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遺跡の中は所々崩れている場所もあるが、今のところ一本道の通路が続いていた。
因みにトラップスイッチなんかも所々に隠されていたが、並外れたビンディ映画に関する知識を持つ橘のカンが冴えに冴えてすべて発見し、今のところトラブルらしいトラブルは起こっていない。
まるで本当のビンディが乗り移ったかのような橘を見て村田と宮田はかなり驚いていた。
確かに橘はビンビンジョーンズの話をするときは異常に輝いているが、今回はそれを上回る輝き方だ。
「宮田に村田、ちょっと待ってくれ。ここの凹みが怪しい。絶対隠し扉がある。ビンビンするんだ。」
宮田と村田はもう若干引いていた。もう何か憑かれているんじゃないかと思うほどに橘はビンディになりきっている。
橘は壁をペタペタと触って一番下のブロックを2つ外した。
「宮田、これは多分持ち上げるタイプのやつだ。頼む。」
橘に言われて宮田は待ってましたと言わんばかりに腕まくりをする。
宮田は骸骨のように痩せているが、軽自動車位を一人で持ち上げることができる程の怪力を持っているのだ。
宮田が二つの凹みに手を掛けて思い切り持ち上げる。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
すると壁は鈍い音を立てながら上へと持ち上がり、人ひとりが通れる高さ位までいった所で固定された。
中は薄暗い通路が続いている。
幅も高さも一人ギリギリ通れる程度しかない。
今回は代表して橘が行くことになった。これは罠を感知できるのが橘しかいないからだ。
隠し通路にはこれといった罠はなく、最奥に金色に輝くブリーフが置かれていた。
多分この遺跡には他にも隠し通路があって、その奥には過去にビンディーが手に入れた秘宝が隠されているのだろう。
これは隠し通路を発見しつつ、素早くクリアしないと3位以内の入賞は難しいかもしれない。
橘は改めてこの大会の難易度の高さを確認させられた気分になった。
黄金のブリーフを握り締め宮田と村田がいる場所まで戻る。
黄金のブリーフのシルクの肌触りを感じながら橘は顔を引き締めた。
・・・
「奥にあった黄金のブリーフは装備アイテムでもあるみたいだね。」
橘は黄金のブリーフを宮田と村田に見せながらそう言った。
アイテム説明欄に素早さ+40と書いてある。どれ位素早くなるのか分からないが、普通のゲームの感覚だと+40は破格な気がする。しかし無視できないマイナス面もこの装備にはあった。
「えっと、下半身装備が黄金のブリーフだけの場合のみ素早さ+40って書いてある。」
「それは装備したくないね。」
村田が鬼気迫る表情で装備を拒否する姿勢を見せる。まだ2人は何も言ってないのにだ。
しかし装備するならこの中で反射神経、足の速さが飛び抜けている村田しかいないだろう。
それを理解しているから村田は即座に「装備したくない」と予防線を貼った。
「まぁ、これはどうしようもない時に装備すればいいだろ。常時下半身ブリーフのデブと一緒はあれだしな。」
「宮田、お前フォローのつもりかもしれないがそれ只の悪口だからな?村田を見てみろ。凄い顔してるぞ?」
宮田が村田の方を見ると確かに憤怒の形相をした村田がいた。
村田はデブと言われるのが嫌いだ。身長160cm、体重90kgと明らかなデブだが、村田はポッチャリと言い張っている。デブと言われると初対面の人間にも容赦なく怒ってしかも殴る。
「まぁ、先を進もう。時間制限はないけどタイムアタックではあるんだから。」
橘がそう言うと二人は頷いた。村田も今は怒りを抑えてくれたみたいだ。
橘富谷たはホッとした。何分村田は起こると手がつけられない。
持ち前の素早い動きと巨体を生かし暴風のように辺りのものを破壊するのだ。
気を取り直して遺跡の通路を進んでいくとしばらくして分かれ道に差し掛かった。
ヒントもなにも無いので橘達は適当に右に進む。
「ゲームだし何か問いかけみたいのがあると思ったんだけどな。」
宮田が拍子抜けしたように言う。
確かにそうだ。もし正解の道と不正解の道があったとしたら何か問いかけがあってもおかしくなかったかもしれない。これはあくまでゲームなんだから。
しかしビンビンジョーンズは映画でもそう言う問いかけみたいのが遺跡にあった試しはない。
最後の扉を開けるための鍵みたいなものは何処かに隠されているかもしれないが、映画の遺跡を忠実に再現しているんだとしたら、そういうのは期待しない方がいいだろう。




