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1話 18回目の春



それは、ある日のこと。

なんの変哲もない小さな村で起こった。




その小さな村の名前はゴアス。

小さいながらも人々の活気に満ち溢れているいい村だ。それに今日は18の春を迎えた青年達を祝福する宴で、村はとても賑わっている。




その中でもすこぶる活気付いていた青年がいた。


彼の名はルイ。

ルイ・ヴェルヘン。愛称はルイかヴェルだ。



彼は期待と不安でいっぱいだった。大きな夢を胸に抱いて―――





「これで晴れて私達も成人ね、ヴェル」


ゴアス村の宴の模様仕物の一つ、囲い火に目をやりながら、俺の隣で座るマリナは言った。


ちらっと横目で見ると赤く燃え上がる炎の明るく照らされた彼女の横顔が見えた。


背中のまん中までで切りそろえられた髪。今は暗闇と明りのせいで赤く見えるが、普段は綺麗な栗色だ。そして相変わらず整った顔立ち。こんなヘンピな村でよくこんな美人が生まれたなとつくづく俺は思う。


俺とマリナとは腐れ縁という仲だった。たまたま同じゴアスに生まれ、ゴアスの村で育った。



「……ヴェル?話、聞いてる?」


なにも答えない俺を不思議に思ったのか俺顔を覗きこむ。


「いや…考え事しててな」


「ヴェルが考え事?ウフフ、なんか柄にあわないなぁ」



そう言うとマリナは人差し指を口に当てる形で笑った。


くそっ、動作一つ一つが可愛らしいぞっ。

少し前までは俺の肩まで身長が届かない位にチビだったこいつが、こんなにも魅力的に成長するとは思わなかった。


気を取り直して少し反論してみる。


「俺だって考える時は考える。悩む時は悩むさ」


「ごめんなさい、真剣に考えこむヴェルがなんだかおかしくって」


そしてまた笑う。


「では18回目の春を迎えたルイ・ヴェルヘンの悩みとは何かな?」


急に紳士口調になり、俺に質問をしてくるマリナ。


「いや…悩みというより願いっていうのか?」


「願い?」

「俺らは今日18になったんだ。つまり自由になったって訳だろ?これから村に残って仕事するのもよし、自由を求め冒険者になるのもまたよしだ」


俺らの村では18になるまでは村からは出てはいけない掟になっている。

しかし今日俺らは晴れて18になった。自由になったという訳だ。


「…ヴェルはどうするの?」


「冒険者になるに決まってる」


マリナからの質問に、俺は即答した。


「世界は広い!それも俺らが想像している以上にだ!」



少し興奮状態の俺は珍しく頬を紅茶しながら続けた。


「でも俺はその世界を知らない。何せこの村を出たことがないからな」


そういえば、ここをでようとして長に捕まって、こっぴどく叱られた事もあったっけな。


「世界を知りたい。だから冒険者になりたい。…と思う」


それが俺の今の心境。


俺の話を、今もなお燃え続ける炎を見つめながら聞いていたマリナは嬉しそうに笑った。


「フフ…ヴェルがそんな事思ってたなんて、私知らなかったなぁ。でも…そっか…あのヴェルがそんなに…」


なにか遠くを見るような目をしたマリナだったが、不意に自分の顔を俺の顔に近づけ俺の目をじっと見つめる。


マリナの花のような甘い香りが俺の鼻をくすぐる。


「なっ、なんだよ」


「真剣なんだね。…決めた。私も一緒にいくわ」


マリナの突然の言葉を俺は最初理解ができなかった。


「ちょ…ちょっと待て。何もお前まで付いてくる必要はないんだぞ?」


「あのね、ヴェル。これは私の意志なの。誰の指図でもなく。ヴェルに付いていきたい、ただそれだけなのよ」


そう言って、マリナはにっこり微笑んだ。

「…お前って本当によくわからない奴だな」


「いい?ヴェル。女の子は不思議な生き物なのよ」


「そうなのか?」


納得したような納得してないような…

でもマリナらしいからいいか。


―――――――――――――――


宴が終わった頃…


それから私達は村をいつ出るか話し合う事にした。


「出発は明日にでもにしたいな…」


早く村を出て、世界を見たい。

その一心で彼は急いでいた。時間が惜しい、と。


「ヴェルってば張り切りすぎだよ?村の外にいる魔物達から身を守る術だって分からないのよ?ヴェルってばめんどくさがってサボるし…」


「あれはつまらないし生温い。だったら自己流で剣技を覚えた方がいいに決まってる」


「まあ、ヴェルが強いのは分かるけど…」

確かにヴェルは強い。

村で起こった大人達10人の大喧嘩を一人で棒きれ一本、しかも無傷で止めた事だってある。


でもやっぱり魔物と人間とでは違う。棒きれ一本での戦いが通じる相手ではないと思うし。


「私達、持ち合わせがないのよ?武器なんて持ってないし第一お金なんて…」


「むぅ……」


言い返す言葉がないのか黙り込むヴェル。


「もうちょっと準備してからでも…」


遅くない、と言いかけたその時、


「そうだ!いい事思い付いたぞ!」


「キャッ!?」


ぴょんと座っていた椅子から飛び跳ねるヴェル。


でも私は逆に驚いて、椅子から落ちてしまった。


「あいたたた…もうっ脅かさないでよ!」

打ちつけた腰をさすりながら、いまだ椅子に座らずにいるヴェルに怒る


「悪い悪い」


ヴェルは苦笑しながらも、私に手を差し伸べた。その手を握って立ち上がる。


こういう所は優しいのよね、とポケーっとしていると、


「…いつまで手を握ってればいいんだ?」

と、ヴェルに言われて自分の手を見ると、ヴェルの手をつかんだままでいた。


私は思わず、顔を真っ赤にして手を引っ込めた。


「フッ、変なマリナ…」


と微かに微笑を口に浮かべるヴェルはとてもかっこよかったりした。


「べ、別に変じゃないわっ。それよりも何か思い付いたんでしょ?」


私は慌てて話を軸に戻した。

このままいったら、話し合いどころじゃなくなっちゃう。


「?まあいいか。そうだな、いい事を思い付いたんだ。勿論マリナも乗ってくれるよな?」


不敵に笑う彼は何かしでかそうとしている。


そうだ、これがヴェルなんだ――

私はそんなヴェルを…


「勿論よ。去るときぐらいは何か大きな事をしなきゃ」




かくしてルイの冒険物語は始まったのであった。


~キャラクター紹介~


【ルイ・ヴェルヘン】

18歳。田舎の村出身。

肩までの黒い長髪で少しハね気味。むっつりした顔をしている。

優れた身体能力と悪知恵、ハーレム属性をもつ。

面倒くさがりやだが、約束は必ず守り、弱者には手を差し伸べる。

面倒くさがりな面から時折見せる優しさのギャップからか、彼に好感をもつものは多い。


【アンナ・ファルージャ】


18歳。

栗色の髪を背中の真ん中までのばしている。ストレートだが若干はねている。

田舎村出身で髪の色が栗色というのは珍しい事だが、本人は全く気にしていない。

運動能力はそこそこだが、少し天然でなにもないところでコケたりする。

意外頭は良く、覚えた事は忘れる事はない故に魔術の才があると村のみんなに噂されている。


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