ソニアへの告白
ウォルターとのことがあってから、1週間ほど経った日。
リリアの元にソニアが一人で訪ねてきた。
「どうしたの、ソニア?急に来るなんて…。何かあった?」
事前の約束なしにソニアが来るのは初めてだった。
「うん、あの…」
いつもの明るい調子とは違い、歯切れの悪い口調で話し出す。
「…ウォルターが、リリアの…リアムの手に口づけをしたって…」
「!?」
「昨日ウォルターがうちに来て、そう聞いたの。
私に話すか悩んだんだけど、秘密にしたまま一緒には出かけられないからって。
本来の自分とは言い難い状態だったけど、口づけしたのは事実だからって…」
「ソニアっ…!それは…」
「…ウォルターはリアムが実は女の子だって知ってたの…?
それとも、男の子のリアムを好きになったってこと?」
言いながら、ソニアの目には涙がたまってくる。
「違うよ!違うのソニア!落ち着いて。
…説明させて。」
ずっと秘密にするつもりだったけど、
ソニアを悲しませるくらいなら、明かしてしまおうと思った。
ソニアを家に招き入れ、蜂蜜を入れた温かいカモミールティーを置いて、
リリアは話し始めた。
魅了の力について、それをウォルターにかけてしまったこと、
決してウォルターや自分の意思ではなかったこと、
そして、吸血鬼について――。
「――つまり、私は、吸血鬼の血を引いているの」
話し終えて、リリアは目を瞑った。
ソニアがどんな反応をするか、怖かったから。
リリアが話している間、ソニアはずっと何も言わなかった。
「…そうだったのね。女性の吸血鬼だけに伝わる力…。
相手や自分の意思に関係なく好きにさせちゃうっていうのは、
とても不便ね…。リリア、大変だったわね…。」
ソニアの口から最初に出た言葉は、リリアをねぎらう言葉だった。
吸血鬼について色々聞かれると思っていたので、肩透かしを食らった気分だ。
「ソニアは、吸血鬼が怖くない、の…?」
「言い伝えで聞いている吸血鬼はもちろん怖いわよ?」
リリアを見て、いたずらっ子のように笑う。
その顔を見て、ソニアが伝えようとしたことがわかった。
(でも、リリアは怖くないわ。)
リリアは胸がいっぱいになり、言葉に詰まった。
「…ありがとう。今までおばあちゃんから、
『吸血鬼の子孫と知られると、血を吸われると言って
怖がられたり避けられたりする』って聞いていたの。
そんな力はないって言っても関係なく…。
急に話も聞いてくれなくなって、人が離れていったって。
だから、私、ずっと怖かった…。」
「リリア…」
「自分で言わなくても、魅了の力から、吸血鬼の血を引いてるって
ばれるんじゃないかって。
吸血鬼としての力はないのに、悪いことに使おうとも思ってないのに、
みんな離れて行ってしまうんじゃないかって…。
だから、ソニアが私自身を見て判断してくれて、うれしい…。
態度を変えないでいてくれて、ありがとう。」
「リリアが純粋な吸血鬼だとしても、私は友達になっていたと思うわ。
逆に、私が吸血鬼だったとしても、リリアは私と仲良くしてくれるでしょ?」
自信満々な顔で尋ねてくるソニアの顔を見て、
リリアは思わず吹き出してしまった。
「うん!もちろん!」
「…それにしてもよかったー!リリアが恋敵じゃなくてっ!!」
緊張から解き放たれたように、ソニアが突然、明るい声を上げた。
魅了の力や吸血鬼の子孫のことはどうでもいいという態度に、
リリアは心から救われた気分になった。
「…やっぱり、ソニアはウォルターのことが好きだったんだ。」
「え、前から知ってた!?私、態度に出てた…?」
「ふふ。なんとなくそう思っただけ。
二人、お似合いだと思う!きっとうまくいくよ!」
「…そうだといいんだけど。」
(大丈夫、大丈夫。ウォルターはソニアのことが大好きなんだから!)
心の中でそっと思いながら、リリアはあったかい気持ちでいっぱいになった。
――ゴトッ
突然の物音に、リリアとソニアは顔を見合わせる。
音のしたほうを見ると、玄関ドアの受け口に袋が入っていた。
「…ノアじいが、今日の売上金を入れてくれたんだ」
「…びっくりしたー!」
二人の少女は、楽しそうにケラケラと笑い合った。




