第1章 その2 ストリートアーミー
ぞろぞろと店の外に出た男達。ただならぬ雰囲気に、通行人達が視線を送る。
アルベルトが、クルッと振り返り話し始めた。
「それで?どうしたいんだ?俺達と喧嘩でもしたいのか?」
ボスのボブは、ニヤリと笑って答えた。
「喧嘩?お前らは一方的にぶちのめされて、金をはらうだけだ。今すぐ金払えば少しは優しくしてやる」
ヴィンスとアルベルトは、互いに目を合わせて笑うのを堪えた。
「そっかーー。金払うのもやられるのも嫌だから、抵抗するよ。お前とやれば良いか?ボブさん。」
明らかに挑発的な態度を取り始めるアルベルト。
「てめぇ……」
ボブは堪忍袋の緒が切れて、アルベルトに殴りかかった。
ブォーーーン
豪快に空を切る、ボブのパンチ。
アルベルトは、華麗にかわしてボブの懐に入って、背中に手を回してぽんと叩いた。
「ほぉ…さすがボスだなボブさん。すげーパワーだ。喰らったらヤバそうだ。」
「ぐっ…なんだお前、今のは?かわすのが上手くても俺は倒せねーぞ」
ヴィンスは、それを見て目を丸くして驚いた。
「なんだこいつ、今のでアルベルトとの実力差がわからんのか?」
逆上したボブは、大振りのパンチを振り回しアルベルトに襲いかかった。
「オラーー!!!」
「……仕方ねぇなぁ」
ドゴン!!
バタン
アルベルトのハイキックが、ボブの顎に炸裂。
そのままボブは膝から崩れ落ちた。
「て、てめぇ!!!」
1人の不良が、拳銃をアルベルトに向けた。
「やめておけ。」
ヴィンスが、静かに不良に近付き不良の拳銃に手をかけた。
「痛っ……」
その場にいた全員、何をしたかわからなかった。しかし気付いた時には拳銃はヴィンスの手に渡っていた。
「これ以上は、やめておけ。からかって悪かったな。俺達は軍人だ。命のやり取りにするなら手加減は出来ない」
シーーーーン
「わ、わかりました!!すみません!!酒代、俺達に奢らせて下さい!!」
最初に絡んできた不良が、見事なまでの降伏で叫んだ。
「え?いーの?じゃあ、お言葉に甘えて」
アルベルトは、ニカッと笑いヴィンスの背中に手をやり店内に戻って行った。
「マスター、悪かったなー。話し合い終わったよ。一旦コーラをくれ」
マスター「はい、コーラですね……って、早っ!!もう終わったんですか?」
ヴィンスはコーラを受け取るとにこやかに答えた。
「あぁ、物分りのいいヤツらで良かったよ」
マスター(……アイツらが?物分りいい?わけないだろ)
2人が続けて飲んでいると、アンダードッグも店に戻ってきた。
ボブ「アンタたち軍人だそうだな?なんで、この街にいるんだ?」
アルベルトは、ボブの顔を見ると少し驚いた様子で答えた。
「おぉボブさん。もう起きたのかタフだな〜俺はA国の兵士でな。助っ人で来たんだが、はしゃぎ過ぎて謹慎中なんだよ。このヴィンスとな」
「!!!!?A国の兵士!?ますます意味がわからん。敵国だろ?」
ヴィンスが額に手を当てて首を横に振った。
「アルベルト、言うなよ。仕方ないなー。 大きなプロジェクトがあってな。助っ人に来て貰ってるんだ。安心しろ俺はこの国の軍の少佐だ」
ボブは、しばらく思考停止した。
そして……
「少佐?ヴィンス……んーーー。まさかとは思うがヴァンダイン??」
ヴィンスは、驚いてグラスを置いた。
「え?俺を知ってるのか?そうだ。ヴィンス・ヴァンダインだ」
アルベルト「おぉ、ヴィンス有名人なんだなー」
ボブは拳を握り、うつむき身体を震わした。
「鬼じゃねーか!俺は鬼に喧嘩を売っちまったのか! マスター!!年代物のコニャックがあったな!ボトルでくれ!この人達と飲む」
ヴィンスは、ポカンと口を開けた。
「わからん、わからん。なんでそうなった?」
コニャックを注ぎながらボブは、嬉しそうに話し始めた。
「俺達、不良の中でさ軍に行くヤツも居るのよ。その中でも飛び切り強えーヤツらが口を揃えて言うんだ。ヴィンス・ヴァンダインと、その右腕レオン・フォックス。その人達にだけは喧嘩を売るな。 人間じゃねーってな」
「ぶっ、あははははは人間じゃねーってよ。ヴィンス!レオンも!これは多分褒められてるぞ」
アルベルトが、面白がってヴィンスの肩に手を置いた。
1910年
テレビもラジオ放送も無い時代。
彼らの噂は、一般人にまで轟いていた。
「あの鬼達と戦うな。挑みたくば敬意を払い、教えを乞え。二度と挑まなくなるから」




