表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

建国祭

 願ってもいないことだった。

 確かに、建国祭の間、ジューベルは広場に集まった国民に、祝福の言葉を授ける。エルガーはいつも、王城の隅っこで、それを聞いていた。

 エルガーは、必要とされていない人間だからだ。

「どうせ俺が抜けたところで、誰も気づきやしないだろう」

「本当に行くのですか、エルガー様?」

 建国祭の当日である。街に降りようとしているエルガーに、ミーケが不安そうな顔をしていた。

「お一人で行かれるのは危険です」

「ルーカスもいるよ。現地で集合する予定だ。あいつ、アルシア様の護衛に選ばれたらしい」

 なんだかんだで、実力はあるのだなと、エルガーは感心していた。それでも、ミーケは不安そうに、胸の前でぎゅっと両手を握っていた。

 ひとつ背の高いメイドの少女の頭を、エルガーはゆっくりと撫でた。

「いつもすまないな、ミーケ」 


 変装用の服を着て、エルガーは、いつもより賑わう王都を見物した。露店の食べ物を買いたかったが、あいにく、細かい金は持っていないので我慢した。

 エルガーは、王城よりも、王都の方が好きだった。ミーケやルーカスはいないし、道具屋といった怪しい連中がうようよしているが、空気はずっと軽やかで、自由だった。

 なにせ、王城にいると、エルガーは暗殺の対象になってしまうからだ。王国の成り立ちが成り立ちであり、そして、兄の所業が所業なので、自分や、兄を狙う刺客は後を断たない。近頃は、エルガーの方が殺しやすいと見てか、エルガーの方にばかり刺客が来る。

 それでも、あの兄を敵に回すことは、エルガーにはできなかった。


 一通り街を散策して、エルガーはふらりと、路地裏に入る。

 道具屋や、あの惚れ薬を扱っている店へ続く道のようでいて、まだ、明るい道である。

 エルガーは、酒場と思しき店の扉を開けた。日が高い時間だ。そこには喧騒などなく、ただ一人の少女が、ちょこんと椅子に座っていた。

「やあ、お会いできて光栄だよ」

「ええ、私も。お会いしたかったです」

 水色の髪に青い瞳。寒色の、妖精の様な彼女は、エルガーの婚約者のアルシア・ロドイスである。

 エルガーと仕方なく婚約している彼女は、エルガーに近寄り、じっくりと、エルガーのことを見つめた。

「ルーカスから聞きました。私の名を騙って、惚れ薬を購入した不届きものがいると」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ