第39話:独占の代償と、新たな商談の影
カイトの手によって「物質創造」された平滑な街道は、街の経済活動を劇的に加速させていた。
わずか数日で、馬車による輸送コストは三割削減され、破損による損失はほぼゼロになった。商人たちはカイトを「奇跡の魔導技師」と称え、その足元には絶え間なく「感謝」のリソースが積み上がっていく。
だが、急激な「最適化」は、同時に既存の利権を貪っていた者たちの反発を招く。これもまた、カイトにとっては織り込み済みの「悪意」の回収プロセスに過ぎない。
「……ご主人様、外にまた『不純物』が来てるわよ。今度はギルドの役人と、見たこともない偉そうな服を着た連中ね」
シルヴィアが、窓の外を顎でしゃくりながら不機嫌そうに告げた。彼女は今、カイトから与えられた「高性能モップ(銀貨2枚で創造)」を使い、拠点のロビーを磨き上げている。
「想定内だ。……インフラを掌握すれば、必ず寄生虫が配分を求めてやってくる。リア、奥へ下がっていろ。……少しばかり、計算の合わない連中と話をしなければならない」
「はい、カイトさん。……でも、あまり怒らないであげてくださいね?」
リアの無垢な願いに、カイトは無表情のまま頷いた。怒るという感情はコストの無駄だ。彼はただ、数値を合わせるだけである。
拠点の重厚な扉が開くと、そこには街の商業ギルドの幹部と、領主の代理人を名乗る男たちが立っていた。彼らはカイトが独断で行った街道舗装を「不法な占拠」とし、管理権の委譲と、これまでの利益の八割を上納するよう要求してきた。
「……なるほど。あんたたちの主張を要約すると、『俺が投資し、俺が創造した資産を、あんたたちが無償で管理する』ということか。……商談としては、あまりにも知能指数が低いな」
「な、何を! これは街の公共の利益のための話だ! 一個人が勝手に道を塗り替えるなど、許されるはずがない!」
【検知:役人たちからの「傲慢な特権意識」と「私欲による悪意」:+1800 evil】
カイトは網膜に表示される「悪意」の蓄積量を確認し、冷徹に微笑した。
「公共の利益、か。……なら、あんたたちがこれまでその道を放置し、事故や遅延でどれだけの損失を街に与えてきたか、その『負債』の清算から始めようか」
カイトは「構造解析」によって割り出した、過去数年分の物流損失データを数値化し、魔法で空中へ投影した。視覚化された膨大な「赤字」のグラフに、役人たちは言葉を失う。
「この損失をあんたたちが今すぐ現金で補填できるなら、管理権の商談に応じてもいい。……できないなら、あんたたちはこの街の『不採算部門』だ。……切り捨てても、システムに支障はない」
カイトは一歩前に踏み出し、ジャージの袖を静かに捲り上げた。
「『悪を挫く力』を創るなら、対価は【悪意】。……あんたたちが持ってきたその腐った感情、……今すぐ、この街の『浄化費用』として換金させてもらうぞ」
カイトの瞳が、感謝と悪意の奔流を受けて青白く発光する。
不合理な要求を突きつけてきた権力者たちは、自分たちが挑んだ相手が「ただの魔法使い」ではなく、世界をシステムとして捉える「冷酷な管理者」であることを、身をもって知ることになる。
(第39話 完)
【現在蓄積リソース:10482 pt(感謝) / 7290 pt(悪意:蓄積中)】
【所持金:銀貨 10枚】
【ギルドランク:C】
【状況:商業ギルド・領主代理との対立開始】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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