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「ふう、疲れるね・・・・」
「そうかな。裏山なんて滅多に入る機会がないから、楽しくない?」
「そりゃあ、きなこちゃんは毎日鍛えてるから平気かもしれないけどさ。私は結構大変なんだけど」
「まあまあ。あとちょっとでしょ」
するときなこちゃんはニヤッと笑って「抱っこしてあげようか?」と聞いてきたから、「だ、大丈夫だよ!」なんて言ってお断りした。
正直なところ、前にされた人生初のお姫様抱っこは全力ダッシュのおまけつきで凄く怖かった。揺れる度に落とされるんじゃないかと、ヒヤヒヤしたんだから。
私たちは、放課後になって裏山に足を踏み入れた。宇宙船は裏山の奥深いところに置いたから、草木をかき分けて進まないといけない。
それにしてもだいぶ歩いた気がするなあ。もうかれこれ十分程度は歩いているんじゃないだろうか。まだ四月の半ばなのに、ジンワリと額に汗まで浮かんできた。
汗を手の甲で拭っていると、ふときなこちゃんが何かを見つけたようで前方を指差した。
「あ、あれでしょ」
「そうだね」
宇宙船に近づいて、船のドアらしき、一部だけ色が違うところをノックしてみる。
「ディア、どう?少しは宇宙船直った?」
・・・・呼びかけてみたものの、返事がない。
「ディア?・・・・寝てるのかな」
「おい、ディア。せっかく来てあげたのに無視すんの?」
「無視はしないと思うけど、おかしいね。もしくはどこかに行ってるのかも」
「はぁ!?地球での一般常識もなさそうなあいつが、外に出たらマズくない?」
確かにそうだよね。じゃあどうしたんだろう・・・・。いくら呼びかけても、出てくる気配がないし。
そう考え込んでると、痺れを切らしたきなこちゃんが「いないの!?いるなら出てきなさいよ!」と怒鳴りながら宇宙船をガンガンと蹴り始めた。
流石にそれはやめなよ。まったく、何でそんなにケンカ腰でディアと会おうとするの。
「落ち着いてよ、きなこちゃん。ディアだって疲れてるのかもしれないし、今日は帰ろっか」
「でもせっかく来たのに・・・・。あれ、これ開いてるよ」
「え、ホントだ」
私になだめられたきなこちゃんがしょうがなさそうに宇宙船に手を突くと、『ガコン!』と音を立てて船の一部が開いた。
おそるおそる中を覗いてみるが、そこに人影はない。
「やっぱりいないのかな・・・・?」
「ホントにいないの?うーん、暗くて良く見えないわね。・・・・しょうがないなぁ」
「えっ、入っちゃうの!?」
「開けっぱなしにしとくほうが悪いんだって。ほら、あんこも来なよ」
いいのかな、勝手に宇宙船に入っちゃうなんて。これ一歩間違えれば不法侵入じゃない?
仕方なく、きなこちゃんの背中に隠れるようにして船内に足を踏み入れる。中は、外から入って来る光で薄っすら見える程度だ。
「誰もいないね・・・・。やっぱりどこかに出て行ってるんじゃないかな?」
「・・・・」
「きなこちゃん?」
何にも喋らないきなこちゃんが「しーっ」と口元に人差し指を立てて、静かにするよう促す。
そして小さく呟いた。
「・・・・何かいる」
「え?」
そう言うと、後ろから差し込むかすかな光を頼りにゆっくりと中へ中へと進んでいく。端まで進むとそこで彼女は足を止め、床の方を指した。
「ディア、いたよ」
「え?」
視線を床もとに移すと、そこには・・・・
_________ぐったりとして、横たわっているディアの姿があった。
「ディア!?」




