吸血鬼イベント③
「山道…辛い…」
「普段は平地ばっかりだからねぇ…」
整備されているとはいえ、お城が山城だけあって傾斜もあり、更に少し歩くため平地を歩くよりも移動しずらい。
そのため、私と同様に平地での活動が多いルカは少しだるそうにしていた。
「ルカ、もう少しだから頑張ろ?」
「ん…」
ルカのペースに合わせて歩いていると、突然お知らせの音が鳴り響いた。
私とルカはその場に立ち止まって確認する。
―INFO―
プレイヤーが吸血鬼のアジトを見つけました。
アジトの撃破率によって襲撃時の吸血鬼の戦力が変化します。
襲撃までの残り時間 142:21:43
北のアジト:0%
東のアジト:0%
南のアジト:0%
西のアジト:0%
撃破率ってことは…ダンジョンか何かなのかな?
あと時間が142:21:43の内、43の数字が変化してるから、あれが一秒単位ということだから…。
「大体六日?」
「ってことは、六日までに撃破率を上げていけってことかな?」
「たぶん」
となるとお知らせの通り、六日経ったら吸血鬼が侵攻してくるってことだろう。
でもあれだとどこから襲撃してくるかまでは知らされてないけど…。
まぁたぶん各方角のアジトから攻めてくるってことだろう、たぶん。
「それにしても絶景だねぇ」
「うん。湖も綺麗」
「えっ? どこ?」
「あっち」
ルカが指差した方を見ると、確かに湖があった。
そしてその湖の中心には小さなお城があった。
「って、あれ湖なの?」
「なんか川っぽい」
遠くから見ているため確かではないが、微妙に水が動いているように見えた。
そもそも湖の端が上流と下流っぽくなってる気がしないわけでもないような…。
「あそこに城を立てた意味がわからない」
「えっと…攻めにくくするため…とか…?」
「兵站等が壊滅的。籠城にしても水攻めで終わる」
「うっ…」
ルカの辛辣な言い方に私は頑張ってフォローする。
きっとなんか理由があるはずなんだよ!
世の中には自滅するような城だってあるはずだし!
そんな事を話して歩いていると、いつの間にかお城の城門に辿り着いていた。
城門前には兵士が何人もおり、厳重に見張りをしている。
「これ…近づいていいものなのかな…?」
「何かピリピリしてる気がする」
やっぱり吸血鬼が来るってことで警備が厳しいんだろうね。
お城に入れる雰囲気ではないため、諦めて来た道を帰ろうとすると城門前の兵士に声を掛けられた。
「おいそこの二人」
「はいっ!」
「お前たち見ない顔だが…異邦人か?」
「そっそうです!」
急に声を掛けられたので少し声が裏返ってしまう。
ルカなんて完全に固まって私の腕にしがみついてるし。
兵士の方も、こちらが緊張したり怖がっているのが見てわかるため、少し対応に困っているようだ。
「怖がらせてしまったのならすまない。こちらも仕事なのでな」
「はっはい! 大丈夫です!」
「それで話というのは、お前たちが異邦人なら陛下からお連れするように命を受けていてな。予定は大丈夫か?」
えっ? 陛下?
陛下ってあの陛下?
王様とかいう意味での陛下?
この国で言うと女王様だよね?
なんで!?
「えっと…女王さ…陛下は何で私たち異邦人を…?」
「詳しくは陛下から伺ってほしいところだが…理由ぐらいは説明すべきだろう。端的に言えば吸血鬼に関することで陛下からお願いがあるとのことだ」
まぁ兵士よりも自由に動けるプレイヤーの方が情報収集はできるかもしれないもんね。
そういう意味でお願いするのだろう。
「ルカ、別にいいよね?」
「ん、問題ない」
「では案内する。ついてきてくれ」
兵士が合図すると城門が開き、私たちは案内の兵士について城内に入った。
城内には兵士がより多くおり、戦の準備も行っているように見えた。
「アリス、アリス。本物のメイドさん」
ルカが表面上は無表情だが、興奮した声を出して私の服の裾を引っ張る。
案内の兵士もルカの様子に困惑するが、平静を保って私たちを女王様の部屋まで案内する。
女王様の部屋の前には、近衛兵であろう他の兵士に比べて身なりが整った人たちが両脇に待機していた。
案内の兵士はその人たちに歩みを止めさせられる。
そして、その場で要件の旨を発した。
「異邦人のお二人をお連れ致しました!」
「了解した。後は我々が受け持つ。下がっていい」
「はっ! 失礼いたします!」
そう言って案内の兵士は下がっていった。
私たちは近衛兵の二人に観察される形でまじまじと見つめられた。
「…では陛下にお目通りをしてもらう前に武器を預かる」
「はっはいっ!」
私たちは近衛兵に武器を渡す。
そして私たちのボディーチェックをいつの間にか近くにいたメイドたちが行い、私たちは入室を許可された。
部屋に入ると、所謂謁見の間という空間なのだろう。
漫画等で見るような広い空間であり、入口から一直線に玉座まで絨毯が敷いており、その絨毯を避けるように等間隔で左右に近衛兵が一列に規則正しく立っていた。
やばい、なんかすっごく緊張してきた。
だからルカ、そんなにしがみつかないで私も今一杯一杯だから!
「ではどうぞ」
「はひっ!」
先程私たちの対応をした近衛兵が、私たちを連れて女王様の座る玉座の前まで歩く。
そして近すぎず遠すぎずの距離で止まり、左膝を立て右膝右拳を床に付けて下を向き、左拳を腰に付けて跪いた。
私とルカも急いで目の前の近衛兵の真似をして跪く。
「陛下、異邦人をお連れ致しました」
「ご苦労様。貴方は元の持ち場に戻りなさい」
「はっ!」
そう言って近衛兵は立ち上がり、元の持ち場へと戻っていった。
だが、私たちはこの後どうすればいいのかわからず、跪いたまま固まっていた。
「顔を上げなさい」
女王様の言われるままに私たちは顔を上げる。
そこには金色の長い髪をした綺麗な女性がいた。
ぱっと見だが、見た目は三十台前半ぐらいのお姉さんで、白を基調とした豪華なドレスを着ており、その着こなしがまさに女王様という感じだった。
でも目がちょっとキリっとしてて、インテリ教師っぽくて怖いかも…。
「っ!? 貴女…」
「えっ?」
「いえ、何でもないわ」
「はぁ…?」
今私を見て驚いた?
気のせいかな?
一瞬驚いたような表情してたような気がしたけど…。
「今日貴女たち異邦人を呼んだ理由は聞いてるかしら?」
「はい…。簡単ですが吸血鬼について話があると…」
「えぇ、その通りよ。それで私からのお願いというのは、この国を襲う吸血鬼を見つけて退治してほしいということよ」
「えっと…少しよろしいでしょうか?」
「何かしら」
「吸血鬼のアジトがこの国を含めた周辺四ヶ国で見つかったっていうのがあるんですが、そういうことではないのですか?」
女王は私の話を聞いた後、一息ついて話を続ける。
「えぇ、違うわ。確かにその吸血鬼のアジトもそうだけど、私がお願いしたいのはその吸血鬼たちの頭よ」
「頭…ですか?」
「この国で情報収集してたのなら聞いたかもしれないけど、昔この国は吸血鬼を排斥した。そして、その生き残りが復讐しにきているのよ。その生き残りを退治してほしいのよ」
「陛下っ! そのような事まで話してもよろしいのですか!?」
「構わん。遅かれ早かれ知られる事だ」
過去の話を話した事に驚いた重臣であろうおじさんが女王様に問いかけた。
それより今の話が本当だとすると、各国にあるアジトは囮で、この国を襲うのが本命ってこと?
「それで、その吸血鬼の数はわかるのですか?」
「…一人だ」
「えっ…?」
「そのたった一人の吸血鬼に母上も祖母も殺められた…。しかも顔も変えているらしく、手がかりが全くないのが現状だ…」
女王様は右手で顔を抑えて辛そうな表情をする。
親の仇の足取りすら掴めていないのだ。
無理もないだろう。
「…すまない、話が逸れたな」
「いえ…」
「重ね重ねになるが、貴方たち異邦人にはその吸血鬼を退治してほしい」
「はっはい!」
「…我が国と関係ない者に頼むことをすまないと思っている…。だが私の代でやらねばあの子が…」
「あの子…?」
「なんでもない。話は以上だ。頼んだぞ」
「はい…」
女王様が洋鈴を軽く鳴らすと、先程の近衛兵が側に来て私たちを部屋の外まで案内した。
退室した私たちはそのまま城門まで案内され、城の外に出た。
「アリス、どうする?」
「どうするって言われてもねぇ…」
少なくとも、兵士じゃ相手にならないぐらいの強さの吸血鬼ってことでしょ?
ということは、スキルレベルとかが高いってことだから、地道に街の人に【鑑定】掛けて探すとかしかないかなぁ…?
「六日で探しきれるかなぁ…?」
「手分けして探す?」
「ルカも【鑑定】あるんだっけ?」
「ある。ってことは鑑定しまくり?」
「たぶん正体隠してるだろうし、そういうのをやるしかないかなぁ?」
「問題は【偽称】系使われてたら、どうしようもない」
「【偽称】?」
ルカ曰く、名前やステータスを偽るスキルらしい。
恐らくレヴィの【偽りの仮面】と似たようなスキルなんだろう。
まぁそうだったらそうと諦めるしか…。
「でも怪しい人の候補としてはできるかもしれないし、逆に普通の人ならスキルも少ないからそういうので判断できるかもよ」
「ん、頑張ろ。でも二人して街探すのも非効率かも」
「じゃあ…ルカは街中で、私は郊外探してみようかな」
「え…」
ルカがあからさまに嫌そうな顔をする。
人混み嫌いだもんね…ルカ…。
「じゃあ昼間は私が街中で、夜は郊外っていう風に交換する?」
「ん、それなら大丈夫」
「その前に宿とか決めておかないとね」
「二人一緒の部屋になるところがいい」
「はいはい、じゃあそこ探さないとね」
宿…そこまで高くないといいなぁ…。
格式とかって難しい…。
こんなのでいいのだろうか…(不安




