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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第2章 幸せのはじまり

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18/24

夕暮れ

帰宅後。

一旦自宅に戻り私服に着替えると、前日作って冷やしておいたケーキを持って若松家へ。

道路を挟んで斜め向かい。2階の窓からはおたがいの部屋の明かりを認識できる距離。


台所で冷蔵庫を開けて確認。

「よかった、形大丈夫そう」

手作りケーキを冷やす裏技、タッパーを逆さまにして蓋を土台にして容器部分をカバーにすると、取り出す時に崩れにくい。

百均でかったケーキ用の箱に入れリボンをつけてデコレーション。

誕生日用ケーキだからね、と見た目も華やかに。


普段から行き来しているので、ピンポンチャイムなどもせず外から声をかける。

「大珂ーっ、来たよー」



ドタドタドタ



階段を駆け降りてくる音。

出てくるまでのわずかな待ち時間も胸踊る。



ガチャ



「いらっしゃい」


ブルーのざっくりニットと、ゆったりめのジーンズ。

海色の、青が似合う人。


「今日はみんな出かけてる、クリスマスとか年末年始用に牡蠣の注文めっちゃ入ってるんやて」


ということは今日はふたりきり…


今までもそんなことはあったが、つきあってからだとドキドキ感半端ない。



2階の大珂の部屋。

角部屋、西向きの窓。

冬の日暮れは早い。

傾きかけたやわらかな日差しが、レースのカーテン越しに差し込む。


「はいこれ、バースデーケーキっ」


部屋中央のテーブルの上に箱を置き、そーっと中身を出す。

「えっ、すごっ。お店で売ってるやつみたい」

「大袈裟」

長いろうそく1本と、小さいのを6本つけて16歳を祝う。

チョコペンで描いたネームプレートも飾って。

「ろうそくに火ぃつけよう」

そう言うと引き出しからライターを取り出す。

「えっ、なんでそんなところにライター?もしかしてタバコ吸ってたりするん??」

時々部室棟の裏でこっそりタバコ吸ってるやつもいるらしいが…と疑心暗鬼。

「ちゃうわ、おとんの借りといたんや」

「それならよかった。タバコのにおい嫌いや」


ゆらりゆらり、温かい火が揺れる。


♪HappyBirthday to you〜


手拍子と歌で、にっこりお祝い。

「おめでとー」


ふっ、ふーっ


一度で消えず、何度か息を吹きかける。

「口膨らますとリスみたい」

かわいい、と美久が笑う。

茶色い瞳とやさしい顔立ちは、小動物っぽい。

「結構こんだけのろうそくの火消すのむずいで」

「ケーキ切り分けたげるね」

やわらかいので大きめのスプーンですくってお皿へ。


こんなんしてもいいかな…


一瞬迷ったが、試しに挑戦。

16歳の記念や。

「はい、大珂あーん」


パクっ


条件反射か、意外とすんなりいけた。

「うまっ」

「ほんまに!? よかった」

さすがに恥ずかしいからあとは自分で食べてもらう。

「ろうそく立てて誕生日祝ってもらったのなんて何年ぶりやろ?クリスマス近いからって大体ケーキ一回でまとめられてた」

「あー、クリスマス近い生まれあるあるやねぇ」

大珂は好きなものやおいしいものは、結構パクパク早食いするクセがある。幼い時からそうだ。

その習性を知っている美久は食べっぷりをみて、お世辞じゃなく本当においしいと思って食べてくれるのがうれしかった。


「ゲホゲホッ」

「大丈夫!?」


手作りティラミスのトラップ。

それは表面にたっぷりかかったココアパウダー。

急いで食べると粉が喉を直撃する。

「ごめん、粉かけ過ぎたかな??」

「いや、オレががっつき過ぎた。だってめっちゃおいしいから止まんなくて」


いひひ、と無邪気に笑う。

ほんと、そういう笑顔子どもの頃から変わってない。

やんちゃで、おおらかで。

若松家おにいちゃんや弟とも昔は遊んでたけど、一番気が合うのが同い年の大珂で。

あまえん坊の美久はどこに行く時もくっついてまわっていた。


「ふふっ、口元にクリームついてる。子どもみたい」

そっと指で拭う。

目と目が合い、視線が重なる。

見つめられると、ドキッとする。

「美久…ありがと」

あらためて言われると、照れてしまう。

「そ、そや。実はプレゼントもあるんやで」

カバンの中からゴソゴソ、小さな包みを渡す。

「開けていい?」

「うん」

リボンをはずすと、中には天然石のブレスレット。

「これ、美久が作ったん?」

「そう。12月生まれの誕生石、ラピスラズリとターコイズをメインに。大珂は青が似合うからちょうどいい組み合わせかなって。サイズ合わなかったらまた直すね」

「つけてみていい?」

「もちろん」

袋から出し手首に付けると、ジャストフィット。

「すげー、ピッタリ」

そりゃあ毎日みてたら大体目分量で手首の太さもわかる。

「よかった」

「めっちゃうれしいっ、ありがとう。これお守りにするわな」

「私がもらったネックレスよりも全然高価じゃないけど…」

「そんなん、こっち手作りやで?一点ものの価値やん。っていうか美久がこんなん作れるとは知らんかった」

「お姉ちゃんがさ、ちょっと前作っててんけど。あの人飽きっぽいから道具とか本とか置きっぱなししてて、みたらおもしろそうやったから」



ギュッ



「最高の誕生日をありがとう。大好きやで、美久」

「私も…大珂のこと大好き」

誰もいない家。

誰もいない部屋。

人目を気にすることない空間で、ふたりは座ったままかたく抱き合った。

目を閉じ、キスをして。

静かな時がゆっくり流れる。

夕暮れの温かいオレンジ色の光が、2人を包みこんでいた。




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