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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第3章 少しづつできた距離

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風向きは、変わる

少しづつ、幼なじみふたりの間柄に変化がある事を、周りも薄々気づき始めてきた。


美久は、弓道部をやめることにした。

最初に打ち明けたのは親友たち。

これにはまゆみも洋子も戸惑いを隠せない。

「どうして…?大珂くんと何かあったん?」

「もしかして別れたとか??」

「ないない、それはない。だけど、ちょっと距離は置こうと思って」

「もしかして田原くんが原因…?」

洋子が心配層に尋ねる。皆田原の異常な執着には違和感を抱いていたのだ。

「まぁないとは言いきれないな。あの子私のこと目の敵にしてるし。でもそれだけやなくて、去年やった巫女のバイトもまた声かけてもらったし、最近お父さん腰痛めちゃって。みかん畑の手伝いもせなあかんから」


部活休みの日曜日、美久は弓道場をこっそり訪れ、室内を隅々まできれいにした。

神棚に手を合わせ、感謝を伝える。

「楽しい時間をここで過ごさせていただき、ありがとうございます」

大珂はメキメキと上達し、来年は個人戦でもインターハイを目指せそうなレベル。勉強の成績も学年トップクラスだし、文武両道を貫いている。

自分がその邪魔をしたくはなかった。


部室に荷物を取りに行くと、男子の部室からライバル?田原が出てきた。

美久に気づくと、ペコッと頭を下げる。

「どしたん?今日部活休みやろ?」

「道着持って帰るの忘れて…洗濯したくて」

「私、部活やめたから」

「えっ!?」

「大珂のことよろしくね」

「…もしかして僕が原因ですか?あんなこと言ったから…」


ううん


美久は静かに首を降る。

「これは、私の問題やから」



朝の登校も、別々にした。

今までどちらかの時間に合わせていたのを、それぞれのペースにした。

朝の弱い大珂は、本来ギリギリに行きたい派なのだ。

美久はそれを知っていたし、夜遅くまで勉強しているのもわかっていたので、自分は先に行くことにした。


その様子をみて、双方の親たちは大慌て。

「つきあってるんやなかったのか!?」

「もしかして別れてもうたんか?」

それを子どもたちは否定。


ある日、大珂の留守中に美久は若松家に行き、事情説明に伺った。

そして若松父に熱く語りかけた。



その夜



「大珂、ちょっとええか」

風呂上がりにキッチンのダイニングテーブルで呼びとめる父。

「…大学、行ってええよ」

「マジで!?」


でも何で急に…


「昼間、美久ちゃん来たんや」

「美久が??」

「おじさんに一生のお願いって。大珂がどれだけ真剣な思いをもって進学したいのか、おじさん知ってるの?って。あんなすごいプレゼンされたら叶わんよ。オレにとっては娘みたいにかわいいあの子に頼まれたら、断れん」

「そんなこと…」

大珂は、胸が熱くなった。

「ちゃんと礼いうとけよ。言っとくが、あの子を泣かすようなことがあったらこの話は無しやからな」


バタン


父親は静かにキッチンを出ていった。


『美久、ありがとう。あのガンコ親父が折れてくれた。絶対一発で合格するから』


ピコン


返信


『大珂なら、大丈夫。応援してる』


短いからこそ、伝わる想い。



ひとりの時間が増えて、美久は変わった。


「最近美久ちゃん、なんか大人っぽくなったね」


洋子やまゆみにはそう言われるようになった。


芯のある大人の女性へと変貌を遂げつつあるよう。



決して大珂と近くにいて疎遠ということもなく、時々作ったお菓子などを差し入れたりした。



ところがどうしたものか


男というのは、そんな彼女の優しさにアグラをかいて。


大珂は徐々に彼女を空気のように、軽く考えるようになっていった。

それは、受験のストレスから逃れたい防衛反応なのかもしれない。


美久の気持ちを無視するように、弓道部の男子たちとカラオケに行ったり、夜中まで遊び歩いたり、タバコを吸い出したり好き放題するようになった。

高校3年生になり部活を引退すると、受験勉強に専念するどころか、完全にグレて堕落し出した。

反抗期と言ってしまえばそれまでだが、美久と会うこともしなくなっていた。


「あんなやつもうやめなよ」

親も友人たちも、口を揃えてそう言い出した。

普通に考えたら自然消滅状態だ。

それでも、美久の気持ちは変わっていなかった。


「風向きは、いずれ変わるから」

好き勝手やって自分のことを見向きもしなくなった、連絡すらしない、近所にいながら会いもしない彼氏に、愛想を尽かすことなく想い続けた。


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