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幼女になった落第聖女ですが、騎士団で女神と呼ばれています〜騎士公爵様がお探しの最愛はすぐ側に〜  作者: 海空里和
第二章 騎士団潜入

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騎士団潜入②

「セシリアがどうやって呪いをかけたのかはわからない。受けた本人は魔物によるものだと思いこんでいるくらいだからな」


 お兄様の意図がわからずソワソワするも、わたしは堪えて話を聞く。


「呪いと違って毒を使うなら、必ず何かしらの方法で接触してくるはずだ」

「でも……わたしがどうやって騎士団長様を守るの? それに、わたしが側にいたら警戒して何もしてこないとかないかしら?」

「リーサは死んだと思われている。まさか子どもになっているなんて思いもしないだろう。だから、リーサを騎士団に預ける」

「ええ!?」


 驚くわたしを置いて、お兄様が立ち上がる。魔道具がたくさん並ぶ棚まで行くと、指差しながら何かを探し始めた。


「あいつの側が一番安全だし、リーサも聖女からあいつを守れる。一石二鳥だろ? あ、あった」

「だから、わたしが騎士団長様をどうやって守るの!?」


 棚から瓶を取り出したお兄様に、わたしも立ち上がり声をかける。


「側にいるだけでいい」

「はい?」


 意味がわからないという顔をすれば、お兄様がわたしの視線に合わせるように屈む。


「これは見られているんだったな」


 わたしの首にかかったネックレスをはずすと、お兄様は小さな石がついたネックレスをわたしにつけ替えた。


「仕上げはこれだ」


 棚から持って来た瓶の中身をわたしの頭にふりかける。


「ちょ、お兄様、つめた――」


 みるみるわたしのラベンダー色の髪が茶色に変わる。


「……すごい」


 お兄様から渡された手鏡をのぞきこみ、目をぱちくりとさせる。元聖女であるお母様から譲り受けたラベンダーの髪はセシリア様も覚えていたから、お兄様はその懸念を払拭したのだ。


「このネックレスは?」

「お前を守るお守りだ」


 何かは教えてくれないのか。

 お兄様は片目をパチンと閉じると、人差し指を唇に当てた。


「お兄様のことだから、きっとすごい魔道具なんでしょうね」

「まあな」


 お兄様はにかっと笑うと、わたしを抱き上げてソファーに戻る。


(もう、また子ども扱いして!)


 視線が高くなり、改めて部屋を見渡す。いろんなことがあって動揺していたが、広くて立派な部屋だ。研究室の師長の執務室なのだから当然なのだが、お兄様がすごい地位にいるのだと改めて実感する。


「そういえば、今年の年始めも帰ってこなかったのは仕事で忙しかったから?」

「そんなところだ」


 わたしを抱えたまま、お兄様がソファーに座る。お兄様、小さくなったわたしを楽しんでない?


「この問題を解決して、来年は帰りたいなあ」


 わたしの肩に顔をうずめ、お兄様がぎゅうっと抱きしめる。


「わたしもお兄様に帰ってきてほしいから、なんでも協力するわ。計画を聞かせて」

「さすがだな。話が早い」


 お兄様はそう言って笑うと、わたしを膝の上から下ろす。わたしに向き直ると、計画の概要を話し始めた。


「まず、父上と母上にも協力してもらい、リーサは死んだことにして、葬儀もする。そうだな、セシリアの言う通り、自殺かもしれないということにしておこう」

「葬儀……」

「心配するな。娘が死んだことを認められず届けを出すことをためらっていることにしてもらえば、時間は稼げる」


 不安な顔をしたわたしの頭を、お兄様が優しくなでた。


「お前は、最近見つかった父上の愛人の子で俺の義理の妹としよう」

「え……お父様かわいそう」

「大丈夫だ。あいつに説明するときの設定だ。あいつは口が堅いから、口外しないだろう」


 お兄様の差すあいつとは、アスター騎士団長様のことだろう。


「本当のことは話さないの?」

「ああ。騎士団は女性立ち入り禁止だろう? 昔、あいつを巡って女同士の争いが起きたから、本人が禁止にしたんだ」

「えええ?」

「だから子ども姿なら大丈夫だろう」


 お兄様もモテるらしいが、妹を溺愛しているという噂のせいでわかりやすく近寄る女性はいないと聞いた。わたしは虫除けに使われているだけの気がするけど。

 とにかく、騎士団長様を巡って争いが起きるなんて、よっぽど素敵な人なんだろうなとわたしは思った。公爵家と縁を持ちたい家は多いだろうし。


「呪いまでかけられて、かわいそう」


 まだお会いしたことのない騎士団長様を思えば、不憫に思えた。国のために命をかけて働いているというのに。


(騎士団はかっこいい人が多いのね)


 わたしの頭にはライアン様が浮かんだ。


「お兄様、その……ライアン様のことは?」


 ライアン様の呪いのことは知っているのだろうか。騎士団長さまと一緒にライアン様を助けたい。おずおず話すわたしに、お兄様は目をぱちくりとさせた。


「ん? ああ。リーサと顔見知りだったか。まさかあいつもリーサが子どもになったなんて疑わないだろう。髪の色も変えたしな」

「ん?」

「ん?」


 お互い話がかみ合わず、首を傾げる。


「だから、女性禁止にしたのはあいつだが、今のリーサは子ども姿だしばれることもないだろうから、心配するなって――」

「待って……お兄様……」


 右手を前に出し、お兄様の言葉を遮る。

 わたしは話を整理をして、お兄様に恐る恐る尋ねた。


「アスター公爵騎士団長様って、ライアン様のことなの?」

「ん? もうわかってるもんだと思っていたが」

「説明されてません!」


 まさかライアン様が騎士団長様だったなんて。

 わたしはお兄様を咎めるように叫んだ。

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