悪霊たちの宴⑪
「確かにアリカと一緒にやればあのミニゲームは簡単にクリアーできるけど…それをされるドッペルさんが…」
「まだ悩んでいるのですね…お嬢様…」
「私だったら、気にしないで明日以降もやる」
「飛鳥はそこまで難しくなかったから明日もやりたいかもー。コイン一杯貰いたーい」
「私は少々手こずったのでできれば遠慮したいところですが…まぁ今日の様子からして私以外はそれほどでもないようですし、私は外で待っていようかと思います」
…あれ?
皆は明日もあのミニゲームやる気満々ってこと?
そんな中私だけ反対するのはちょっとなぁ…。
い、いや!
きっと明日には対策が取られてきちんと戦う感じになるはず!
そしたら素直にギブアップしよう!
「さて次のミニゲームは…えーっとポルターガイストで散らかった部屋を片付けるミニゲームですね」
「飛鳥、お掃除あんまりした事ないからしてみたいかも」
「片付け…」
「…ルカってもしかして片付けするの苦手?」
「ぎくっ」
いや、わざわざ声に出さなくても…。
「アリス、物は置いてある場所がわかれば問題ないの」
「片付けができない典型的な台詞はやめなさい」
「はい…」
そっか、こっちだとストレージとかがあるから勝手に整理とかされるからあまり気にならなかったのか。
って事はルカが家を持ったら…。
「ルカ、とりあえずお手伝いさんは片付けができる人っていうのも考えておこう」
「え、何で?」
「ルカの家がゴミ屋敷になるかもしれないから…」
「…そんな事は…ない…」
こらこら目を反らさない。
最悪時間が空いてる時に飛鳥ちゃんに見てきてもらうことも視野に入れておこう…。
さすがに友人の家がゴミ屋敷は心配になる…。
「掲示板によるとここのようです」
「一見普通の家っぽいね」
「話によると、休憩しようと思って入った家が実はミニゲーム会場だったというオチらしいです」
「偶然見つけた感じなんだ」
「はい。それでこのミニゲームは一人もしくは二人一組のようで、同時に入るとランダムで分けられてしまうようです。ですので先に誰が誰と組むか決めてから順に入ったほうが良さそうですね」
二人一組かー。
まぁ片付けってことだし、多少なりの人手は欲しいもんね。
「じゃあ私はアリスと組む」
「飛鳥はルカお姉ちゃんと一緒にお掃除したーい」
「うっ…」
真っ先に私と組むと言ったルカも、飛鳥ちゃんに乞われては強く言えないようだ。
「ちなみに片付けということですので人手は欲しいです。ですので複数ペットを持っているお嬢様とルカお嬢様は別々でお願いします」
「ガーン」
「まぁ妥当だよね…」
私だけで5人いるのにルカ含めたら10人だもん…。
その分飛鳥ちゃんとトアさんの負担は大きくなっちゃうもんね…。
「じゃあ私がトアさんとで、ルカは飛鳥ちゃんとって感じかな?」
「それがいいでしょう。先程の話からすると、私が一緒よりは飛鳥お嬢様が一緒の方が効果がありそうですし」
正直ルカがトアさんと飛鳥ちゃんのどっちの言う事聞くかって言ったら、間違いなく飛鳥ちゃんだろうしなぁ…。
「よし…飛鳥、早く片付けて終わらせよう」
「うんー」
そう言って急いで屋敷の中へと入るルカと飛鳥ちゃん。
まぁあれだけやる気があればそこまで時間は掛からないだろう。
「では私たちも入りましょうか」
「そうだね」
先に入ったルカたちに遅れないようにしないとね。
屋敷の中に入ったはずなのだが、私たちはいつの間にか奥に一つ扉がある一本道の通路へと転移させられていた。
ということは屋敷全体ということではなく、その一室の片付けをするということなのだろう。
まぁさすがに屋敷全部の部屋だったら大変だよね…。
「うわぁ…」
「確かにこれは人手がいりますね…」
扉を開けて中に入ると、普通の部屋の二倍以上の広さの部屋となっており、物が破損したり絵が破れてたりということはないのだが、辺りに置いてあったであろう家具などが横たわっていたり逆さになって立て掛けてあったりなどめちゃくちゃな状態であった。
「一先ず片付け始めなきゃね」
「えーっと、どうやらこの絵と同じように片付けをすればいいようですね」
トアさんが入ってきたドアの内側に張られていたこの部屋の家具の配置図を指差し、それ通りに片付ければ恐らくクリアーなのだろう。
ってことで皆にも手伝ってもらおう。
ただ…。
「キュゥ…」
「そうだったね…レヴィは手がないもんね…」
一人手がないレヴィをどう手伝ってもらおうかが問題であった。
巨大化すれば大きな家具とかは問題ないが、そうすると大きくなったレヴィによって他の家具が設置できなくなってしまう恐れがあって…。
「キュゥゥ…」
「あーよしよし。その代わりレヴィは私たちを見守っててね」
「キュゥ…」
一人仲間外れとなってしまったレヴィを慰めつつ、私たちは片付けを開始した。
「うっ…流石ネウラお姉ちゃん…触手が多いだけあって凄い…」
「私は今能力を封印されてるし、そこまで力が強いわけでもないから一苦労なのに…」
「んー? 二人ともどうしたの?」
触手を何本も使って重たい物を優先的に運ぶネウラを見て、フェイトとリエルの二人は羨ましそうに眺めていた。
「こういう時吸血鬼で良かったと思います」
「ミラ、一応血を吸わなくて平気?」
「はい、特にそこまで重いと感じませんので大丈夫です。それに特に重い物はネウラお姉様が運んでくれていますし」
私と一緒に戸棚を正しい位置に移動させているミラを気遣いつつ、順調に片付けを進めていく。
「これならばすぐに終わりそうですね」
「そうだね」
「ちょっちょっとー!?」
「やめなさーいっ!」
そんな時フェイトとリエルの悲鳴のような声が聞こえてきた。
何事かと思って二人の方を向くと、再設置したはずの家具が一人でに動きだし、あちこちへと散らばり始めてしまっていた。
「せっかく片付けたのにー!」
「何してくれてるのよー!」
よく見てみると、黒いモヤモヤのようなものが宙を飛び回り、楽しそうな声を上げていた。
「掲示板ではそんなに大変でなかったという話でしたが…もしや自分がやられて腹が立ったからこの情報を意図的に隠してた…?」
「もしかしてその連鎖で他の人も情報を隠してた感じかな…?」
「まぁ私たちのようにペットを使ってやってはいないでしょうからね…」
確かにこれはウザイ…。
せっかく片付けたと思ったらまた散らかされるのはなかなか来るものがある。
「この悪霊がー!」
「滅してあげるわっ!」
「フェイトもリエルも落ち着いて―!」
悪霊にキレた二人をネウラが触手を使って必死に止める。
まぁあの二人が暴れたら更にこの部屋がめちゃくちゃになるのは明らかだし、ネウラが必死に止めるのもわかる。
「てかあの悪霊って攻撃効くのかな?」
「そこは試してみないと何とも…。ですがいくら普通の部屋よりは広いとは言っても家具などを壊してしまっては失敗となってしまうかと思いますので…」
「攻撃手段が限られちゃうってことかぁ…」
「まぁ私の【遅延】を片付けた家具に使って時間稼ぎをしている内に終わらせてしまうという手もありますが…」
「とりあえずそれでいこっか。トアさんはまだ動かされてない家具に魔法を掛けて回って。その間に私たちが素早く家具を設置するから」
「わかりました」
悪霊がフェイトとリエルに気を取られている内にさっさとしなければ…。
結局のところ、途中までは上手くいっていたのだが、家具が動きづらいことに気付かれ、残った家具を宙に浮かばされてしまい、その家具を確保するのに無駄に時間を使ってしまった。
そんな苦労をしてミニゲームをクリアーして外へ出ると、ルカと飛鳥ちゃんは既にクリアーして待っていたのであった。
二人にあの妨害をどうやってクリアーしたのかを尋ねてみると…。
「カルディアに悪霊の行動を読んでもらって、その目標の先をアレニアの糸で動けなくさせるのを繰り返してた」
と簡単に言ってのけた。
悪霊の悪戯もカルディアとアレニアの二人のコンボの前には手も足も出なかったようだね…。




