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星空ランデヴー  作者: あいしー
第二章~地球の皆さんこんにちは~
15/29

13

 朝のHRの予鈴が鳴り、先生が教室に入ってくる。けれど、先生の後に続いて入ってきた人物に私ときなこちゃんは目を疑った。

 クラス中がどよめいている。「すっごくカッコいいい!」とか「外人!?髪と目の色キレイだね」なんてみんな思ったことを口々にするけど、私たちには目の前に広がる光景を夢だと思いたいほどにひどいものだった。

 ああ、きなこちゃんが頭を抱えて何かブツブツ言ってる・・・・。既に顔色が最悪だ。

 

「おーい、静かにしろ。じゃあ、転入生を発表するぞ」

「今日転校してきた、ニフタ・アストリァ・プスィテ・フォティゾ・ウーヌム・ディアトンアス・ブルートゥ・四世だ!皆の者、よろしく頼む!!」


 先生の言葉を半ば喰うように、ディアが元気に自己紹介をする。

 本名言っちゃったよ!色んな意味で凄く注目を受けてる・・・・!「えっ、今言ったの名前!?」というようなささやきが、さらにクラス内の興味をディアへと向けた。


「えーと、彼は海外からの留学生で日本に勉強をしに来たそうだ。日本語は話せるが、まだまだ不自由なところは多い。何かと助けてやってくれ」

「ここで色々なことを学ぼうと思っている」

「じゃあ、彼の席は」

「一つ、言っておくが・・・・」


 先生の言葉を遮って、ディアが何か言い始める。

 って、なんで私の方を指差してるの?ちょっと、何言う気!?


「あそこに居るあんこは私の婚約者だ。変な真似をする輩がいれば、即刻排除する」


 キラキラした笑みを浮かべて、とんでもないことを口走ってくれる。隣できなこちゃんが、ガッターン!!と大きな音を立てて椅子から転げ落ちるのが見えた。

 ディア、なんてことを!どどどど、どうしよう。

 どよめきは最大に膨らみ、皆が私の方を見ているのがわかる。


「そ、そーだよね!!まだ日本に来て間もないから、婚約者と友達を間違えるのも無理ないね!!あははははー!!!!」

「いや、僕は間違ったことなど言って・・・・」

「そうだよねー!あんこは友達だよねー!!ね?ねっ!?」


 とっさに皆の机をかき分けてディアの元へ、きなこちゃんがフォローに入ってくれた。強引にディアの言ったことを訂正するが、空気を読まないディアが反論を・・・・すかさずきなこちゃんがディアを黙らせる。近づいて、何やらこそこそと話し込み始めた。

 ありがとうきなこちゃん。でもそれ、ちょっと無理があるんじゃあ・・・・?

 必死にきなこちゃんが「あんこが婚約者だとか、言うんじゃないわよ!言ったらあんこ、あんたのこと本気で嫌うわよ!?」なんて説得している。ディアはその言葉に「それは困るな!」と納得したようだった。

 ディアも、そんなんで納得しちゃうんだ・・・・。


「すまん、間違えたみたいだ」

「そうそう、まだまだ日本語も勉強しなきゃねー!あはははは・・・・」


 二人とも必死に作り笑いで誤魔化そうとしてるけど、クラスメイトの反応は案の定疑いをかけるものだった。


「先生、ディアの席はどこですか!?」

「あー、えっと、そこだ・・・・」

「そうですかー。ほら、あそこがディアの席だよ」

「そうか」


 作り笑いも限界に達したきなこちゃんが、堪らず話題を変える。

 きなこちゃん、物凄い棒読み・・・・・・・・。

 先生も急な展開についていけなかったようだ。ただ一人、ディアだけが平然として自分の席へと向かうと、ちょうど彼が席に着いたところでHR終了の鐘がなった。


「じゃ、じゃあこれでHR終了とする。彼と話をするのもいいが、いつも通りの日課だから一時限目に遅れないようにすること」


 そう言うと、先生は教室を出て行った。と同時に、私ときなこちゃんが盛大にため息を吐く。二人で目配せをし、すぐさま二人でディア元へと駆けつける。


「ディア、お願いだから学校でああいうこと言わないでっ!」

「ホント、いい迷惑よ。あんこが凄く困ってたじゃない」

「しかし事実だろう?なぜ言ってはいけなかったのだ」

 

 ディアの態度に一層怒りを増したきなこちゃんが怒鳴り散らそうとした・・・・・いや、実際に怒鳴ったのかもしれないが、彼女の声が私たちの耳に届くことはなかった。

 いつの間にか私たちはクラスメイトに囲まれ、周りの声にかき消されてしまったのだ。


「凄くカッコいいねー!名前、何て言うんだっけ?」

「どこから来たの?その髪、地毛?」

「えっ、安田さんと木山さんって知り合いなの!?」


 突然の大勢による質問攻めに、二人して「あー、えっと・・・・」としか返すことが出来ない。主に女子がディアのことを興味津々に見ていて、男子は遠巻きにそれを眺めている。

 既にきなこちゃんはキャパオーバーの様で、尋常じゃないくらいテンパっている。もはや目を回して倒れかねない勢いだ。


「僕の名前はニフタ・アストリァ・プスィテ・フォティゾ・ウーヌム・ディアトン・アステリャス・ブルートゥ・四世。すまないが、あんこもきなこもそんなに一度に質問されて疲れてしまったみたいだ。道を開けてくれ」

「へ・・・・?」

「ちょっ、なに!?」


 それだけ言うとディアは私たち二人の手を引っ張り、教室を出る。意外と力が強く、私たちはなすすべなく連れていかれる。と言っても、きなこちゃんは完璧に疲れ切っていて、抵抗するどころか連れ出してくれたことで助かったようでもあるけど。

 遠くでクラスメイト達が追いかけるわけでもなく私たちを眺めているのが目に映ったところで、一時限目開始の鐘が鳴った。

 ああ、これは一時限目はサボりになるな・・・・・・・・。

 どこか遠い目をしながら、私たちはそのままディアによって屋上まで連れられた。

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