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レモン
普段、紅茶は飲まないがその喫茶店に行く時だけは別だ。私は迷わず外を望めるガラス窓があるテーブル席に陣取って、必ずレモンティーを頼む。クルリとした花彫りがされた白くて線の細いカップの中に少し厚く切られたレモンが浮いていて、私はソレをひと泳ぎさせてからおもむろに指でつまみ上げ口に頬張るのだ。
葉の香りと渋みが鼻を抜け、喉奥をヒリヒリとした刺激が襲い思わず顔をしかめる。ふと顔を上げてガラス越しに外を見ると、私と同じように顔をしかめた人間がそこら中に、いる。
私は、里親の元で生活していた頃とは逆の感情でもって町の人間の顔色を伺う。
ああ、皆、同じなのだ。皆が喉奥のヒリヒリに顔をしかめて耐え、その先に待っている清涼な風を味わおうとしている。
その答えに至るまで少し時間をかけすぎた。
私は、人間が好きだ。




