高原詩都香の日記①
ようやく退院。
三鷹くんが死んじゃった。
入院中にはたくさんの人からお見舞いを受けた。気を利かせたのか誰も言わなかったけど、わたしだってうすうすとはわかっていた。うぬぼれているわけじゃないけど、三鷹くんがわたしのお見舞いに来ないのはおかしいから。
入院の退屈に飽かせて読んだ新聞で、瓜生山で不発弾が爆発したという記事を読んだ。
なるほど、魅咲と伽那以外の見舞客たちが「今回は災難だったね」と言っていたのは、そういうことだったのか。
爆弾の破片なんて一切採取されなかっただろうに、変な話だ。まあ、〈リーガ〉の仕業だろう。
記事にはこうもあった。
——男子高校生一名が行方不明、と。
退院したその足で、電車で三鷹くんの実家を訪ねた。どう説明していいのかわからなかった。その場で魔法を見せた方がよかったのだろうか。
|琉斗にわざわざ届けてもらった制服姿で出向いたのは、病院服を着て行って相手の同情を買おうとするみたいになるのを嫌ったからじゃない。この制服に腕を通すのも、これが最後だって思ったから。
三鷹くんの両親は、瓜生山で爆発があったことも、不発弾の暴発という見解が発表されたことも、もちろんニュースで知っていた。
それは事実ではないが、わたしがそれを覆すことはできない。そんなことをしたら、かえって話を信じてもらえなくなる気がした。
だからといってわたしが責任を逃れることだって許されない。
不発弾を見つけたので見に行こう、とわたしが誘ったことにした。それで、いきなり起こった爆発に巻き込まれて、わたしをかばう形になったということにした。
最初は半信半疑だったみたいだけど、わたしが細かな状況を創作して話し、三鷹くんの遺品になった焼け焦げたブレザーを渡すと、顔色が変わった。
謝って許してもらおうとは思わなかった。それでも土下座した。それ以外どうしようもなかった。
殴られた。
泣かれた。
訴えるとも言われた。
わたしには甘受する他なかった。
本当のところ、そのまま息の根を止めてほしかった。そうやって責任逃れがしたかった。
でも、怒って泣いてわたしを殴ってるうちに、そのエネルギーも失われてしまったみたい。
わたしが声も出せなくなる頃になって、帰っていいと言われた。謝罪の気持ちはわかったから、二度と顔を見せるな、と。
これを書き終えたら、今度はお父さんに事情を話そう。魔法のことも言わなきゃ。
未成年のわたしでは、結局全責任を負うことなんてできやしない。不本意だけど、お父さんにも謝罪に行ってもらうしかないんだ。
もう無理だ。もう背負いきれない。
わたしには、戦うための覚悟なんてこれっぽっちもなかったのだ。
――決断しなければ。
もちろん、奴らにも償いはしてもらう。
わたしの本当の戦いは、今から始まる。
追記。
さっき三鷹くんのお兄さんから連絡があった。
「弟のことで話がしたい」って。




