ウォルターとリアム②
「…リアム」
さっきまでとは違う、何かを懇願するような声色にドキッとする。
慌ててリリアは、ウォルターの口に放り込む香辛料を探したが、
手の届く範囲にはなかった。
その間にも、ウォルターはリリアの手を握り、手袋を取っていく。
「な、何!?ウォルターやめて!」
ウォルターは返答せず、あらわになったリリアの手の甲に口づけをした。
「…こんな小さな手で、剣を振るってたんだな。」
言いながら、愛おしそうに指を触る。
さらに、手のひらにできたマメにも口づけた。
「ウォルターやめてったら…!」
「やめない」
手を振りほどこうにも、力が強く、相手にならなかった。
今や、ウォルターはリリアの服の袖をまくり、
手のひらから手首、腕のほうまで唇を這わせている。
リリアは反対の手でウォルターの顔を叩こうとした。
しかし、軽くよけられ、そちらの手首も掴まれてしまった。
真剣な顔でじっと見つめられ、リリアは恥ずかしくなり、思わず顔を逸らした。
「…白い首だな」
首筋にウォルターの顔が近づいてくる。
――その時。
「やぁ、こんにちは!今日は一人かい?」
突然、近くで声がして、リリアとウォルターは文字通り少し飛び上がった。
声がしたほうに目を向けると、ノアじいさんが立っていた。
「今日は一日中天気がよくてよかったね!洗濯物がよく乾いていそうだ。
頼まれていた食材、玄関に置いておくよ。
おいしそうなパンがあったから、それはおまけだ。」
「あ、ありがとうございます!」
ノアじいさんはリリアにほほえむと、ウォルターを見つめ、
会釈をして去っていった。
(びっくりした…あんなに近くにいたのに、まったく気配がなかったな。)
「……リアム、すまない。どうかしていた…」
ふと気づくと、ウォルターの魅了が解けていた。
いきなりのノアじいさんの出現にびっくりしたらしい。
「…ちょっと落ち着きたい。今日はこれで…」
ウォルターは言葉少なに帰って行った。
「助かった…。」
リリアはホッと胸をなでおろした。
(あぁ、やっぱり会うのは断るべきだった。軽率だった…。
ウォルターに悪いことしたな…。今度きちんとフォローしておかなくちゃ。)
反省しながら、家へと戻る。
玄関の前には、ノアじいさんが置いてくれた食材が並んでいた。
「…今日は疲れちゃったから、体にやさしい料理にしよう。」
夕飯には野菜たっぷりのスープを作ることにした。




