断られたのだ。
甘えてしまうから、と。
それならば、と今回はリザレクションの魔石を渡したのだ。
受け取ってくれるか少し不安ではあったが、無事受け取ってもらえたので安心だ。
しばらくして、多少体力の戻った俺もエルナと一緒に地面をならす。
デコボコとあちこちがクレーターになっていた地面はある程度綺麗にならすことができた。
「さて、それじゃ戻りますか」
「そうだね。レオン、マリウスたちも、ほら、帰るよ」
「あ? おう、わかった」
「ああ……」
マリウスさんたち相手に試合をしていたレオンが武器を納める。
マリウスさんたちは大きく肩で息をついていた。
「大丈夫ですか?」
俺がそう声をかけると、マリウスさんたちは苦笑しつつ手を上げる。
「ああ、気にしないでくれ。大丈夫だから」
「よっし、んじゃ帰るかー」
そう笑いながらレオンがマリウスさんとニクラスさんの肩を叩く。
イザークさんも弓を背負いなおし、大きく息をついている。
全員に魔法をかけ、俺たちはシュルプの街へと帰った。
帰り際にレオンが、またやろーぜと言ったので、当分やらないと強くいっておいた。
レオンがしょんぼりとしていたが頻繁にこんなことをしていたら体がもたない。
というか、防具が持たない。
次にやるのは当分先だ。
そのときは必ず勝つ。
そんな決心をしつつ、その日は終わりを迎えた。
お読みいただきありがとうございます。
評価ブクマをして頂けますと喜びます。
ブクマが遂に1000人の大台に!?
嬉しくて腰が抜けます。
評価も90名もの方が!
本当にありがとうございます。
いつもいつも読んで下さり本当にありがとうございます。
皆さまの応援が明日の活力となります。
今後も楽しんで頂けるように頑張りますのでよろしくお願いします!




