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アイスクリームの魔法を手に入れた!~森の魔女と、魔吸の禁術~  作者: 悠然やすみ
第一章「アイスクリームの魔法を手に入れた!」(2013年11月3日に完結済みです)
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第三話「コンテスト開幕!」 12

――気に入って、もらえたのかな?


 期待と不安の入り交じった視線を、私は目の前の人物に送る。しばらくの間、メイド長はコーンを握ったまま無言で硬直していた。両側の審査員達の眼差しも、彼女へと向けられている。大広間中の全員が、恐らくは一人の審査員の一挙一動に注目しているだろう。


 やがて、メイド長は眼前のアイスクリームを凝視しながら、信じられないような表情で独り言のように呟いた。


「こんな美味しい食べ物……私、初めてだわ」


 驚くべき彼女の言動を何とか聞き取れたらしい、私の周囲にいる人々の間から、大きなどよめきが湧き起こった。やがて、それは波のように大広間の後方へと伝わっていく。


「それは本当ですか?」


 料理長から焦った口調で訊ねられ、メイド長は夢見心地のような顔つきで小さく頷くと、目の前のアイスクリームを再びペロペロと子犬のように舐め始める。


「むぅ」


 その様子を眺めていた将軍が、くぐもった声を上げた。


「彼女が参加者のデザートを誉めたのを最後に聞いたのは、一体何年前の事だったか……」


「さあ、お二人もどうぞっ!」


「うおっ!?」


 既に残りの分を作り終えていた私は、勢いよくコーンを持った手を将軍に差し出す。彼は濃い紫色をしたアイスを訝しげに見つめながらも、それを受け取る。私は料理長にも苺味のアイスクリームをすぐさま手渡した。手にコーンを握りしめた両名は神妙な面持ちで顔を見合わせた後、ゆっくりとアイスの部分をかじるように食す。


 そして、次の瞬間。




「うまい、うますぎるぞおおおおおお!」


「こ、これはスゴいいいいいいいいい!」




 大広間を揺るがすほどの大音量で、二人はほぼ同時に絶叫を上げた。両者はそのまま、かぶりつくような勢いでアイスクリームを口一杯に頬張りながら、それぞれ歓喜の声を上げる。


「ほっぺが落ちそうな、とろけるような味わいじゃ!」


「素材の味を活かし、更にミルクのコクをも存分に引き出している! しかも……まさか容器の部分も食べれるというのか!? 何と素晴らしい!」


「きっと、王様もお気に召すに違いないわ!」


 次々と三名の口から飛び出してくる大絶賛に、私は口元が綻ぶのを抑えられなかった。会場のあちこちからも、仰天と落胆の声が上がっているのが分かる。ふと視線を横に向けると、クラールが満面の笑みを浮かべて私を見つめているのが分かった。自然と、私も微笑み返す。そして心の中で、私は勢いよく右手を宙に突きだし、そして叫んだ。




――アピール、大成功だよっ!






 時は流れ、参加者全員の審査が終了した。しばらく大広間で待たされた後、席を外していた審査員達が続々と机に腰を下ろしていく。いよいよ、コンテストの結果発表が始まるのだ。


――ううっ、緊張するよっ。


 果たして、自分はコンテストに優勝出来ているのだろうか。国王と対面し、自らの作ったアイスクリームを振る舞う権利を頂けるのだろうか。『国王もお気に召すに違いない』という最上級の賛辞を頂けたとはいえ、まだまだぬか喜びは出来ない。様々な感情が私の中でうねりを上げ、自ずと組んでいた両手に力がこもっていく。


 やがて、立ち上がったメイド長が、手元の紙を見つめながら声を張り上げる。静かな場内に、彼女の凛とした言葉が響きわたった。


「それでは、これより第二十五回トロスベリア・デザートコンテストの優勝者を発表致します。見事、大勢の参加者の中から最も優れた菓子職人に選ばれたのは……」


 メイド長が一旦言葉を切り、先ほどよりも重くピリピリとした静寂が辺りを包み込む。誰もが息を押し殺しているのが、何となく分かった。緊張した雰囲気の中、彼女は一度大広間に視線をさまよわせた後、先ほどよりも強い口調で声高らかに告げた。




「……ミズホ・ハルカワさんです!」




 次の瞬間。両脇に控えていた城の者達の間から、賛辞の声と共に大きな拍手が沸き起こる。少し間をおいて、落胆した顔の参加者達もほぼ一斉に手を叩き始めた。審査員達もまた、優しげな表情で私に対して惜しまない拍手を送っているのに気づいた。彼ら全員の視線を一身に浴び、私は恥ずかしさから自分の頬が真っ赤になっていくのを感じる。しかし、それと同時に、私の胸中にはだんだんと熱い感情がこみ上げてきた。自分がコンテストに優勝したという実感がようやく湧いてきた時、私はもう自分を抑えられなかった。顔は自然と綻んでいたし、何だかじっと立ち尽くしているのがむず痒くなってくる。


 そして。




「……やったあ!」




 喜びの声を上げながら、私は両手を勢いよく掲げ、地面を蹴って宙に飛び上がった。瞬間、一層激しさを増した歓声の中、私の脳裏にチラツいたのは、果物屋の厳つい主人と物腰丁寧な青年の姿。二人への感謝の念が、私の中で確かな言葉となっていく。


――ドーサックさん、クラールさん……私、やりましたよっ!


 こうして、私は悲願だった『デザートコンテスト優勝』を見事に果たしたのだった。

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