8-33 大規模な魔穴(まけつ)
――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、3体、2分後に遭遇します』
――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、2体、2分後に遭遇します』
もうどれくらい闘っただろうか。
あれから、俺の探索魔法の通知が鳴り止まない。
――ピコン!
――ピコン!
まただ。
後衛の俺ですら疲れているし、ポチやくま、亮もサーガさんも限界だ。
「創太! そろそろ……ヤバいぜこれは」
「ハァッハァッ!」
猪のように猛突進しながら、自慢の一角で俺たちを築き上げようとしてくる一角牛。
幸いにも、雷にも炎にも弱いからいいものの、対巨体でこちらのHPが尽きそうになる。
「――癒しの大樹!」
一旦回復してから、俺は駆け出しみんなに告げる。
「俺は、先に行く。魔穴を塞がなきゃキリがない!」
「待て! 後衛のお前だけ行ってどうするんだよ! ここには蔦にできそうな木々もないんだぞ!」
「でもこのままじゃあ……!」
「ソウタ様、リョウ様、行ってください。私は貴方たちの盾だ。ここでなんとか、1人でくい止めてみせましょう。さあ、行くのです!」
――そんなことはさせられない。
大体、ルフォニアの綿花をこんなにも踏みやがって……!
「許せない……!」
「創太? ――! サーガさん、創太から離れてください! 創太がブチ切れた!」
「許さない! 俺を怒らせたお前らが悪いんだからな……!」
俺は半分くらいのMPを木のロッドに集中させる。
「――土地神の弾丸! 雷属性バージョン!」
木のロッドの周辺に浮かび上がるのは、無数の石礫。しかも、全てに雷属性を持たせた特殊な仕様だ。
「風穴開けてやる。 ――行けッ!」
――ドドドドドドド……!
弾丸は一角牛に風穴を開けていく。
俺はそのまま走りながら頂上を目指した。
「俺を怒らせたお前たちが悪い! 俺のルフォニアの綿花を……よくも……!」
すれ違いざまに、どんどんと一角牛が倒れていくが、もう知らん。
――ピコン!
――ピコン!
――ピコン!
『レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。』
――レベル? こっちはそれどころじゃない。
「ソウタ様!」
「創太……マジでブチ切れてんな。大人しい奴が怒るほど怖いものはネェな」
なんとか頂上に着き、魔穴を見つけた。これはなんとも、大規模な魔なだった。今までと同じく、混沌としていて底が見えない。
「今からここで魔穴を塞ぐ。2人は奴らが出てくる前に倒してください」
俺は魔穴に木のロッドをあてる。今まさに出てこようとした一角牛は、ロッドの先端で無慈悲に突いた。
――イメージだ。もう二度と開かないように、ジッパーを上げた後、強力接着剤で固めるイメージ。
――許さない。
――許さない。
――許さない……!
魔穴は俺のMPを代償に、いつもより早く、ギューンと渦を巻きながら閉じていった。渦巻いたほうが、二度と開かないだろうという、俺の怒りの表れだ。
「す、すごいです……。さすがソウタ様だ」
「依頼はこれで終わりですよね?」
「そうです。ありがとうございました」
……それにしては……。
アンスリウム山の内部から、何かを感じる。軽く見渡すところ、降りれそうな穴もないような気がするんだが……。草を掻き分ければわかるかもしれない。けれど、今はそれどころじゃない。
「ドロップアイテムを拾いながら、帰城しましょう」
「かしこまりました」
「ったく、焼肉パーティーでも開催できそうな量だな」
――そう。本当に追加調査をしている場合ではないのだ。漸く、漸く、アースフェイス国最古の秘宝――【生命の歯車】が手に入るんだから……!
◇
不老不死の俺たちと違って、疲れが滲み出ていたサーガさんを気遣って、瞑想の湖で一泊してから再び帰城を目指した。
もちろん夜は、一角牛のステーキパーティーだった。ピギーウルフよりも味が濃厚で、脂が甘くて美味しかった。
◇
「サーガ様、使徒様、帰城!」
「お疲れ様です!」
敷地へ入り、白と黄の花が絡められた丸いアーチを抜けると、再び門番が2人。門番は恭しく戸を開いた。
真っ赤な絨毯を歩いた先に、国王と王妃が居して待っていた。
「サーガ、只今帰城致しました」
「スズツリー=ソウタ、帰城致しました」
「カガ=リョウ、帰城致しました」
サーガさん同様、膝をつく俺たち。
「無事の帰城、何よりです。もっと時間がかかるかと思いましたが、予想よりずっと早かったですね」
「――はっ! 全ては使徒様方のおかげです。無事に任務も終えてきました」
「本当にモンスターが穴から湧き出ていたのか?」
「――はっ! 一角牛が次々と湧き出る穴でしたが、使徒様が身をもって塞いでくださいました。以後、一角牛は出てきておりません」
「顔をお上げください。使徒様」
顔を上げると、国王は破顔の表情だった。
一角牛というピギーウルフ相当のモンスターの穴が塞がったのだ。俺的にはアンスリウム山の内部は正直気になるが、上々の結果だろう。
「では、約束どおりアースフェイス国最古の秘宝と、貴方がたに爵位を授けましょう。そして、領地も」
亮は俺の顔を見た。
亮がどのような選択をしても、それはそれだ。
「私、スズツリー=ソウタはせっかくですが爵位を辞退いたします。領地も要りません。欲しいのは、【生命の歯車】だけです」
――そう。俺には何も要らない。あるひさえいれば、何も。
「――国王様! 大変です!」
「お主、今謁見中であることがわからぬか! 使徒様がお見えになっているのだぞ! 厳罰に処されたいか!」
「お叱りは覚悟の上です。ですが、ですが――お持ちするよう仰せつかった【生命の歯車】がないのです!」
「えっ……」
俺も亮も、言葉を失った。
――フレイヤ、どういうことだ? 答えてくれ!




