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アイスクリームの魔法を手に入れた!~森の魔女と、魔吸の禁術~  作者: 悠然やすみ
第一章「アイスクリームの魔法を手に入れた!」(2013年11月3日に完結済みです)
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第三話「コンテスト開幕!」 8

 私は城を目指して馴染みある通りを駆け抜ける。まだ太陽が昇って間もない時間帯なので、気温は穏やかで風も爽やかだ。道中、知り合いになった店の方々やお客さん達に声を掛けられる。


「ミズホちゃん、おはよう」


「今日がコンテストの日よね」


「しっかり頑張るのよ」


「ありがとうございますっ! 頑張ります!」


 人の温かさというものをしみじみと実感しながら、私はしっかりと返事をしつつ目的地までの道のりを走り抜けていく。そして視界の奥には、とうとう巨大な城が姿を現した。物事は何でも勢いが大切である。このまま一気に城の中まで突っ切ってしまおう。私は何となくそう思い、叫びながらラストスパートを掛けた。


「てやあああああああ!」


「だから、強行突破は止めろって!」


「これで何回目だ!」


 しかしながら、私の全力疾走は進路上に割って入ってきた二人の兵士に寄って力ずくで阻まれてしまった。鍛え上げられた腕で呆気なく押し返され、私は少しよろめきながら後方へ下がる。兵士達に眼差しを向けると、私は思わず声を上げてしまった。二人とも顔見知りだったからだ。


「あっ、貴方達は! 門番一号さんに門番二号さん!」


「おいこら!」


「勝手に変なあだ名を付けるな!」


 衛兵達は何故か憤慨している。そう、彼らは何を隠そう、私がこの世界にやってきてからずっと城の門を警備している二人組だったのだ。よくよく考えると、この人達以外に門番をやっている兵士は見た事がなかった。


「一号さんも二号さんも、もしかして休暇がないんですか?」


 私がパッと思い浮かんだ疑問をそのまま口にすると、彼らは揃ってギクッとした顔つきになる。


「そ、そんな訳あるか」


「たまたま当番の時にお前が面倒を持ち込んできてるだけだ」


「そうですか……」


 何となく二人の事情を察して、私はとても申し訳ない気分に陥った。


「やっぱり私を誤認投獄しようとしたせいで、昇進が遠のいてしまったんですね」


「いや、全く関係ないんだが」


「というか、お前のやった事は明らかに犯罪だぞ」


「ごめんなさい……でも、安心して下さいっ」


 彼らを元気付けようと、私は出来るだけ明るい口調で告げた。


「私が城で働くようになった暁には、お二人が休暇を貰えるように尽力します」


「いやいや、城で働くとか寝言は寝て言え」


「もういいから、とっとと帰れよ」


「そうは問屋がおろしません」


 私はバッグを開くとゴソゴソと中を漁り、参加証を取り出した。それを兵士達の眼前に差し出し、私はふんぞり返る。


「えっへん。この紙が目に入りますか」


「入るわけないだろ」


「馬鹿か、お前」


「まあまあ、よく見て下さい」


 彼らは眉を潜めて首を伸ばし、参加証を眺める。途端に二人の顔がひきつった。


「え、まさかお前、コンテストに出場する気なのか」


「無謀にも程があるぞ」


「ふふふふ、それはどうでしょう。とにかく、私には城に入る正当な理由があります。さあ、通して下さい」


 返事は同時に、しかも即答、その上ハモっていた。


「やだ」


「やだ」


「ええっ!? どうしてですかっ!?」


 まさか参加証を提示しても中へ入れてもらえないなんて思ってもみなかった。私の悲痛な叫びに対し、門番一号と門番二号はどこか冷めた表情で互いに顔を見合わせた後、再び私をジト目で見やる。


「お前が城に住むとか勘弁してくれよ……」


「絶対トラブル起こす気だろ」


「そんな事ないです。トラブルは向こうから勝手にやってくるんです。私は関係ないです」


「嘘つけ!」


「どう考えてもトラブルメーカーじゃねえか!」


「うう……」


 このまま城内に入れないとなれば、遅刻で即失格だ。


――どうしよう。


 状況を打開する策も思い浮かばずに途方に暮れていた、まさにその時である。助けはあっさり現れた。


「なんだ。やけに外が騒がしいと思ったら、やっぱりミズホちゃんじゃないか」


「あっ! クラールさん!」


 城の方から爽快に手を振りながら歩いてくる青年の姿に気づく。私は歓喜の声を上げながら手を振り返した。クラールさんはどんな女性でも思わず惚れ惚れしてしまうような微笑みを浮かべ、


「おはよう。今日も良い天気だね」


 と、上品な挨拶を口にする。


「おはようございますっ」


「昨日はよく眠れたかい?」


「はい、グッスリでした」


「ハハハ、君らしいね」


「えへへへ。でも、クラールさんが来てくれて助かりました」


 王子が城に入るのを許せば、流石の二人も口出しは出来ないだろう。期待を込めて、私は兵士達の方に振り向く。


――あれ?


 そして、奇妙な光景に遭遇した。兵士達は何故か、拳をわなわなと震わせて顔を真っ赤に紅潮させていたのだ。




 すると、次の瞬間。




「この不届き者め!」


「今度こそ牢屋にぶち込んでやる!」


「ひあっ!?」


 二人はどこからともなく取り出したいつぞやのロープを、再び私の体に巻き付け始めた。


「な、何でこんな事になるんですか!?」


「黙れ!」


「今度という今度は許さんぞ!」


 訳が分からず叫ぶ私を、兵士達は一喝する。


「この期に及んで王子を慣れ慣れしく『さん付け呼ばわり』するとは!」


「縛ったまま火炙りの刑にしてやる!」


「あーれー!」


「き、君達! 止めないか! さっきの呼び方にはちゃんとした理由が……」




 そんなこんなで、王子の取りなしもあり、私は何とか城の中に入る事が出来たのでした。

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