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アイスクリームの魔法を手に入れた!~森の魔女と、魔吸の禁術~  作者: 悠然やすみ
第二章「アイスクリームの魔法を手に入れた!~森の魔女と、魔吸の禁術~」(第一章を飛ばしてこちらから読むことも出来ます)
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第三話「禁術使いを突き止めろ!」 10

「この指輪はね、前に旅先で仲良くなった商人が僕に餞別としてくれたものなんだ」


 彼は掌に乗せた指輪をメルエッタちゃんの方に差し出しながら説明した。


「……これを私に?」


 一方、予想もしていなかっただろう贈り物を目の当たりにした彼女は、キョトンと紫色の瞳を瞬かせて呟く。


「うん、この装飾品は大昔の賢者によって魔力の込められたマジックアイテムらしいんだ。でも、全く魔法に縁のない俺が持っててもしょうがないからね。どんな力が秘められているかも分からないし。でも、魔法使いの君が持っていれば、いつか役に立つかもしれないだろう?」


 遠慮せずに受け取っておくれよ。そう言って、ナクトゥスさんはメルエッタちゃんのほっそりとした右手を取ると、その掌に指輪をギュッと握りしめさせた。


「……ありがとう」


 感謝をか細い声で伝える少女の色白の頬は、ほんのりと朱色に染まっていた。


「綺麗な指輪だね。いいなー、メルエッタちゃん。早速、付けてみなよ」


「え、いや」


「うんうん、きっと似合うと思うよ」


 私とナクトゥスさんに促され、メルエッタちゃんはぎこちない手つきで指輪を右手に填めた。開かれた右掌の中で、日の光を浴びて燦々と輝く宝石を、彼女は食い入るように見つめる。


「似合ってるよ、メルエッタちゃん。ちょっと羨ましいかも」


「あ……配慮が足らなかったね、ごめん」


 別に他意のある発言では無かったのだが、ナクトゥスさんは心底申し訳なさそうな面持ちで、


「じゃあさ。ミズホちゃんにも今度の機会に、何か持ってくるよ」


「本当ですかっ。でも、やっぱり悪いし……」


「いいや、旅で集めたガラクタは山ほどあるんだ。逆に荷物が減って大助かりだよ」


「……分かりました。それじゃ、楽しみにしてますねっ」


「あまり期待はしないでおいてね。でも、君に似合いそうな物を必ず探しておくよ」


「ううん、期待してますねっ」


「あはは、プレッシャーかかるなぁ」


「だって、ナクトゥスさんって、すっごくオシャレですし」


 私は彼の身につけている装飾品の数々に視線を移しながら、


「その羽帽子とか、ペンダントとか。とても似合ってます」


「……それじゃ、僕はそろそろ行くよ」


 会話をする私達をじっと横から眺めていたクラールさんが、おもむろに口を開いた。


「あまり一ヶ所に留まり続けたら、城の誰かに発見されちゃうかもしれないからね」


 彼は私達に軽く手を振って去っていく。


「王子、良い一日を」


 ナクトゥスは遠ざかっていくクラールさんの背にそう声を掛けた後、


「王子、誰かに付きまとわれているのかい?」


 と、私に訊ねてきた。


「はい、まぁそんな感じです」


「へぇ、大変なんだなぁ」


「そうだ、ナクトゥスさん」


 メルエッタちゃんと街を歩いていた目的をふと思い出し、私は言った。


「ナクトゥスさんは、今、都で起きている通り魔事件をご存じですか?」


「通り魔……ああ、話だけは聞いたことがあるよ」


 彼は神妙な顔つきで頷く。


「なんでも、罪もない人々を見境無く襲っているという話じゃないか。恐ろしくて、僕も最近は夜の外出を控えているんだ」


「その通り魔について、他に知っていることはありませんか?」


「ん、いや。噂以上のことは何も知らないよ」


「そうですか……」


 やはり、彼も私達の求めている情報を知らないようだった。心の中で、私はがっくりと肩を落とす。


「けど、どうしてそんな事を聞いてくるんだい?」


「私達、通り魔を捜し出そうとしているんです。それで、売り子をしながら聞き込みを」


「え?」


 ナクトゥスさんが驚いたように声を上げ、


「そんな、危険だよ。今すぐに止めた方がいい」


 と、クラールさん同様に私達を諫めようとする。


「危険は承知ですっ……でも」


 私は両拳を強く握りながら、只ならぬ決意を込めた口調で言った。


「私達には、引くに引けない理由がありますからっ」


「いや、別に引くことは出来ると思うんだけれど……」


「……どうやら、何か事情があるみたいだね」


 メルエッタちゃんのツッコミを余所に、ナクトゥスさんが真剣な面持ちで訊ねてくる。


「良かったら、話してくれないか?」


「はい、実は……」


 かくかくしかじか。これまでの経緯を、私は彼に説明した。


「なるほど……それは災難だったね」


 渋い表情で、彼はうんうんと頷く。


「無実の罪を着せられて捕らえられて……無事に処刑されずに済んで幸いだった、というべきか。そりゃ理不尽だし、確かに腹が立つよなぁ」


「ぞうなんでずよぉ……もう、腸煮えくり返るって感じで。悔しいんです! 腹の虫が治まらないんです!」


「不条理な目に遭ったの、貴女じゃなくてアタシなんだけど……」


「……よし、分かった。調査に協力とまではいかないけれど、俺も街の知り合いからさりげなく情報を集めてみるよ」


 ナクトゥスさんは重々しく頷いた。


「売り子をしている時、中央広場にはよく行くんだろう? 何か成果があったら、次に会った時に報告するよ」

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