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機械仕掛けの悪魔 -Ghost_Writer-  作者: 赤魂緋鯉
セル・ディビジョン
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第4話

 ややあって。少女を預けたコトウとアライは、代金を支払って交番へと戻っていった。


「流石にドーナツが好きな人ってだけじゃなあ……。他になんかねえのか?」

「わからない……」


 店がなぜか提供してくれた、という体で貰ったドーナツを食べつつ、バトンタッチを受けたアイーダは、もう一度少女にコトウたちが訊いた質問をして、その答えに同じように困って後頭部をポリポリかく。


 4人掛けのボックス席に、正面から見て右に少女とナビ、左にアイーダとカガミが座っていた。


「この空間の分のカロリーってゼロなんですよね。でも平均値には入ってるので、それがどれほど当てにならないか分かりますね」

「別に全部あるタイプもあるが……」

「浅いですねぇ。クリームは真ん中にしか入っていないので成立するのです」

「なるほど……?」


 アイーダが話を訊いている間、暇なナビとカガミは、食いしん坊みたいにドーナツを持ちながら内容がない話をしていた。


「で、現時点でのアイーダさんの見解は?」

「こりゃ単純に記憶喪失かもしれねえな」

「分かった、政府病院に繋いでみよう」

「頼む」


 お手上げ、と両手を挙げたアイーダの意見を聞いて、カガミはこめかみの辺りを2回叩いて上司であるヤタ・マサミ〝0課〟長に通話する。


 だが、口八丁手八丁で丸め込む事に定評のある彼でも、流石に迷子のために動かすというわけには行かず、普通に病院へかかる事を勧められた。


「まあ、第3病院の医師に知り合いがいるから、話は通しておこう」

「助かる」

「だそうです。やっぱり肝心なところでお上は当てにならないですね」

「公安が今んとこただの迷子にまでいちいち動けるわけねえだろ」


 いつものように個人間通信に割り込んで、アイーダと共に話を聞いていたナビは、彼女からその毒舌をたしなめられた。


「ここから第3病院までか。地下鉄で行った方が早いな」

「発車時刻確認しますね。って、循環線の東側は異臭騒ぎで運転見合わせですか」

「この辺は影響なしか?」

「はい」

「そんじゃ出るか」


 腹を満たしてコーヒーを飲みきったアイーダは、先に食べ終えて待っていた2人と1体へそう言って立ち上がった。


「――動くな」


 すると、アイーダの後ろのボックス席にいた男もスッと立ち上がり、アイーダの後頭部に銃口を向けた。


 それは一般的な自動式ではなく、暗殺に使われる銃声がしない拳銃だった。


「何者だ?」

「なっ」


 しかし、隣に座っていたカガミが素早く立ち上がって左手を伸ばし、銃のスライドをちぎり取ってしまった。


「気配の消し方は見事だ。だが、なさ過ぎる気配はここだと逆に目立つ」

「ばけも――ッ」


 その拳銃パワフル分解術を目の当たりにし、男が隙を見せた一瞬に、カガミはそう忠告しながら右アッパーで男の顎を殴って気絶させた。


「こっちへっ」


 その直後、即座にテーブルを店内側に倒したカガミに従って、アイーダたちはその後ろに隠れた。


 すると、店内のあちこちにいた客たちの内、男女4名が立ち上がってカガミへ先ほどの男と同じ銃を向けたが、


「公安局だッ。全員動くなッ」


 その隣には実は公安局の捜査官が1人ずついて、各々がその頭部に銃口を突きつけて全員の動きを封じた。


「カガミさんの勘も私の分析も正解でしたね」

「ああ」

「昼飯ぐらい穏やかに食わせろっての……」


 と、少女を守るように抱き寄せているアイーダは、内心味が分からない程ビビっていていたので、安全が確保されて深々とため息を吐く。


 実は店に入る前、店内を見たカガミは明らかに堅気ではない気配を察知し、同時に、店の監視カメラに潜りこんでいたナビが、少女へ頻繁に視線を向ける5人を検知していた。


 そこで、アイーダには平静を装ってもらい、カガミからの要請で公安局員が増援にかけつけ、怪しい人物をマークさせていた。


「アタシらが来る前にいたってこた、連中はこの子の客ってことだな」

「髪の色以外は、見た目通りにしか見えないと思うが……」


 うなじのプラグにコの字の電脳ロックをかけられて公安局員に連行される、暗殺用拳銃を持った刺客と、パッと見か弱い少女が繋がらずカガミは怪訝そうな顔をする。


「……?」


 ただ事ではない事が起きていたにも関わらず、少女は自分を守ろうとしたアイーダを不思議そうに見上げているだけだった。


「というかいつまで抱っこしてるんですかっ! そこはナビちゃんのポジションなのですがっ」

「はいはい」


 カガミと共に首を傾げていたナビが、まだアイーダの腕の中にいる少女を見やり、彼女へムスッとした顔で抗議するので、アイーダは雑に返事して手を放した。


「――お前、どっか痛いところとかねえか?」


 それから立ち上がったアイーダは、少女に手を貸して立ち上がらせて訊ねる。


「……。わからない……」

「なんともねえときは、大丈夫、って言うんだぞ」


 状態が、というよりは、適切な単語が見つからない、といった様子で質問に答えた少女へ、アイーダは子へものを教える母親の様に優しく微笑んで言う。


「……じゃあ、大丈夫……」

「そりゃ良かった」


 おっかなびっくり少女はそう答えて、アイーダがその頭を優しく撫でると、少女は少し目を細めて心地よさそうにする。


「ぬわー! ナビちゃんも撫でてくださいよー!」


 口がへの字になったナビは、アイーダの空いている右手に頭頂部をこすりつけ、自分へのなでなでを全力で要求する。


「あー、はいは――ん?」


 ちょっと押されて苦笑いしながらも、それに応えて少女の頭から手を離した際、アイーダは前髪の生え際辺りに色素沈着があることに気がついた。


「なんだこれ。二次元コード……?」


 さっき離した左手を戻し、少女の前髪をかき上げてそれをまじまじと確認し、明らかに不自然なそれに首を傾げる。


「ナビ、コードリーダーの秘密機能あるか?」

「もちろんあります。これはナビちゃん99の秘――」

「口上はいいから、早くやれ」

「アッハイ」


 例によって口上キャンセルをされつつ、ナビはちょっとだけ背伸びしてそれを読み込んだ。


「セキュリティは問題ないですね。普通に読んでも無意味な羅列ですが、そこは当たり前の様にスルーしまして、情報の中身は〝プロジェクト・スカイブルー 検体番号404号〟――」

「〝プロジェクト・スカイブルー!?〟」

「何っ!?」

「なぜまだ続いているんだ……!?」

「そう聞こえたよな……?」


 ナビが情報を読み上げていると、カガミを含んだ公安局員たちが、それを聞いて異口同音に驚愕の声を突然あげ、


「急にでけえ声出すなよ」

「なんなのです?」


 アイーダとナビは真後ろ以外から襲いかかってきた大声に顔をしかめる。


「気になるだろうが、我々の業務は被疑者の連行だ」


 カガミ以外の局員は驚きを隠せないままだが、現場指揮者の中年男の一声で、下手人の連行を優先して店から出て行く。


「今すぐ説明したいが、ここだと部外者が、な……」


 一般局員に開示されている中でも、かなり高レベルの機密情報のため、一気に重要参考人となった少女と共に、アイーダ達は公安局庁舎へと向かった。

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