表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの悪魔 -Ghost_Writer-  作者: 赤魂緋鯉
ドラゴンフライ
81/81

エピローグ

 自分を推薦したバイト達すら、誰1人付いてきていないムスカベは、目立たない様に薄暗い裏路地をこそこそと歩いていた。


 まあいいわ。今まで貯めたクレジットでほとぼりが冷めるまで隠れておけば、表に出なくてもこのスパイスでのし上がれるから……!


 だが、その表情には後悔は無いが反省もなく、唯一持ち出したスパイスセットのケースと夢を見てほくそ笑んでいた。


「君、ちょっと良いかな」

「は? ()()()()()じゃ――」

「政府厚生局だ。君に薬物使用および所持容疑の逮捕状と」

「政府公安局から、不特定多数へのテロ行為容疑の逮捕状が出ている」

「え……?」


 だがそのルートも、茶色く澱んだ用水路にかかる小橋上にて、麻薬取締官の中年女とカガミから告げられた、容赦ない通告によって完全に絶たれた。


「はい、そのアタッシュケースを渡しなさい」

「ち、違います。これは単なるスパイスですよ? それにテロ? 人違いじゃないですか? これはちゃんと〝香辛街〟のお店で買ったものですからっ。証明書もほらこの通りあります!」


 これまでや、ついさっきと同じ様に引きつったヘラヘラ顔でそう言いつつ、ムスカベはケースを抱え込んで妙に早口で喋る。


「調べがついてない、なんてことがあると思うか?」

「だったらっ」

「その店はノース・ベルト領テロリストのフロント企業、だ」

「……まってまって! 私騙されたんですぅ! 究極のスパイスだって聞かされて――」


冷や汗をびっちょびちょにかいているムスカベは、一転、上目遣いで被害者アピールをしつつ、アタッシュケースを足下へ叩きつけようと両腕を振りかぶった。


「証拠隠滅の恐れありー!」

「確保ー!」


 これ以上失態は出来ない公安・厚生両局員は、その挙動を用水路に投げ込もうとした、と認識して必要以上の人数で取り押さえにいった。


「痛い痛い痛い! なんでこんな目に遭わないといけないのーッ! 私何もしてないのにーッ!」


 金切り声を上げて叫びまくるムスカベは、この期に及んでの被害者ムーブを繰り広げるため、カガミですらそのやや過剰な対応に何も言わなかった。



                    *



 数日後。


「はいっ、というわけで! 向上心の塊たるミラクルハイスペックウルトラスーパーAIナビちゃんは、この通り中華料理をマスターしたのですっ!」


 アイーダ探偵事務所のキッチンにある、4人掛けダイニングテーブルの上に、実際は1人前で中くらいの皿ではあるが、いくつもの大皿料理が用意されていた。


 白い布を引いて、ビー玉と玩具のレールを組み合わせて作った回転卓もどきまで用意され、アイーダとカガミの目の前に並ぶそれは、見た目だけは本格的な中華料理に見える。


「ん。美味い」

「このチンジャオロース、肉が入っていないが、そう呼んで良いのだろうか……?」


 炒飯以外の中華料理があんまり好きではないカガミは、クッキーバーをもしゃもしゃしながら、赤と緑と薄い黄色のみで構成されたそれを怪訝そうに見つめる。


「うるさいですね! 廉価れんか版では呼ぶのです!」

「それは良いけど、なんでそんなの着てんだ?」

「ふふん。雰囲気なのです」

「あっそ。おっ、このエビチリっぽいのも美味いな」

「プリッとしたカマボコなのがミソなのですよー」


 白くて光沢のある生地で作られた、いわゆるチャイナドレスを着たナビは、文句言わずに喜んでムシャムシャ食べるアイーダを見て、満足そうに胸を張っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ