↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/44

42 父との会話



 第二王妃ミラベルとの和解の翌日。

 私とアイリス姉さまは、ヴィルクリフの私室にやってきていた。


 ヴィルクリフは、ソファに腰かけたまま、私達を見ない。

 私達を、手招きすることもなく、立ち上がることもなく、ただひたすら、手元にある本に目を落としている。


「お父様。私達、明日にはこの国を立ちます」


 アイリス姉さまの言葉に、ようやくヴィルクリフは顔を上げて、私達二人を見た。


 しばらく沈黙が続いた後、ヴィルクリフはアイリス姉さまを見る。


「どうしても行くのか」

「はい」

「この国を捨てるのか」


 その言葉に隠されているものに、アイリス姉さまは思わず笑みをこぼす。


「私はどこにいても、お父様の娘です」


 目を見開くヴィルクリフに、アイリス姉さまは、私の手を取って、続ける。


「ヴィオレッタもね」


 私は、久しぶりに、アイリス姉さまが父と呼んだ男を、真正面から見つめた。


 男は一年前よりも、なんだか年を取ってしまったような気がした。

 新緑の色の瞳は濁り、その下には、深くクマが刻まれている。


 私が彼を見ていると、男は眉根を寄せ、いぶかしむようにつぶやいた。


「なんだその顔は」


 男は私に向かって、言葉を発している。


「人間みたいじゃないか」


 そう問われたので、答えることにした。

 私はもう、答えを持っているから。


「私は人間です」


 男の顔に、驚きが浮かび、次いでなにかをこらえるような、不思議な表情に変わった。


「そうか。そうだったか……」


 ギュッと右手を握りしめる手に力がこもったので、右手を振り仰ぐと、アイリス姉さまが優しくほほ笑んでくれる。


「ヴィオレッタ。俺の視界から、勝手に出ていけ」


 それだけ言うと、父は本に目を戻してしまい、もう、私達を見なかった。


「……お父様。またね」


 それだけ言って、私はアイリス姉さまの手を引いて、扉の外に出た。

 もう私があの人に会うことはないのかもしれないけれど、これでいいのだ。


 二人で手を繋ぎ、王宮の廊下をとぼとぼと歩いていると、アイリス姉さまが笑いだした。


「ヴィヴィも罪作りね」

「そうですか?」

「あの人、泣いてたわよ」


 アイリス姉様は、首をかしげる私に、くすくす笑っている。

 その言葉が、なんとなくくすぐったくて、私はそのよくわからないむずむずとしたものをごまかすように、アイリス姉様の腕にしっかりと抱き着いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
――――――――――――――

こちらの作品もよろしくお願いします。

★訳あり伯爵様と契約結婚したら、義娘(六歳)の契約母になってしまいました。
訳あり伯爵様 漫画1巻 
コミックス 好評発売中です

★疲労困憊の子爵サーシャは失踪する 〜家出先で次期辺境伯が構ってきて困るのですが!
書籍化作品です。

★契約結婚生活が幸せすぎて毎日夫に感謝していたら夫からプロポーズされました
本編6話完結。全部で7000字弱、読了時間14分です。

――――――――――――――

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。