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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第2章 幸せのはじまり

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17/20

楽しみな冬休みがやってくる

期末テストも終わり、冬休みを前に美久に意外な声がかかった。


「お正月に巫女のバイトしてくれへんか?」

「へっ?」

自宅に近所の大避神社の関係者が直々に足を運び、直談判。

母親と話をしている。

「お母さんも若い頃やったのよねー。私は今でもやりたいんやけどさすがに年齢でアカンって。あははっ」



お母さん…

年齢もやけどそのみかん色に近い茶髪じゃちょっと


娘、苦笑。


「予定してた子が家庭の事情であかんようになってしもて。美久ちゃんなら見た目も年齢もバッチリやし、もちろんバイト代はちゃんと払うから」


日程は大晦日からお正月三ヶ日明けの4日までの5日間。ちょうど弓道部も練習休み期間だ。

5日の日に弓始めの射会があるので、行けるっちゃ行ける。


「どうしようかな…」


こういう時、大珂に聞きたくなる。

昔から、何かあると幼なじみ頼み。

基本他力本願。


「とりあえず一晩考えさせてください」



その夜。

さっそく大珂の部屋に転がりこみ相談する。

「ええんちゃう?バイト代もらえるのもうれしいし。オレなんかおとんの仕事いくら手伝ってもただ働きやで」

「そうなんよね、数万円のお年玉…貯めといたら大珂と卒業旅行とかできるかな〜、なんて思ってたり」

「それに巫女の衣装って弓道の道着とも似てるし。オレ毎日顔みにいくわ」

「ほんまに!」

「あぁ、弓道部メンバーも招集したるわ」


彼氏が来てくれるならと、明日承諾の連絡をいれることにする。

「そうや、終業式の日大珂の誕生日。学校から帰ったらケーキ持ってくるから、お祝いしよね」

「うん、楽しみにしてる」

クリスマスにほど近い12月21日がバースデー。ギリギリの射手座。

「射手座で弓道やってるってめっちゃぴったり」



プレゼント何しよう

私すてきなネックレスもらったしな…



そんな悩みもまた幸せの証。


「クリスマスイブも、一緒に過ごそうな」

「練習もあるけどね」

「終わってから、今度は美久の部屋行くわ」

なんとなく、おたがいの部屋を交互に行ったりきたり。

美久母を筆頭に、行き来する頻度が増えていることもあり、双方の親もふたりの関係の変化に気づき始めていた。

それを温かく見守っている。



終業式。

それは冬休み前の最高にうれしい日。

前の晩に美久は心をこめてティラミスを作り、冷蔵庫に入れておいた。

『HappyBirthday Taiga』

の文字をチョコペンで書いたチョコレートプレートと、ろうそくも用意して。


終業式を午前中に終え、昼食後弓道場に集まると大珂の誕生日を祝いサプライズが用意されていた。

「16歳のバースデーオメデトウ!」

練習前におやつを食べて、みんなで歌をうたい拍手。

なんてノリのいい部員たち。

人数が1年生のほうが多いので、2年生のほうがあきらめてつきあっている。

練習を終えると、みんな正月どうする?初詣は?とか、休みを存分に楽しむ気満々だ。

「美久ちゃんの巫女姿も楽しみ!元旦、みんなで初詣行くから。写真撮らせてね♪」

洋子が心待ちにしている。

「絶対似合うよねー、長い黒髪後ろでまとめて朱色の袴姿って、めっちゃいいっ」

巫女に女子たちはあこがれのご様子。


この日は朝から雨。

自転車はあぶないので、悪天候の時はバス通学をしている坂越のふたり。

帰る頃には雨がやみ、日が差してきた。

バス停までふたり並んで歩く。

「晴れてよかったね」

「だからオレは晴れ男やねん。誕生日なんやから天にも祝ってもらわないと」

道路と歩道の間の境目、コンクリートの縁石の上を歩く美久。

「ふふっ」

「どしたん?」

「これに乗ると大珂の身長にちょっと近づける。背の高い大珂をいっつも見上げてるけど、目線の高さが同じになる」


よっとっと


「ほら、濡れてるからあぶないで」

そっと、手をつなぐ制服での帰り道。



こんなちょっとしたことがうれしくて


毎日好きが少しづつ増えていって


どんどん大好きになって


こんな気持ち初めてなの



大好きよ


とってもとっても


大珂がいるだけで、


心があったかくなる


幸せが積み重なっていく



ずっとずっと


こうしていられるよね?


高校時代が


一生続けばいいのに




バスを待つ間空を眺めていたら、うっすら虹が表れた。

「すごーい、誕生日に虹なんてそうそう見れないし」

「これからの未来に幸あれってことかな」

「そうちゃう〜」


吐く息が白い、冬の日。

冷たい風が吹くも、ふたりの心は温かかった。





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