サイラスの再訪
後日、言ったとおりにサイラスが来た。
ただ、サイラス一人ではなく、ほかに男の子2人と女の子1人を連れている。
「やぁ。先日は世話になった。手当ての礼と言っては何だがお菓子を買って来たんだ。甘いものは好きかな?」
紙袋を見せながらサイラスが言う。
「君がリアムか。サイラスが迷惑をかけたね。俺はウォルター ナイトだ。よろしく。」
「急にぞろぞろ来てごめんね。俺はウィルバート ベネット。ウィルでいいよ。」
「私はソニア。ソニア フローレス。私たち幼馴染なの。
話を聞いてリアムに会ってみたくてついてきちゃった!」
「…リアム アトウッドです。よろしく。」
三人と握手を交わしつつ、リリアも挨拶をした。
急な訪問に驚いたが、とりあえず外のテーブルに案内し、お茶をふるまう。
なるべく人との関わりは避けたいが、お菓子の誘惑には勝てなかった…。
薬草や野菜を売るだけでは、大きなお金は稼げない。
日々の生活品を買うのでギリギリだ。
甘いお菓子を口に入れると、自然と笑みが広がっていく。久々の味をじっくり堪能していると、ウィルの明るい声が聞こえた。
「おいしそうに食べるね。」
「気に入ってもらえたようでよかった。ソニアに店を聞いたんだよ。」とサイラス。
「そうそう。それで私が「誰に贈るの?」って聞いてリアムの話を聞いたの!
怪我を手当てしてもらったって。」
――魅了の話はしてないのかな?
そっとサイラスに目をやると、サイラスもこちらを見ていて小さく首を振った。
よかった。あとで改めて口止めしなくちゃ。
「これおいしいお茶ね。なんかいい香りがする。」
「あ、うちで育てたハーブをブレンドしているんです。」
「止血にも畑の薬草を使っていたな。おばあさんが詳しいとか。もしよければ会えないだろうか。一言お礼を言いたい。」
「…今はちょっと会えないですね。」
もう亡くなっているから。
とはいえ、一人暮らしということをバラしたくないので曖昧にごまかす。
そのままハーブについての話題に切り替わり、質問に答えていると足音が聞こえてきた。
「やぁ、こんにちは。友達ができたのか。」
家の陰から顔を覗かせたおじいさんが声をかける。
それぞれ「こんにちは」と挨拶を返す。
「わしはノアと言います。よろしく。」
「うちの野菜や薬草を売ってもらっているんです。食べ物も買って来てもらって…
いつもありがとうございます。」
ノアじいさんを紹介するつもりが、後半はノアじいさんへのお礼になってしまった。
「わしも手数料をもらっているからな。助けられているんだよ。
それにしても顔を合わせるのは久しぶりだな。元気でやっているかい?」
「はい。元気です。ありがとうございます。」
「何かあればいつでも言っておくれ。
邪魔したね。食品はいつものところに置いておくからね。」
魅了期間に顔を合わせなくてもいいように、売るものも買って来てもらったものも玄関横に置くようにしている。手数料を除いたお金は玄関ドアに開けた受け口に入れてもらう寸法だ。
日差しにあまり強くないリリアにとって、市場で売り子をするのは辛い。
うっかり魅了してしまう心配もあるので、代わりに売ってくれるノアじいさんの存在は大変ありがたいものだった。
ノアじいさんが去ってからは、
「優しそうなおじいさんだね。」
「今度市場に買いに行ってみようかしら。」と
ノアじいの話から始まり、いろいろな他愛ない話をした。
みんなの通っている学校のことやお菓子のおいしいお店の話、最近流行っていることなど、ソニアが話上手でどれもおもしろく、リリアはお腹を抱えて笑った。
祖母が亡くなって以来、人との交流がほとんどなかったリリアにとって、とても楽しいひと時だった。




