第61話:埋没した資産のサルベージと、組織の初動
「……効率が悪すぎる。……リア、三百人全員を一度に導くのは、管理コストの増大を招くだけだ。……まずはこの『群れ』を機能別に分断し、核となるリーダーを抽出する」
第二拠点のホール。カイトはジャージのポケットに手を突っ込み、怯える大人たちを「周囲探知Lv.2」で精密にスキャンしていた。
彼が視ているのは現在の姿ではない。脳内の言語野の発達、筋肉の付き方、そして魔力回路の残滓。
それらを解析し、過去の「正常な状態(最も有能だった頃)」を逆算して割り出していく。
「……アベル、前に出ろ。……それと、ガレット。……最後に、バルカだ。……指定した三名は、今この瞬間から他の者とは異なる役割を担ってもらう」
名前を呼ばれた三人が、震えながらも前に出た。
「……アベル。……お前の脳波には、高度な論理演算の痕跡がある。……王都の商会で帳簿係をしていたな? 知識があることで虐待されるのを恐れ、無知を装っていたようだが……、私の目は誤魔化せない」
「あ、あぁ……」
初老の男、アベルが崩れ落ちる。カイトはその額に手をかざした。
「事象復元――脳内の自己封印を解除し、かつての知性を呼び戻せ」
光が走り、アベルの瞳に理知的な輝きが戻る。
「……カイト様。……文字が、数字が……。……私は、また『人間』として数式を扱えるのですね」
「……お前は『カイト初等学院』の助教員だ。子供たちに文字と算術を叩き込め。……次に、ガレット。……お前の指先には、特有のタコと、微かな香辛料の染みがある。……宮廷か高級料理店で、包丁を握っていたな?」
痩せ細った女、ガレットが自分の手を見つめて震えた。
「……主人が毒殺され、連座して売られました。……料理なんて、二度と作れないと思っていました……」
「……今日からお前が、この拠点の全胃袋を管理する。……効率的で栄養価の高い食事をリペア(構築)しろ。……リア、彼女に必要な調理器具を空間庫から出しておけ」
最後に、カイトは無口で大柄な男、バルカを見上げた。
彼の身体には、奴隷の鞭跡に混じって、戦士としての「古傷」が刻まれている。
「……バルカ。……お前の筋肉の収縮と、重心の置き方は、明らかに実戦経験者のそれだ。……傭兵団の副団長クラスだったな。……折れた戦意をリペアしろ。……シルヴィアの下で、クラン『リペア・オーダー』の幹部候補として、連中を兵士に鍛え上げろ」
「…………御意。……この錆びついた命、カイト殿に捧げよう」
【検知:三名の「専門家」からの、存在定義をリペアされたことへの深い感謝:+15000 pt】
カイトは満足げにリストデバイスを操作し、組織図をアップデートした。
教育担当、調理担当、軍事担当。
「核」が定まったことで、ただの難民の集まりだった拠点が、急速に「組織」としての体裁を整え始める。
「……リア。これで管理の第一段階は終了だ。……私はこれから、彼らが使うための『教材』と『道具』の量産に入る。……一分も休ませるな。……資産を遊ばせるのは、私の流儀ではない」
「……はいっ! カイトさん!」
管理者の無双は、ただ敵を倒すことではない。
壊れた人生の中から「価値」を見出し、適材適所に配置し、一つの巨大な「機械」へとリペアしていくこと。
拠点の灯りが、かつてないほど力強く、夜を照らし始めた。
(第61話 完)
【現在蓄積リソース:310682 pt(感謝) / 7490 pt(悪意:残債)】
【所持金:金貨 72枚】
【ギルドランク:C】
【状況:幹部候補(教育・調理・軍事)を特定し、組織の基盤をリペア完了】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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