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放課後の魔少女――十年の孤独  作者: 結城コウ
第三幕「BAR ブリキの太鼓」
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序奏 一条伽那

 ——許せない。

 琉斗(りゅうと)の話を聞いた一条伽那(かな)は、一言そう呟いた。

 自分がこんなに怒ることができるなんて、どこか意外だった。

「一条先輩……?」

 さっきまで苦渋に満ちていた琉斗の顔に、戸惑いが浮かぶ。わずかな怯えもその中には含まれていた。

 自分はよほど怖い顔をしているのだろう。

 だけど伽那は、胸の内に雷雲の如くわだかまる怒りと憎悪を、制御することができなかった。

「……琉斗くん、止めないでね。……わたし、やる」

 伽那は一年ぶりに〈モナドの窓〉を開いた。彼の前でこれを披露するのは初めてだった。

(よくも詩都香(しずか)を……!)

 危うくもう一段階変わりそうになり、伽那はかろうじて心理的なブレーキをかけた。相手は普通の人間だ。そこまでの魔力は要らない。

 靴なんて履いていられなかった。錠を上げるのももどかしく、部屋の窓を全開にする。

「待って! カナ(ねえ)っ!」

 窓枠をくぐろうとする伽那の背に、琉斗が取りすがろうとする。

 伽那は止まらなかった。琉斗の手を振り払い、虚空に身を躍らせ、念動力を使って飛翔した。

 雨模様の空の下は、まだ日没前なのに薄暗かった。

 強い風が行く手を阻もうとする。

 雨粒が容赦なく全身を叩く。

 防御障壁を張ればそんなものは無視できるのだが、伽那はそうしなかった。そんなこと考えつきもしなかった。

 目指す場所までは直線距離で七十キロメートル。三十分もあれば着く。

 ……どうしてやろうか。実のところあの男に対しては、詩都香と同じく伽那にも負い目がある。だが、同情などこれっぽっちも感じなかった。

 二度と詩都香に手出しなんてさせない。いや、それだけじゃ済まされない。

 残忍な空想がいくつも頭をよぎり、伽那はくくっ、と忍び笑いを漏らした。

(……やっぱりわたしは人間じゃないんだ。詩都香や魅咲(みさき)に守ってもらう資格なんてなかったんだ)

 伽那は莫大な魔力を精神感応(テレパシー)波に変えて前方に放った。

 アクティブソナーのようなそれを名指しで受けて、一つの魂が悲鳴を返してよこした。

 これで位置は特定された。

 早くも多摩川を越えた。

 ——あと二十分。

こうして見ると第一幕がアンバランスに長くなってしまいましたが、人物紹介も兼ねて、ということで。

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