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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
第2章:管理者の実地研修(フィールドワーク)

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第87話:神のアップデートと「レベル」の定義

西の森、深く静まり返った木々の中を、カイトとリアは進んでいた。

標的である『アイス・ウルフ』の縄張りに足を踏み入れたその瞬間、周囲の温度が数度、明確に低下した。

「……カイトさん。前方および左右。合計六体の魔導反応アイス・ウルフを捕捉。……嗅覚による解析により、すでに私たちの存在は検知されています。……迎撃プロセスの開始を推奨します」

「……ああ。……まずは一匹。……等価の天秤の照準精度を確認する」

カイトが魔導銃を構えようとした、その時だった。

世界が、静止した。

風に揺れる葉も、獲物を狙い今まさに飛び出そうとしていた狼の四肢も、すべてが氷のように固まった。

ただ一人、カイトの思考と、その傍らに立つリアを除いて。

「……何だ? ……リミッターを上書き(オーバーライド)するほどの広域干渉。……神様の登場か?」

カイトが空を仰ぐと、そこには実体のない「声」が、光の粒子となって降り注いでいた。

『――不自由を楽しんでいるようだね、管理者。……でも、ただポイントを貯めてスキルを上げるだけじゃ、この世界の住人ログとしては少し味気ないと思わないかい?』

「……味気ないだと? ……余計なデバッグは不要だと言ったはずだが」

『まあ聞きなよ。……君がこの不自由な身体で経験を積むたびに、魂がその器に馴染んでいく。……それを可視化してあげよう。……新しい拡張パッチ、「レベルシステム」の導入だ』

カイトの視界に、かつてとは異なる新たなステータスウィンドウが強制的にポップアップした。

【システム・アップデート完了:レベル概念の追加】

【個体名:カイト ―― 現在Lv.1】

【個体名:リア ―― 現在Lv.1】

【※戦闘行動による「経験値」の蓄積により、基礎ステータスおよびスキル出力が底上げされます】

「……レベル、だと? ……古典的なシステムだな。……器が大きくなれば、それだけ流せる魔力の上限(帯域)が増えるということか」

『その通り。……ただし、レベルが上がれば上がるほど、神の加護リミッターとの摩擦も強くなる。……君がどこまで「人間」として強くなれるか、楽しみにしているよ』

光の粒子が消え、世界が再び動き出した。

狼たちの咆哮が、数秒遅れて空気を震わせる。

「……カイトさん。……脳内に直接、情報の更新が。……私にも『レベル』というステータスが定義されました。……身体能力の最適化効率が、以前より明確に算出可能です」

「……いいだろう。……全能だった頃は無意味だった数値だが、今は一刻も早く上げたい『利益』だ。……行くぞ、リア。……まずはこの六匹を、レベルアップのための『素材』に変える」

「……了解。……物理干渉、開始します」

リアが地面を蹴った。

かつての秘書としての淑やかな動きではない。

獣人としての爆発的な瞬発力に、Lv.1という「器」のすべてを流し込んだ、猛獣の踏み込み。

「ガァッ!?」

アイス・ウルフの一匹が、自慢の反射神経で対応するよりも早く、リアの細い指先がその喉元に突き立てられた。

武器はない。だが、強化された爪が、狼の毛皮を紙のように切り裂く。

「……重力演算グラビティLv.2。……座標、リアの周囲。重力3倍」

【魔法発動:重力演算グラビティLv.2 ―― 燃料:自己魔力】

リアに飛びかかろうとしていた残りの五匹が、突如として増大した重力に圧し潰され、地面に這いつくばる。

座標指定型の弱点である「回避」を、リアが自らデコイとなって敵を誘導することで封じたのだ。

「……リペアLv.2。……魔導銃、出力固定」

カイトは『等価の天秤』を構え、重力で動けない狼たちの眉間を、一発ずつ正確にデバッグしていく。

ドォォォォンッ!!

一射。また一射。

かつてのような派手な爆発はない。

だが、確実に、冷徹に。

カイトの放つ弾丸は、神が与えた「レベル1」の限界性能を引き出し、アイス・ウルフの命を刈り取っていく。

最後の六匹目が沈黙した瞬間。

カイトとリアの体に、温かな魔力の奔流が流れ込んだ。

【ログ:アイス・ウルフ×6の討伐を確認】

【経験値を獲得 ―― レベルアップ!】

【カイト:Lv.1 → Lv.3】

【リア:Lv.1 → Lv.3】

「……ほう。……魔力の循環速度が上がったな。……リア、感覚はどうだ」

「……肯定します。……動体視力の処理速度が約15%向上。……また、肺活量と筋肉の弛緩速度に余裕が生まれました。……レベル3。……これだけで、これほどの『差』が出るのですね」

「……ポイントでスキルを上げ、戦闘でレベル(器)を上げる。……二重のハックが必要というわけか。……面白い。……神様が用意したこのゲーム、さらに攻略の効率を上げられそうだ」

カイトは鉄のプレートを握りしめた。

リペアLv.2で感度を3倍にしたプレートは、今倒した六匹の魔力を、十八匹分の実績として貪欲に吸い込んでいる。

「……感謝ポイントでの魔法強化と、経験値でのレベル上げ。……この相乗効果こそが、今の俺たちの最強の武器だ。……リア、次の群れを探せ。……日が暮れるまでに、二桁の大台へ乗せるぞ」

「……了解。……嗅覚スキャン、半径500メートルまで拡張。……ターゲット、多数捕捉。……『乱獲』を継続します」

紺色のジャージが、深緑の森の奥へと消えていく。

管理者の実地研修。

神が与えた「レベル」という新たなおもちゃを手に入れ、二人の「デバッグ」は加速する。

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