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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
砂漠の国編

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第209話:旧王都の自動演算と、三人の連携

永続的な魔力濃霧が完全に晴れ渡り、数百年もの間、歴史の闇に沈んでいた旧王都『レムリア・フォール』の全貌が白日の下に晒されていた。

 

 カイトの四輪駆動車は、白銀の装甲を美しく輝かせる高級キャンピングトレーラーを牽引しながら、巨大な黒鉄の正門を潜り、崩れかけた大通りへと滑らかに進入していた。

 

 周囲に並ぶのは、かつて栄華を誇ったであろう石造りの宮殿や、苔に覆われた広大な市街地の廃墟群。

 

 人影は一切なく、ただ不気味な静寂だけが支配しているが、都市の地下深くに眠る防衛管理システムの最深部からは、大霊峰の魔力と異常同期したことによる、強力な防衛術式の駆動音がゴゴゴと地鳴りのように響いていた。

 

「……判定。旧王都外郭領内への進入を確認。現在、中枢コアの自動防衛システムは『広域警戒モード』へと移行している。周辺の魔力残滓から、間もなく第二段階の自動迎撃が作動すると予測。……車内の環境均質化を維持しつつ、進行する」

 

 カイトは衣服に汚れ一つない漆黒のジャージを纏ったまま、無表情でハンドルを握り、ダッシュボードの軍用高精度ナビゲーション端末のデジタル画面を見つめていた。

 

 外の世界は数百年の放置によって道路が陥没し、崩れた石材が散乱する最悪の路面状況だったが、四輪駆動車の最新鋭サスペンションがすべての振動を完璧に相殺している。

 

 車内は外界の埃っぽさやカビ臭い空気とは完全に隔離され、エアコンディショナーによる快適な二十四度の冷気と最上の平穏が保たれ続けていた。

 

「カイト様、お外の霧は消えましたけど、あちこちの建物の影から、なんだかリアたちをじっと見てる嫌な気配がします! いつでも飛び出せるように、準備しておきますね!」

 

 助手席のリアが、ジャージの袖をパタパタと揺らしながら、ピンと立てた耳を忙しなく動かして窓の外を警戒していた。

 

 ジャージのポケットから出るおやつでエネルギーを満タンにした彼女の肉体は、長時間の行軍を経てもなお、一切の疲労を感じさせない最高のコンディションを維持している。

 

「ふふ、本当にしつこい自動人形たちだわ。主人がとうの昔に滅びているというのに、ただ決められた命令のままに動くだけなんて、つくづく融通の利かない不備なシステムね。カイト、次の障害物はあそこかしら?」

 

 本革のローソファに深く背を預け、冷たい完熟ジュースのグラスを傾けていたエルザが、調律杖の先端で前方の広場を指差し、赤い瞳を鋭く細めた。

 

 外界のノイズから完全に隔離された贅沢な車内で魔力を万全に蓄えた真祖の彼女にとって、この廃墟に満ちる古代の殺意など、退屈しのぎの玩具に過ぎなかった。

 

 カイトの視線の先、王宮へと続く中央広場に差し掛かった瞬間、周囲の建物の屋上や壁の隙間から、ガシャガシャという無機質な金属音が鳴り響いた。

 

 姿を現したのは、旧王都の自動防衛機構が管轄する、数千、数万という膨大な数の『自動魔導弓兵オート・アーチャー』の自律人形たちだった。

 

 彼らは一斉に黒鉄の強弓を構え、その矢先に、大霊峰から流れ込んだ過剰な魔力を熱源として収束させ始めた。狙いは、広場に進入してきたカイトたちの車両である。

 

『――侵入者を排除。生命反応、および魔力源を感知。……標的をロック。全方位からの飽和一斉射撃を開始する――』

 

人形たちの赤い魔導眼が一斉に明滅し、空間が焼き切れるような熱量が広場全体を満たしていく。

 

「……判定。敵の感知システムは、こちらの『体温』と『魔力濃度』を基準に自動追尾を行う仕様。……これよりダミーの熱源を生成する。金貨数枚を提示」

 

カイトは懐から輝く金貨を数枚取り出し、正面の空間へと静かに提示した。

 

「……等価交換」

 

金貨がまばゆい光の粒子となって消滅した直後、カイトの前に現れたのは、ごく普通の『家庭用大型ハロゲンヒーター』の四角い機体だった。

しかし、これはあくまで一般的なリビング用の家電であり、このままでは数万の軍勢の目を欺くほどの熱量も、生命反応の魔力もない。

 

「……判定。このままではダミーとしての出力が圧倒的に不足。エルザ、この熱源の波長を拡大しろ。リア、配置と撹乱を委ねる」

 

「ふふ、そういうことなら私の得意分野だわ。カイトが用意したこの奇妙な箱の熱線……真祖の魔力で、都市全体を揺るがすほどの極上の標的に仕立て上げてあげるわ!」

 

エルザが妖しく微笑みながら、調律杖の先端をハロゲンヒーターへと向けた。

彼女はヒーターから放たれる赤外線の規則正しい熱の波長を瞬時に読み取り、自身の「真祖の膨大な魔力」をその振動へと完璧に同調させた。

ただの暖房器具の熱が、エルザの魔力によって何千倍もの熱量へと跳ね上がり、さらに彼女の強大な生命気配が上書きされる。広場の中心に、まるで「超巨大な竜が鎮座している」かのような、圧倒的な擬似生命熱源が完成した。

 

「お任せください、カイト様! エルザの姉様、それ借ります!」

 

リアが助手席から飛び出し、エルザの魔力によって真っ赤に激しく発熱・巨大な熱源と化したハロゲンヒーターの取っ手をガシッと掴んだ。

最高のコンディションを維持している彼女の強靭な肉体は、その凄まじい熱量すら物ともしない。リアは長いジャージの袖を揺らしながら、爆発的な脚力で広場の壁を垂直に駆け上がった。

そのまま、左右の廃建物の屋上へと、その最強のハロゲンヒーターを一瞬にして設置したのだ。

ビュンビュンビュンビュン!!!

次の瞬間、数万の自動弓兵から放たれた魔導の熱線矢は、カイトの車には一射たりとも向かうことなく、完璧に誘導されてリアとエルザが仕掛けたヒーターの座標へと一直線に突き刺さり、大爆発を起こした。

完全に敵の目を引きつけることに成功した瞬間だった。

「よし、そのまま前衛の弓兵集団の機能解体を実行します!」

リアはカイトから事前に手渡されていた現代の頑強な工業用工具――超硬合金製の『肉厚ロングバール』を手に、屋上から敵の陣形の中央へと弾丸のように飛び降りた。

ズガァァァン!!!

「そこ、そこ、そこぉっ!」

リアは超硬バールを凄まじい速度で振り回した。

現代の精密な製鉄技術で作られたバールの先端を、石造りの人形たちの関節の隙間や駆動歯車へと寸分の狂いなく滑り込ませ、テコの原理と圧倒的な怪力で次々とハジき飛ばしていく。

近代工具による純粋な物理的破壊の論理を想定していなかった人形たちは、何の手応えもなく次々とボロボロの金属屑へと解体されて床へ転がっていった。

しかし、後方に控えていた高位の『魔導詠唱人形』たちが、リアの突撃を阻止すべく、さらに強力な広域凍結術式の魔法陣を地面に展開し始めた。

「あら、私の可愛いリアの足を引っ張るなんて、無作法な人形たちね。――その歪んだ音色、調律されなさい!」

キャンピングトレーラーの連結通路から優雅に身を乗り出したエルザが、手にした調律杖を広場へと向けて美しく一振りした。

ナビゲーションの透過光によって、敵の展開している魔法の術式コードは完全に可視化されている。エルザはその満床の魔力を杖の先端に収束させ、敵の凍結魔法の波長へと真っ向から叩き込んだ。

キィィィィィィィィィィィィィン!!!

空間に澄んだ音が響き渡った瞬間、人形たちが発動しようとしていた凍結魔法は、エネルギーの駆動論理を真逆に書き換えられ、一瞬にして透過性の高い「ただの暖かい春のそよ風」へと強制的に初期化された。

それだけでなく、エルザの放った調律の波動が人形たちの制御回路へと逆流し、彼らの自動修復システムを完全にハッキングする。

パシィィィンという小気味良いショート音と共に、残されたすべての魔導人形たちは、自らの魔力の拒絶反応によってその場にボロボロと崩れ落ち、ただのガラクタへと変わっていった。

カイトが用意した現代の基盤を、エルザの魔力とリアの身体能力によって完璧な囮へと昇華させ、そのまま二人の圧倒的なコンビネーションによって敵の軍勢を全滅させる。

三人の完璧な役割の噛み合いによって、一国を脅かすはずの古代の防衛軍隊は、何一つこちらに触れることもできず、完全に解体デバッグされた。

「ぷはぁっ! カイト様、全部お片付けしました! この鉄の棒、引っかけるだけでポンポン壊せてすっごく楽しいです!」

リアがバールを肩に担ぎ、満面の笑みで尻尾をブンブンと振りながら戻ってきた。

「ふふ、私の調律とも完璧な噛み合いだったわね。カイト、これであの王宮の最深部へ続く大通りは、綺麗に最適化されたわよ」

エルザが愉しげにクスクスと笑い、ソファへと戻って冷たいジュースを喉に流し込んだ。

「……判定。デバッグ効率、極めて良好。中央広場の不備の排除を確認した。これより王宮の正門を突破し、暴走する防衛管理システムの最深部コアへと直進する」

カイトは表情一つ変えずに汚れ一つないジャージの袖を正し、再びアクセルを滑らかに踏み込んだ。

すべての迎撃ラインを日常の論理と三人の完璧な連携によって完全に解体され、無防備となった旧王都の中枢。

白銀のトレーラーを牽引する漆黒の移動要塞は何一つ破損することなく、歴史の闇に沈んだ最深部の心臓部へと向かって、滑らかに滑り込んでいくのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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