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「さて。あの子をどう見るかね、諸君」
セレスティアとレイが部隊長室から出て行き、靴音が遠ざかって聞こえなくなったとき。
ジジウォッカは机の影にもたれるように潜んでいた少年と、窓裏(ジジウォッカのすぐ後ろは小窓があり、すぐ下は屋根だ)に隠れていた男に声をかけた。
「……そうですなぁ。最初はずいぶんチンマリとしたお嬢さんが来たと思いやしたが…。一瞬で状況を理解し、自分にとっての脅威を把握する能力。そして、戦闘における相手を見極め、戦術を編む勘はおそらく一級品でしょう。生身の女性にしておくのがもったいないくらいですな」
窓裏の男は「よっこいせ、」と開いたままの窓から185は超える巨体を部屋の中へと入れ込んだ。
「やはりそう思うか」
「えぇまぁ。戦闘要員としては無理でしょうが、指示役には適役かと。やっと軍のわんころ共も使える人材を送ってきたってところですかねぃ」
「いや、それとはまた違うんだがね。どちらかというと、使える奴を送ってきた、というよりかは、送られてきた奴が使える奴だった、というほうが最適かな」
戦争の中でも最前線で戦うこの場所を、あくまで上層部はゴミ箱として使うらしい。
(いや、今回は上層部、ではないか)
前の戦隊長が『ノイローゼになって実家に戻った』というのは表向きの理由だ。
実際は、通常得られる退役金の3倍の額を彼に支払い、出て行ってもらったのだ。
彼女をその席へと座らせるために。
それを指示したのは、この国で最も位が高い人間。
彼女の死を、望む人間。
「シュウカはどう思うかい?あの子のこと」
表面上はにっこりと笑って、机の影にもたれていた少年ーーシュウカに、ジジウォッカは問う。
彼は、もう1人の大男ーージヴァに比べてどこか冷めた目と表情だった。
「……信用はできません」
少し逡巡してから答えた言葉には、感情はなかった。
いや、普通に聞いていれば感情がなく聞こえる、と言ったほうが正しいだろう。
ジジウォッカとジヴァは、その言葉の裏に密かに存在した静かな怒りと憎しみを感じとる。
「おや、珍しいね。何事にも無関心な君がそんなふうに言うのは」
「………。」
ジジウォッカのからかうような顔に小さく息をつき、シュウカは立ち上がって部隊長室を足音もなく出て行った。
「…そうか、あの子は知っているのか」
その後ろ姿を見送ったジジウォッカは、ジヴァには聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた。
「さて、ね。この組み合わせが吉と出るか、凶と出るか。見ものだね」




