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幼女になった落第聖女ですが、騎士団で女神と呼ばれています〜騎士公爵様がお探しの最愛はすぐ側に〜  作者: 海空里和
第五章 繋がる想い

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繋がる想い②

「ん……朝?」


 翌日、わたしは食堂で目を覚ました。テーブルに置いていた両腕から伏せていた顔を上げ、周りを見る。食堂内には料理人たちの寝息だけが響いている。みんなはテーブルに突っ伏して、まだ眠っているみたい。


 昨日騎士たちが帰って来ないのを心配して、みんなでこの食堂で待っていたのだ。


(待っているうちに寝落ちてしまったのね)


 同じテーブルで眠るクレイブさんを見て、わたしは昨晩のことを思い出す。


 ♢ ♢ ♢


「魔力が淀んだまま魔物討伐をするのは危険だから、必ずここに帰ってくるはずなんだが……」


 いつもドンと構えるクレイブさんが珍しく焦った顔で言った。


「こんなことは初めてですよね」


 先ほどまでクレイブさんと言い合っていたテオまで深刻な表情だ。


「何かあったのか……」

「でも、転移装置があるんですよね!?」


 考え込むクレイブさんにわたしまで焦りだしてしまう。


「……転移装置は汽車につけられているからな」

「一部の騎士さえ戻って来ないとなると、最悪全滅も……」

「やめて!!」


 テオの縁起でもない話に、わたしは思わず声を荒げた。


「みんな強いもの。簡単にやられるはずがないわ! それにライアンならもしものとき、真っ先に部下を逃がすはずよ。騎士が誰一人として帰って来ないってことは、無事な証拠よ!」


 わたしの希望が入った根拠だが、ライアン様なら絶対に自分を盾にしてでも部下を逃がすはずだもの。

 悲しいけど、彼はそういう人だ。騎士たちの話を聞くに、自ら先陣を切って戦いに臨むようだし……。

 ふるふると震えた手を祈るように組み合わせる。


「……そうだな。おれたちは待つことしかできないが……あいつらが帰ってきたら温かい料理をすぐに食べられるように準備していよう」

「うん……」


 クレイブさんが落ち着かせるように頭を撫でてくれて、わたしはようやく息を吐く。


「聖水も一人一本は携帯しているんだ。大丈夫だろう」

「そう……ですね」


 クレイブさんはそう言ってにかっと笑ったけど、ライアン様だけは聖水を飲まないようお兄様から言われている。


(みんなにスコーンを持たせたけど……)


 わたしはいまだ自分に聖力があると実感できていない。お兄様のことも自分が作るジャムの味も信じられるのに、そのことだけはまだどうしても信じられない。聖女として落第のレッテルを貼られたわたしは、どうしてもそう思ってしまうのだ。

 でも、それでも。どうかライアン様の助けになりますように――。


 ♢ ♢ ♢


 あれから「おれたちが倒れたら意味がない」とクレイブさんはみんなに食事をとらせた。その片づけを終えても誰一人部屋に帰ることはなく、騎士のみんなを待ち続けたのだ。

 わたしは椅子から降りると、みんなを起こさないようにそーっと食堂を出た。


 外に出れば、太陽の光が水平線から漏れ出ていた。いつもなら朝食の準備で厨房に向かう時間だ。


「あっ……ジャムの仕込みがまだだわ」


 昨晩は騎士を待つうちに寝てしまったため、朝食のジャムを作り損ねていた。


「……必要ないわね」


 騎士たちが帰って来ないのなら、そんなものは意味がない。それに昨日の夕食も準備されたままだ。


「ライアン様……」


 セシリア様の暗殺計画がなくとも、ライアン様は常に命の危険と隣り合わせなのだ。何もできない自分が情けなくて泣けてくる。


「おーい!」


 ぼーっと外を眺めていれば、賑やかな声がこだましてきた。


「あ! リーサちゃんだ!」

「あ!? ほんとだ! 待っててくれたの!? なんで帰ってくるのがわかったんだ?」

「リーサちゃーん! ただいま~!」


 次々に聞こえてくる元気な騎士たちの声。

 わたしは弾かれるように顔を上げた。


「みんな……!」


 騎士団の敷地内にも汽車専用の停留所がある。騎士のみんながその方向から寮があるこちらに手を振りながら歩いて来るのが見えた。


「おかえり……!」


 気づけばわたしは走り出していた。騎士のみんなも走り出す。合流すればみんながワッとわたしを囲んだ。


「リーサちゃあん! 俺たちの女神!」

「会いたかったよー」

「みんな体調は!? 怪我はしてない!?」


 のほほんと笑うみんなを見渡して確認する。


「ごめんね、心配かけて。ほらお前たち、リーサちゃんが心配しているだろう」


 騎士たちの後ろからかき分けるようにルース様が歩み出てきて、みんなが一歩下がる。


「実は今回、魔物の魔気を受けても全員の魔力が淀むもことがなかったんだ」

「え!?」

「俺たちも原理がよくわかってないんだけどね、それでそのまま一日で討伐を終わらせてしまおうということになったんだ」

「そう……だったんですね」


 ルース様の説明に驚きながらも返事をした。


「副団長、きっとリーサちゃんのおやつのおかげですよ!」

「そうそう、あのスコーンは俺たちに活力を生み出してくれたよなあ!」

「ええ?」


 騎士たちが口々にスコーンを賞賛する。わたしは目を丸くした。


(本当にわたしのジャムが魔気を払って……? ううん、みんな聖水を携帯しているもの)


 わたしは首を振るとみんなを見た。


「聖水は? もう全部飲んでしまったの? みんな元気そうだけど、追加はいる?」


 魔物討伐から帰るといつも殺伐としていたはず。今日はみんな明るい表情だ。


「そういえば……休憩でスコーンを食べたくらいで、聖水は飲んでいないな」


 ふむ、とルース様が顎に手をあてて考える。


「だから、リーサちゃんのスコーンパワーですよ!」

「さすが俺たちの女神!!」

「いやいやいやいや……」


 興奮した様子でルース様に話す騎士たちを落ち着かせるように、わたしは両手を前に出して上下させる。

 魔物を討伐してきたからか、みんなまだ気が昂っているような?


「ははは。本当にそうかも。団長も絶好調だったし」

「ライアンは!?」


 ライアン様の姿が見えないことにわたしは不安になった。

 まさか本当にみんなだけ逃がして一人で戦ったりしていないだろうか。それともいつものように一人で呪いに苦しんでいるのではないだろうか。次から次に嫌な想像しか出てこなくて、わたしはルース様に詰め寄った。


「今回、一気に魔物を片付けたからね。魔法省へ報告に行っているよ」


 笑って答えるルース様は嘘を言っていない。じいっと見つめれば、頭をぽんっと撫でられた。


「もうすぐ帰ってくると思うよ。待ってる?」

「うん……! あ、みんな、クレイブさんたちがご飯の準備をして待ってるよ!」


 わたしは撫でられた頭に手を置くと、ルース様を見上げて返事をした。

 わたしの呼びかけに、騎士たちの元気な雄叫びが轟く。


「うおおおー! 腹減ってたんだあ!」

「つっかれたー!」

「じゃあ、食堂へ行こうか」


 ルース様が手を叩いて合図すると、騎士たちはぞろぞろと食堂のほうへと歩いていった。

 わたしはみんなを見送り、その場でライアン様が帰ってくるのを待った。


 しばらく立っていると、目の前が急に光り出した。


「なんだ、リーサ。こんなところで何しているんだ?」


 目の前の光から現れたのはお兄様だ。その腕にはがっちりとライアン様の腕が組まれている。


「ライアン!?」


 驚いてライアン様に目をやれば、彼はされるがままといった顔だ。


「ああ、こいつを待っていたのか。おいで、リーサ」

 

 お兄様はそう言って笑うと、ライアン様を捕まえているのとは反対の手でわたしの腕を取った。瞬間、ぐらりと視界が歪む。この感覚は知っている。転移魔法だ。


「お兄様、説明ぃぃぃ~!」


 急に渦へ飲み込まれたような感覚に抗いながら、わたしはお兄様に向かって叫んだのだった。

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