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Nostalgia world online  作者: naginagi
第三章
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迷宮イベント①

 ポータルで転移された感覚から解放され、目を開くと周りが石作りの壁で囲まれた十字路となっている少し広い球状の広場に私はいた。

 周りを見てみると結構な人数がいたが、集合地点にいた人数よりも結構少ないように感じた。


「おいアリス、離れるなって」

「あっショーゴ」

「なんか人数少ないように感じるな」

「お姉さんもそう感じたわ~」

「バラバラの位置にスポーンとかなんでしょうかね?」

「てかイベント開始の案内とかないしなんだろうな?」


 確かにシュウの言うとおりだ。

 以前ならすぐ説明が始まっていたのに未だにモニターや運営が出てこない。

 すると何かが転移するような音がしたので上を向くと褐色肌をした少年が宙に浮かんでいた。


「こんにちはイベント参加者の皆様。黄道十二星座のおうし座を司るタウロスです。今回、私が管理する迷宮へようこそ」

「タウロス君っ!」


 私は名前を呼ぶが、タウロス君はこちらを一瞬だけちらっと見てすぐさま説明に戻った。


「今回は、参加者の人数から五つのグループに分けました。そして、イベント報酬として迷宮脱出報酬と貢献度報酬という風に分けています。

 迷宮脱出報酬はそのままの意味で、この迷宮から脱出する事が出来れば報酬を受け取る事が出来ます。そして貢献度報酬はイベント中の貢献度に応じて報酬が変わります。そして今回のイベントも七日間で行い、更にこのフィールドでは時間も加速しているため戻っても一時間ほどしか経っておりません」


 ということは今回のイベントは脱出ゲームってことかな?

 でも脱出ゲームで貢献度ってどういうことなんだろ?

 てか近くでさっさと始めろと喚いているプレイヤーもいるが、せめて話は最後まで聞こうよとは思うんだけど…。


「あぁ、そうですね一つ言い忘れていました。この迷宮を脱出するにはボスを倒す必要があります」


 そう言うとタウロス君は身の丈程もある大きな両刃斧を実体化させた。

 そしてタウロス君は冷たい笑みを浮かべ広場に集まったプレイヤーたちを見下ろしていた。


「タウロス…君…?」

「さて、何人脱出できるのでしょうかね? それと私は一日はここから動きませんのでご安心を」


 タウロス君の言葉に舐められていると頭に来たのか、何人かのプレイヤーがタウロス君に襲い掛かった。

 その時私は初めてタウロス君に会った時の事を思い出した。


『へぇ~…ってことはタウロス君って結構強いの?』

『そうですね……十二星座の序列で言えば私は戦闘型なので上位に入るとは思いますが、我々で競った事はないので細かい序列はわかりませんね』


 私は自分でもどうしてかわからないけど、咄嗟に声を上げて叫んだ。


「タウロス君に近づいちゃだめ! 彼は十二星座の中で戦闘型なの!」

「はっ?」


 タウロス君に襲い掛かったプレイヤーの中で私の声に反応した人は何を言っているんだという顔をするが、その表情はすぐさま青ざめることとなった。

 タウロス君が持っていた両刃斧がどんどん大きくなり、既に大きさが三メートルを超えていたのだ。


「全員後ろの通路に後退しろっ!」


 この声は団長さんの声!?

 私は固まっていたクルルの手を引っ張って後ろに後退した。

 ショーゴたちも団長さんの声に反応して後退を始めていた。

 クルルの手を引っ張りながらぱっと後ろを振り向くが、襲い掛かったプレイヤーたちはあまりに彼に近づきすぎたせいか、方向転換して逃げようとするがどんどん大きくなっていく両刃斧の射程から出れていない。


「このイベントでは狩る者と狩られる者はすぐ入れ替わるのですよ」


 タウロス君はそう呟き、巨大化した両刃斧を彼は振り回すと、射程内にいたおよそ十人程襲い掛かったプレイヤーたちがその両刃斧の餌食となった。


「一…撃…だと…!?」


 誰が言ったかわからないが、土煙が消えてタウロス君のいる場所を見ると先程襲い掛かったプレイヤーたちの姿は見えなかった。

 おそらくあの斧の一撃でやられたのだろう。


「あんなのありかよ…」


 通路に退避したプレイヤーたちは何人も青ざめた顔をしてタウロス君がいる場所を見つめている。

 タウロス君は先程の宣言通りにあそこから動くつもりはないようだ。

 今はその事だけが救いだ。


「くそっ! あんな化け物がボスとか運営舐めてんのか!」

「あんなのに勝てるわけねえだろ!」


 確かに愚痴を叫びたくなる気持ちはわかる。

 でも運営が攻略不可能になるようなイベントをするだろうか?

 ならば何かしらの方法でタウロス君を弱体化できる方法があるのではないだろうか。

 私と同じ考えに至ったのか、周りで声が上がる。


「この迷宮内にあのボスを弱体化できる手段があるかもしれないぞ! それを探すぞ!」

「しかもあいつは一日は動かないって言ってんだ! 今の内に探すぞ!」


 そう叫ぶと皆一斉に動き出して移動し始めた。

 私は移動する前にタウロス君をもう一度見つめる。

 私が見つめていることに気付いたのか、彼は少し微笑んだ。

 それが何を意味するのかは私にはわからないが、少なくとも彼は悪意で私たちを攻撃しているのではないと感じた。

 立ち止まっているそんな私を、ショーゴは手を掴んで通路の奥へと引っ張って行った。


 通路はいつまで経っても風景が全く変わらずに石造りの壁が続いた。

 そのため自分たちがどこにいるのかが全くわからない。

 幸い自分たちが動いた場所はマッピングされるようになっているため、最初の地点からどれぐらい動いているかはわかる。

 でも私は今でもタウロス君と戦いたくないと思っている。

 他の人からしたら何を馬鹿な事を言っていると罵られそうだけど…。

 気持ちが落ち込んでいる私の頭をリンが優しく撫でてくれた。


「アリス、そんなに落ち込まないの~」

「うん…」


 移動している途中に銀翼と会った私たちは、状況把握のため合流する事にした。

 リンから聞いたところによると、銀翼はバラバラではなくギルド単位で同じグループに分けられたと言うのだ。


「それにしても十二星座がボスのイベントとはなぁ…」

「確かおうし座と言ったな。それに君はあのおうし座の事を良く知っているように見えたが、知ってる事があれば教えてもらえないか?」

「はい…」


 私は最初に彼と会った時に教えてもらった事を銀翼を含む皆に話した。


「なるほど…。だからおうし座が戦闘型ということを知っていたのか」

「はい…。それにグループって言っていたのでおそらくタウロス君は分体だと思います」

「何故そう思うのだ?」

「彼は【分体】【多重並列意識】【高機能情報処理】のスキルを持っているので、本体でなくても同等の力を発揮できるため本体が出てくる必要はないからです。それに今回のようにボスを倒すイベントの場合ですと本体は出てこないかなと…。あくまで推測ですが…」


 私は冷静に考えてタウロス君があの時少し微笑んだのは、本体ではなく分体だから気にする必要はないというメッセージだったのではないかと考えた。

 私が躊躇すると思ったための措置だったのだろうか…。


「それにしてもおうし座で迷宮か…」

「ショーゴ何か気になるの?」

「いや、おうし座で迷宮と言えばクレタ島と思ってな」

「クレタ島?」

「クレタ島って言うとあのクノッソス迷宮ですか?」


 ショーゴの言葉にエクレールさんが反応する。


「あぁ、それに名前がタウロスだしまぁ間違いないだろ」

「ミノ『タウロス』ということですか?」

「まぁそういうことだろ。となると弱体化させる方法は何か関連してるはずだけど、覚えてるのは短剣を使ったぐらいなんだよなぁ…」

「短剣が弱点ということですかねぇ…?」


 私はそこら辺には詳しくないので口を挟めないが、どうやらそういう話が関係あるらしい。

 私もそういう神話系をもう少し調べておいた方がいいかもね。

 でも短剣を突き刺すとしても、タウロス君に近づくのは容易ではないと思う。


 とりあえず安全地帯を探すため通路を進んでいると、道中にモンスターが湧き始めたのでそれらを倒しながら進んでいる。

 モンスターはミノタウロスやスケルトンといったのが出てきて、倒すと素材の他にキャンプイベントと同じように食材や調理器具などもドロップした。

 そのため私が手を出すとドロップしなくなってしまうため、手を出さないでいた。

 他にも通路の端っこに採取や採掘ポイントが点在しており、ランダムで薬草などの素材を取る事が出来た。

 ということは安全地帯もあるということなので、私たちはそのまま通路を進んで探した。


 すると最初の地点よりは小さいが百人程度が拠点にできそうな広めの広場に出た。

 そこには先に到着していたであろうプレイヤーたちが、ドロップで手に入れたものを使って拠点を作っていた。

 私たちも同様に拠点を作って今後どうするかを相談する事にした。


 私たちは全員でショーゴPT六人と銀翼四十一人の合計四十七人であり、その中で三PTを未だ開拓していない方角の探索、三PTをモンスターを倒してドロップアイテム集めというふうに半々に分けて活動を行うことにした。

 まだ確実な情報がないため、タウロス君が動きだす前に少しでもマップ開拓を行うために機動力と戦闘力が高いPTになるように編成を行った。

 私もマップ開拓のPTに行くはずだったが、採取持ちが私ともう一人しかいなかったため無くなりやすい回復アイテムを補充する意味で私もそちらに回った。

 まぁおかげでリンと同じPTを組む形になったんだけどね。


「アリスと一緒のPTなんて久しぶりだわ~」

「そうだねー」

「お姉さんもアリスちゃんと同じPTがよかったわ~」

「それは私もですよっ!」

「君たちまで同じにしてしまうと魔法使いの割合が大きくなってしまうのでね…すまんが分かってくれ…」


 まぁ【狩人】スキル持ちの私がいる時点で戦闘できるメンバーが一人減るため、そこにリンが入ったのはわかる。

 でも他にも魔法使いを多くしてしまうと魔法無効とかのスキルを持ったモンスターが出てきた場合対処しずらくなってしまうため、最高でも二人という形にしてある。

 と言っても私はエクレールさんに言われるがままにPT編制されたんだけどね。

 でも二人で四十七人分の回復アイテムかぁ…。

 一杯取らないといけないね…。

ようやく三回目のイベントです。

ハロウィンイベント? いえ、知らない子ですね。

こっ今後やりますよ(目を反らし

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― 新着の感想 ―
「私を」や「我々を」ではなく、「ボスを」と言いますか・・・ 討伐必須のボスが別にいるのかな?
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