表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

謝罪

「お待たせ致しました。私、占いを商んでおります。ナナシと申します」

ザ! 占い師風の装い(当社比)にて、部屋に乗り込んで、自己紹介をする。微笑みながら、ブツ入り茶を飲み干している事の確認も忘れない。


「ほほぅ。お主実は巫女の様なものだったのか……なるほど。それにその大きな玉はもしや——」

キムラは目を輝かせ、思った以上に大玉真珠に食いついた。

ゆっくり笑みを浮かべて、嘘八百を語る。

「私は先祖代々伝わるこちらの珠をつかって、この珠にゆかりのあるものを探し出すことが出来るのです。先程の薄黄色の涙も、ここにある薄青の涙もどちらもこの珠にて当方が探し当てたもの」


「それは真か!」

「ええ。もちろんですとも。もし宜しければ、お近付きの印に一つ占って見せましょう」

「それは! 是非ともお願いしたい」

「もちろんですとも。さて占うにはお客様の住所が必要です。教えていただけますか?」


キムラは、(こころよ)く神殿の場所を教えてくれた。本来なら半年以上旅をしなければならない島国であること、長いこと祀っていた人魚がいなくなり探していること。一番近い街に転移者が控えている事もついでに聞き出した。


私は巨大真珠の上に両手をかざし目を閉じる。もちろん何も見えない。

しかし、はっきり何かが見えたようにカッと目を見開き慌てたように叫ぶ!


「むむっ! あなた腹下しの相がくっきり出ています!」


探しものと関係ないって? 大丈夫。相手は薬物によって深く考えられなくなっているのだ! ちろっと舐めた私がそうだったのだから実証済みである。


「腹下し……そう言われてみれば、ちと腹が痛む様な……」

キムラに続き、同行者が皆ざわめき出した。

そうです。なんせあのお茶、昨日クヴァレと一緒に運んだやつ。ずっと常温放置だからね。普通に腐ってるよ! 2杯目ブツ入りは煮出して3日放置してるので余計酷いよ!

もちろんマリリンさんには朝作った水出しミントティー出してるから、だいじょーっぶ!

ディビノラムさんのおしぼり効果で腐ってるの気付かなくする作戦大成功。


「やはり……。この霊験あらたかな珠にかかれば、なんでもお見通しなのです……」

厳かにわけ知り顔で頷きながら話す。

「なんと! 素晴らしい!!」

キムラは称賛しつつも腹を押さえトイレに行きたそうである。しかし、行かせてなるものか!

余計気になる話題を提供して席を離れられなくするゼ!


「ああ! 見えます! 見えます!! その腹下しは——人魚の呪いであると!」

「な、なにーぃ!!?」

驚くキムラをおいて、大玉真珠を真剣に見つめるフリをする。

「……貴方、人魚を苛めたことがあるのではないですか……?」

「な、なぜそれを……」

簡単なことだ。クヴァレを探しに来るのなら、1人くらい顔を知った者を寄越すだろうし、昨日の遠見でクヴァレが見れなかったのはキムラだけ。偉そうな態度から掃除とか真珠回収とかするわけないし、それ以外でぶよぶよクヴァレに近付くなんてクヴァレの話から推察するに毒を入れる時ぐらいだろう。


「これから、どんどん、どんどん痛みは増すでしょう……それを少しでも和らげるには、人魚への謝罪と贖罪が必要です!」

謝れ! クヴァレに謝罪を所望す!


「しかし、ワシはマダラ様の為に——」

ぐぎゅるぐぎゅるるるーーー


良いタイミングで、キムラらのお腹が悲鳴をあげた。

「どうして俺らも呪われるんだ! キムラ様と違って俺らは関係ねぇぞ!」

同じく腹痛が増してきたその他3人も騒ぎ出す。

「貴方達は連帯責任です! さぁ! 謝るのです! 人魚へ土下座をして謝るのです! 腹痛が治るまで、人魚の呪いが解けるまで、しっかり頭を下げるのです!!!」


ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅーーるるうぅーー


椅子に座ることも出来ず、息も絶え絶えに4人組は床で蹲る。


「さぁ!早く! 全てをぶち撒けてしまう前に! 急いで土下座で外に聞こえる様な大声で謝罪を! 貴方達が楽になるにはもうこれしか方法はありません!」







部屋の中から声が聞こえる。外にいる僕にも聞こえる大きな謝罪の声だ。

遠見で見ていたので大体の経緯はわかっていた。

ずっとずっと聞こえる謝罪の言葉。床に伏して心から切実に言っている事がわかる切羽詰まった声。

僕は謝罪が欲しかった訳じゃない。諦める前は解放されることだけを望んでいた。ナナシさんに救われた今は神殿に対し恐怖が残るだけ。ナナシさんはその恐怖すら、神官たちの情けない姿をこうやって見せることで取り除いてくれている。僕が怖がっていた事を気にしてくれてたんだ。

なんて、僕は幸せなんだろう。ナナシさんのその気持ちが僕と同じじゃなくても、こんなに心を砕いてくれる。ポロポロと珠が地面に落ちる音がする。遠見を続け目をつむったままの僕でもわかる。その色は喜びの黄色。


「……ナナシさん……僕は——」


益々貴方から離れられない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載再開までコチラの短編コメディはいかがですか?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ